実験・畜産もヒアリングがありました 動物愛護部会第37回傍聴

1週間経ってしまいましたが、ご報告です。先週の木曜日、環境省で第37回の動物愛護部会が開催されました。内容は、指針改正へ向けたヒアリングの2回目で、ヒアリングはこれで終了。次回から2回かけて内容について話し合います。今回呼ばれていた団体等は、以下のとおりでした。

  • 産業動物について……農林水産省(畜産振興課と消費・安全政策課)
  • 実験動物について……実験動物中央研究所
  • 災害時対策について……緊急災害時動物救援本部、岩手県、福島県
  • その他……日本獣医師会

家畜のアニマルウェルフェアについて

動愛法の下に定められている4つの飼養保管基準のうち、産業動物の飼養保管基準だけが改正がなされないままきています。現行の動物愛護管理指針の中でも「講ずべき施策」としてこの基準の見直しが盛り込まれているのですが、まだ具体的な動きがありません。今回の指針の見直しを機に、ぜひ動きだしてほしいと思っている部分です。

ヒアリングは農水省からで、アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針(畜産技術協会)について、策定の経緯や、内容の概略などについての話でした。アニマルウェルフェアと聞くと過大な投資を要するのではと危惧する人が多いが、決してそうではなく、生産性の向上につながるものだと農水省では説明しているそうです。「5つの自由」についても言及があり、ヨーロッパで家畜の扱いが社会問題化したことを背景として挙げていました。

ただ、ブロイラーと肉用牛に関して、OIE(国際獣疫事務局)の国際基準と日本のアニマルウェルフェア指針を比較し、「ほぼ同様である」としていましたが、もしそうなのであれば日本政府からOIEに対し基準を下げさせるような意見を提出する必要はないのであって(実例はこちら)、何かがおかしいと思ってしまいました。

また、ブロイラーで「ビークトリミング、爪切り、断冠は国内では行われていない」とされていましたが、採卵鶏では半数の農家がビークトリミングを行っていると答えているので、勘違いされないことを願います。肉用牛についても同様で、「国内で断尾している農家はほとんどいない」とありますが、乳牛はしていますので、お間違えのないよう。

日本の肉用牛の指針で特徴的なのは、日本では「さし」を入れるためにビタミンAの抑制を行うので、牛が視覚障害や食欲不振を起こしてしまう。そのため、時期と給与量に注意が必要としているとのことでした。

Q.環境省のアンケートによれば、アニマルウェルフェアをよく知っているのは0.9%だが、数値目標のようなものは?
A.ウェルフェア指針は、最大公約数的な内容。普及啓発を進めている段階である。

Q.どのようにして普及啓発をしているのか?
A.各畜種ごとに関係団体があるので、そういった団体の会合に出て行ったりする。

Q.現場にはどのように流れていくのか?
A.団体によって同じではない。独自のガイドラインをつくろうとしているところもある。徐々に浸透している。

Q.温暖化の影響もあるのではないか?
A.ここ数年悪影響があり、暑熱対策をやっている。

実験動物の適正な取扱いの推進

結論から先に言ってしまうと、「指針の改正は必要なし」との意見で、がっくりでした。ただ、実態調査には協力するとの文言がありました。

また、実験動物の飼養保管基準の解説書については改定に前向きな意見が出ていたので、これはぜひお願いしたいところだと思いました。(確かに、基準が改正されたときに解説書は改訂されませんでした。現行のものは、写真を見ただけでも古さが伝わってきます。安楽死の部分も見直しが必要だと思います。ただ、その前に基準自体の見直しが必要ではないか、とも思います。)

さらに、環境省と文科省のこれまでのアンケート結果では、大学等では100%だが、全体では回答率が不安定であることについて、「自主管理の網羅性・透明性に影響を及ぼすものと認識しておりますので」との文言が資料に登場するなど、「法改正断固反対!」の論調のころに比べると、若干、関係者側も自省的になってきている感があります。

災害時については、不明動物や逸走動物は認められなかったとのことですが、地震がきたときに手術中で、そのまま放置されたイヌの話は、頭から離れません。また、そもそも津波で流された施設はなかったのでしょうか。食品会社などにも動物実験施設はあり、すべてが把握できていたとはとても思えず、疑問は残ります。(津波では生き残れないとは思いますが。) 関係機関の互助的な取り組みについては、素晴らしいし、必要だと思いますが、だからといって、行政が施設を把握しなくてよい理由になるとは思えません。

Q.指針に「体制整備が十分になされていない施設が一部にある」とある。指針の改正は必要ないとのことだが、この点についても現在でも同じ状況が続いているということか。
A.前回の法改正から7年たって、自主管理と改善を進めており、100%かというと困るが、だんだん近づいていくということだ。取り組んでいるところ。

Q.東日本大震災の時に、安楽死させた動物もいないということか。
A.研究者と相談して安楽死させた動物はいる。

Q.(動物福祉上の理由で)海外の雑誌に論文が載らなかったという話も聞いたことがある。
A.欧州と北米でも、受け入れられる安楽死が少し違う。

Q.災害時の手順書のようなものはすべての施設にあるのか。
A.あります。ただ、飼っている動物や立地条件は施設によって違う。

災害時対策、ほか

いわゆる「どうぶつ救援本部」からのヒアリングでは、これまでの経緯の概略と、今後の課題について話があり、3月末にとりまとめた中間報告を速やかに公表したいとのことでした。多々批判も受けたので、見直していきたいとのこと。

義援金は約6億9千万円集まり、現在の残高は2億円です。お金の面について突っ込む委員がいるだろうか?とあまり期待していなかったのですが、ずばり質問が出て、新しい風を感じました。阪神大震災のときの残高8千万については、その後起きた災害対応に使い、7千7百~8百万円が残っているとのことです。

行政からは、岩手県と福島県からヒアリングがあり、もちろん原発災害に関する状況も違うので一概に比較はできませんが、動物を救うということについての土壌の違いがもともとあったのではないかと感じざるを得ませんでした。岩手県からは、概略がまとめられた資料が配布されましたが、福島は「現在進行中のため」とのことで、資料もありませんでした。

ちなみに、災害関係では、環境省が「被災動物の救護対策ガイドライン」をほぼ策定完了するとのことで、新年度早々には各自治体に発送されるとのことでした。(部会長は、部会で議論したそうでしたが……) 「東日本大震災における被災動物対応記録集」もできあがるそうです。

参考報道:
ペットは一緒に避難を 環境省が初の指針配布へ(2013年3月30日 共同通信)

ほか、獣医師会からも、災害時対策についての話がありましたが、所有者明示、すなわちマイクロチップについての要望が主なところだと思います。また、今回の改正で獣医師による虐待の通報規定が定められたことについて、虐待かどうか判定できないと言っていたのは少し驚きました。もちろん、そういう例も多々あるとは思いますが、逆に明確に虐待と言える事例もあると思うので、そういった場合にはこの条文が生かされることを願っています。

質疑応答では、大手のペットショップが社内でマイクロチップの登録をしており、その数3~4万件にもなるという話が出ていました。情報が一元化されていないのは、動物にとっても、飼い主にとっても不利益ですから、そのような不誠実な格安商売が横行しないようにしないと、マイクロチップも意味を失うのではないかと思ってしまいます。(実際、前回のヒアリングではチップ入っていても意味がないケースが既に結構あるという話もありました)

また長文になってしまいましたが、次回の部会は17日とのことです。いよいよ議論に入るので、要チェックです。

(S.A.)

九段下の会場へ行く道は、桜が満開でした。
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