畜産技術協会の主催で開かれたアニマルウェルフェアセミナーの2回目、「家畜の飼養管理におけるアニマルウェルフェア」が10月14日に開催されました。前回に引き続き参加したスタッフからの報告です。
今回のセミナーでは、「EUと日本のアニマルウェルフェア(AW)畜産食品の現状」の講演がありました。
EUの中でも特にイギリスは、AW食品の開発が進んでおり、AW食品が一般のスーパーマーケットで購入でき、しかも有機牛乳が1本(2.272ℓ)£1.79だったり、平飼い卵が6個170円ぐらいだったりと値段も手頃になってきているなどの話がありました。
イギリスのAWの取り組みは、BSEや口蹄疫の発生がきっかけとなって、1990年に食品安全法が制定され食品業界にトレーサビリティシステムとリスク管理が導入されたことや、動物福祉団もAW食品規格「フリーダムフード」認証を開発して家畜の問題に力を入れて取り組むようになったことなどにより、飛躍的に発展したということです。
また、「家畜の飼養管理技術の発展とアニマルウェルフェアの考え方」の講演では、現在、OIEが家畜のAWの基準を順次作成しているところで、各国での対応が急務になっており遅れている日本も対応が迫られている、その日本がAWに取り組んでいくためには、日本の実情に合い、生産性を損なわない飼育システムの開発が必要であり、例えば、鶏だったら福祉ケージ(ファーニッシュド[家具付き]ケージ)や、豚だったらフリーストール繁殖豚舎などがキーワードになるのではと話していました。
そのほかの講演では、農林水産省の人の前回と同様の話や、養鶏業者の人のエイビアリーシステム(多段式)を導入しての話がありました。
AWに取り組むには新しい飼育方法の導入が必要ですが、そのための費用の助成について農林水産省は今のところ考えていないということでした。農林水産省では、まずは実態調査とAWの啓発に取り組むということです。また、法律の制定はまだまだ先になると思うので、AWの取り組みはできる人はやっていくということでしょうとも言っていました。
法規制がまだ先のことで、新しいシステムの導入にはお金がかかり、さらに消費者のAWの認知度が低く今のところAWに取り組むメリットを畜産業者が感じていないとなれば、畜産現場でのAWの取り組みを期待するのはまだ難しいように思います。
そう考えると、AWの推進にとって力となってくるのは、消費者のAW食品を求める声ではないかと思います。
そのためには、一般の人々にAWを知らせることがたいへん重要であると思いました。
(M.S)
※この2回のセミナーは、農水省の「国産畜産物安心確保等支援事業」に本年度新設された「快適性に配慮した家畜の飼養管理推進事業」の予算によって開催されたものです。畜産振興分野でアニマルウェルフェアに予算がついたことは画期的なことであり、今後も拡大していってほしいと思います。