飼育下のシャチによる人身事故

飼育下のシャチによる人身事故例については、量が多くなってきたので「イルカショーやふれあいサービスでの人身事故」のページからこちらに分けました。

シャチによる人身事故はWikipediaに掲載されているだけでも30件以上

Wikipediaに、シャチによる人間への攻撃の事例一覧があり、2021年9月現在、飼育下のシャチについて30件以上が掲載されているが、下記に記載した日本の事例が含まれていないため、これがすべてではないと考えられる。シャチの飼育史は、事故史とともにある。

海外の団体の事故報告書より

動物福祉研究所(AWI)および世界動物保護団体(WAP)による飼育下の海洋哺乳類に関する事案 第5版」(RoseN.AおよびParsonsE.C.M.(2019))より、飼育下のシャチの攻撃による人間の重傷・死亡事例は以下の通り。

抜粋

  • シーワールドは、1988年以来、シャチとトレーナー または施設来園者との間の攻撃的または潜在的に攻撃的な相互作用の「事故記録」を保管している。その年から 2011年まで、シーワールドオーランドだけで98件の事故が記録された。
  • これは、多くの攻撃的な相互作用が記録されていないこと が知られているため、過少に公表された事故総数である。実際、シャチの攻撃がもたらす危険性は非常によく知られており、主要な海洋哺乳類 獣医ハンドブックには(上記の死亡事件より前に 出版されたもの)、この攻撃が「重大な懸念」であり、いくつかの状況が「生命に関わる可能性のある事件」を引き起こしたと記載されている。
  • 米国の従業員安全機関であるOSHAは、1970年の米国労働安全衛生法に対する「故意の」違反についてシーワールドオーランドを召喚した。シーワールドはこの召喚に異議 を申し立てたが、聴聞会中に、12件を超える重大な傷害を引き起こした100回以上のシャチによる危険行動に起因する事件の詳細を記録した記録書と報告書が、裁判所に提出された。この報告書は、実際の負傷事故数を実際より少なく表記していることはほぼ確実であると判断され た。

映画『ブラックフィッシュ』

これらの事故を取り巻く諸問題、すなわち野生動物であるシャチを幽閉すること自体が彼らの心身の健康・社会性等を不自然に歪めていること、水族館が労働問題として真摯に向き合っていないこと等は、映画『ブラックフィッシュ』で広く知られることになりました。詳細は、映画紹介のページをご覧ください。

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以下は日本を含む、事故の実例です。

2001年8月 アドベンチャー・ワールド 
シャチのケンカに巻き込まれ、トレーナーが右大腿部骨折

かつてシャチのショーを行っていた和歌山のアドベンチャーワールドで、2001年8月1日、シャチのパフォーマンスの最中に人身事故が起きた。夏休みナイト営業の2日目、この日4回目のショーだった。シャチのランがゴローに噛みつき、ゴローが逃げようとする際に胸びれがトレーナーに当たり、右大腿部骨折。
当日の詳細は、負傷したトレーナー本人らが書いた『いつか、オルカ』(株式会社アワーズ アドベンチャーワールド発行 谷口一久、大出康子著)55ページから58ページに記載がある。
また、この本には、演技の後のサバを減らしたら咬みついてきた、ロケットジャンプの練習のときプールの底から水面に上昇したがステージの上に落ちた(お尻を強打するだけで済んだ)、同じくロケットジャンプで7メートル上空からプールの外に落下しそうになった(ぎりぎり水面に着地した)等のエピソードも載っている。

2001年ほか 鴨川シーワールド 
少なくとも2件のトレーナー負傷事故

日本の鴨川シーワールドで起きたシャチによるトレーナーの負傷事故については、写真家のわかとら氏が2件把握していると書いている。うち1件は2001年の下記のトレーナー負傷事故。
「トレーナーが、プールで訓練中のオスのシャチ「ビンゴ」にプール底のガラス壁まで身体を引きずられ、そのまま数分間にわたって押し付けられました。 別のトレーナーが、隣のプールの水門を開けてビンゴを誘導し救出しましたが、このトレーナーは腰を圧迫されて出血する大けがを負いました。」(シャチの飼育における事故と人工授精について (主に鴨川シーワールドを例に) 2021年7月4日より)

2007年4月 アメリカ・サンディエゴ シーワールド 
シャチの飼育員が人工授精作業中にシャチの尾びれに弾かれて負傷

2007年4月10日、カリフォルニア州サンディエゴのシーワールドで、シャチの女性飼育員(35歳)が人工授精作業中にシャチの尾びれに弾かれて負傷。

【ロサンゼルス/米国 11日 AFP】カリフォルニア(California)州サンディエゴ(San Diego)のマリン…

2010年2月 アメリカ・オーランド シーワールド 
女性トレーナーがシャチに襲われ死亡

2010年2月24日、アメリカ・フロリダ州オーランドのシーワールドで女性トレーナー(40歳)がシャチに襲われて死亡。シャチは「ティリクム」。「ティリクム」によると考えられる3回の人身事故については、映画『ブラックフィッシュ』で詳細が描かれている。

「シャチはコウモリみたいに飛び出したかと思うと、あっと言う間にトレーナーの腰のあたりをくわえて激しく振りまわした。サイレンが鳴って、係員が駆け寄ってきた。シーワールドの職員があんなにたくさん出てきたのは見たことがない」

【2月25日 AFP】米フロリダ(Florida)州オーランド(Orlando)のマリンパーク「シーワールド(SeaWo…

2022年6月 アメリカ・オーランド シーワールド 
シャチに腕を噛まれ、トレーナーが数カ所の骨を折る重傷

2022年6月13日、アメリカ・フロリダ州オーランドのシーワルドで、トレーナーがシャチに腕を噛まれ、数か所の骨を折る重傷を負った。この事故は、報道番組の「ニュース6」が労働安全衛生局(OSHA)の調査報告書を入手するまで、ほとんど知られていなかった。

事故は、トレーナーがシャチの「マリア」の口をゆすごうとしたときに起きた。歯や口蓋の上部にペンキや食べかすの残骸が付着していたため、トレーナーはそれを取り除こうと、水とフッ素を入れた加圧ポンプ式スプレーボトルを用いた。マリアの口に水を吹きかけ、スプレーを左右に振り回したところ、シャチはトレーナーの右手を内側にしてそっと口を閉じた。抵抗を感じるとシャチはすぐに口を開けたが、トレーナーは右前腕と手首の複数の骨折を修復する手術を受けることになった。

この事故について、オレンジ郡消防局は「ニュース6」の取材に対し、トレーナーを搬送した記録はないと述べている。

2010年のトレーナー死亡事故でシーワールドは罰金を課されたが、この事故に対しては、OSHAは罰則を課さないとした。シーワールドには、クジラの口から3フィート以内に近づかないことなどのマニュアルがあった。

WKMG

A trainer at SeaWorld Orlando was severely injured last year…

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