「生物多様性国家戦略2023-2030」パブリックコメント、野生由来動物の飼養は限定的であるべきと入りました!

日本も批准している生物多様性条約に基づいて定められた「生物多様性国家戦略」は、生物多様性の保全や持続可能な利用に関する、日本政府の基本的な計画です。

1995年(平成7年)に策定されて以降、5回の見直しが行われ、今年3月31日に「生物多様性国家戦略2023-2030」が最新の第六次戦略として閣議決定されました。

環境省

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家畜化されていない野生由来動物の飼養は限定的であるべきとの文言、追加されました!

今回の見直しは、2022年12月の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を受けたものとなっており、2030年のネイチャーポジティブの実現や、30by30目標の達成など、新しい動きを取り込むべく、以前の戦略から枠組みが大きく変わったように思います。

そうした中、第五次戦略「生物多様性国家戦略2012-2020」にはあった重要な文言が、素案から消えてしまっていました。

「家畜化されていない野生由来動物の飼養については、動物の本能、習性及び生理・生態に即した適正な飼養の確保が一般的に困難なことから、限定的であるべきである。」との一文です。

世界中から多種多様な動物を集め続け、エキゾチックアニマル消費に歯止めがかからない日本において、国家戦略がこの考えを捨ててしまっては、おしまいです。素案を見たときは、お先真っ暗な気持ちになりました。国家戦略にこの文言があるからこそ、動物愛護法改正時の国会の付帯決議にも、周知徹底を盛り込むことができました。

現在進行中の、爬虫類に関する第一種動物取扱業の飼養保管基準の検討においても、飼育してよい動物を定め、それ以外は飼育禁止とするホワイトリスト制を検討するべきとの意見が委員から何度も出ていますが、今後日本がそうした政策に舵を切る際にも、礎になる考え方だと思います。

実は、この文言、前回の改訂のときにも素案から削除されたので、復活を要望し、無事最終版に残った経緯がありました。今回、再度消されそうになったので、環境省主催の説明会での質問と、パブリックコメントでの意見提出により、復活を求め、無事生き残りました。

パブリックコメント結果の公表と、意見の反映された修正版(見え消し版)の公表は、 3月13日に開催された自然環境部会 生物多様性国家戦略小委員会(第7回) で行われました。

環境省

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ただし、肝心の動物愛護法と関連するセクションである「人と動物の共生する社会の実現」の部分には、「ふれあい」が追加されるなど、改悪も起きてしまいました。がっくりきてますが、環境省は、直接動物に触る接触のことは「触れ合い」と漢字を用いていることは指摘しておきたいです。

生物多様性国家戦略 人と動物の共生する社会の実現の部分

そのほか、ワシントン条約(CITES)関連などは、実効性のある新しい政策は何も掲げられておらず、おそらく今までと変わらず、だらだらと密輸を許してしまう国のままでいるつもりなのだろうと思わざるを得ません。

総花的に各省庁から政策を挙げさせてはいますが、本当に世界的な生物多様性の回復に寄与する国となれるのか、疑問は残ります。

パブリックコメント意見

戦略全文を精査する時間がなかなかありませんでしたが、飼育動物(展示動物を含む)や食用と関係する部分について、PEACEでは以下の意見を送りました。


【該当箇所】
137ページ 4-2-15 人と動物の共生する社会の実現
飼養動物の飼育などの経験を通して、「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」に位置づけられる動物を愛護する気持ちや、人と動物の共生に係る理解が醸成される。これにより、野生動物を含む人と動物の適切な関係に係る考え方や態度の変革を促し、生物多様性の保全に寄与する。

【意見内容】
以下の通り修正する。
4-2-15 人と動物の共生する社会の実現
適正な家庭動物飼育の経験などを通して、「動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針」に位置づけられる動物を愛護する気持ちや、人と動物の共生に係る理解が醸成される。一方で、家畜化されていない野生由来の動物の飼養については、動物の本能、習性及び生理・生態に即した適正な
飼養の確保が一般的に困難なことから、限定的であるべきであり、野生由来動物の飼育の抑制が必要である。これにより、野生動物を含む人と動物の適切な関係に係る考え方や態度の変革を促し、生物多様性の保全に寄与する。

【理由】
現行案では、動物の飼育であれば何でも「動物を愛護する気持ちや、人と動物の共生に係る理解が醸成される」ことに繋がるような記述になっているが、実際には不適正な飼育も多く行われており、そうしたところでは、動物を愛護する気持ちや共生への理解は醸成されえない。適正な飼育こそが、愛護や理解につながる
のだということを明確にしてほしい。

また、『生物多様性国家戦略 2012-2020』にあった、「家畜化されていない野生由来の動物の飼養については、動物の本能、習性及び生理・生態に即した適正な飼養の確保が一般的に困難なことから、限定的であるべき」との文章を復活させてほしい。

現行案では、2つの文章の間に因果関係がなく、動物の飼育から野生動物との適切な関係が学べるというのは論理が飛躍している。

現状、日本は世界中の野生動物をペットとして消費する野生動物輸入大国であり、動物の飼育は直接に生物多様性の破壊につながっている。パブコメ案では、まるで、野生動物を飼育する経験を通じて野生動物との適切な関係を促すことができるかのような内容となっており、受け入れがたい。

環境省がとるべき施策は、野生動物の飼育の抑制であり、本来は、飼育してもよい動物種のみを指定し、それ以外の動物は飼育不可とするホワイトリスト化(ポジティブリスト化)を早急に検討するべきである。
EUではすでに複数の国がホワイトリスト制をとっているが、さらに昨年、EU議会ではEU全域でのホワイトリスト化が決議されており、その根拠の一つに「2030 年に向けた EU 生物多様性戦略: 私たちの生活に自然を取り戻す」 が挙げられている。
https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/TA-9-2022-0425_EN.html#def_1_1

また韓国でもホワイトリスト化検討が始まっているとの報道がある。
ワシントン条約違反の動物(特に付属書IIの動物)が大量に本国に密輸されている現状があるが、これは貨物便での密輸摘発ができないことに原因がある。(生きた動物の密輸摘発は全て旅客機手荷物か預け荷物であり、貨物では過去に1例も摘発例がない。)

もはや水際で防ぐことは不可能であり、野生動物の飼育そのものを規制するべきであることは明らかである。

【該当箇所】
92ページ 1-5-4 希少な野生動植物の適正な流通管理
ワシントン条約、外為法、種の保存法に基づく、希少野生動植物種の国際取引及び国内流通管理のために、適正な法運用を行うとともに、関係省庁及び関係機関が連携・協力して、違法行為の監視を徹底し、適切な取り締まりを行うなど、効果的な管理方法の検討と実施を進める。

【意見】
以下のように修文する。
1-5-4 希少な野生動植物の適正な流通管理
ワシントン条約、外為法、種の保存法に基づく、希少野生動植物種の国際取引及び国内流通管理のために、適正な法運用を行うとともに、新たな規制を構築する。関係省庁及び関係機関が連携・協力して、違法行為の監視を徹底し、適切な取り締まりを行うなど、効果的かつ新しい管理方法の検討と実施を進める。

【理由】
現状のパブコメ案のままで、希少な野生動植物の適正な流通管理が行えると思えません。

税関は、貨物便で輸入される生きた動物は全て通関させています。これまで一度も貨物便での密輸が摘発されたことはありません。これまでと同じことをやっているのであれば、現状と同じ密輸大国のままです。
特に、現在密輸が花盛りなのは、ワシントン条約付属書IIの掲載種ですが、これらの動物の国内流通を管理する法律はありません。いったん国内に入ってしまえば、摘発することはほぼできません。

飼育してよい種を指定し、それ以外は飼育不可とするホワイトリスト化によって、違法と合法が一目で区別できるような規制を構築することが最も効果的です。
また、原産国の法律に違反して密猟・密輸されたものを日本に輸入したり国内流通させたりすることが合法であるために、世界中の生物多様性の破壊につながっています。アメリカのレイシー法のように、原産国の法令に違反したものも不可とするような法令改正を行っていただきたいです。


【該当箇所】
5-5-26 野生動植物取引規制実施

【意見】
「現状値」「目標値」の表に留保の種数を追加する。
現状値:附属書I掲載種10種、附属書II掲載種11種
目標値:附属書I掲載種0種、附属書II掲載種0種

【理由】
ワシントン条約の会合でどれだけ保全へ向けた努力があったとしても、日本が留保をつけるのであれば意味がない。条約を適切に実施するには、まず留保を撤回するべきであり、目標値としてすべて撤回と定めるべきである。


【該当箇所】
5-5-26 野生動植物取引規制実施

【意見】
表の中の、「ワシントン条約締約国会議における決議及び決定の採択によるワシントン条約の下での規範作りの推進(締約国会議の決議及び決定数)」を他の目標値に変更する。

【理由】
ワシントン条約は、決議の本数が多ければいいというものでもないのではないか。生物多様性が回復したほうが、決議の数は減っていくはずではないかとも考えられる。
また、そもそも現状値248本にどれだけ日本政府が貢献しているのか、不明である。日本政府が何もしなくても決議されるような性質のものが含まれているのに、それを目標値にすることに意味があるのか疑問。
そもそも条約の会合に積極的に参加するというのは当たり前のことで、わざわざ書くものおかしい印象がある。
もっと日本の貢献度を図れる指標を採用するべき。

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