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第2回OIE連絡協議会:豚のウェルフェア基準について議論

12月9日、農林水産省で平成28年度第2回国際獣疫事務局(OIE)連絡協議会が開催されました。

日本も加盟するOIE(世界動物保健機関、農水省は国際獣疫事務局を使用)は、動物衛生や人獣共通感染症に関する事柄だけではなく、アニマルウェルフェアについても国際基準(陸生動物衛生規約:OIEコード)を作成しています。

このコードは通常2年間の加盟国間の協議を経て、最終的にOIE 総会で採択されますが、それまでの間に日本国としてのコメントを提出する機会があるため、その内容に関する協議等を行う場として連絡協議会が設けられています。

OIEでは現在、新規章として「アニマルウェルフェアと豚生産システム」を設けるための最初の案が作成されているため、今回の連絡協議会では、それについても議題になりました。全文と農水省による仮訳も参考資料として配布されました。

配布された参考資料:

●7.1.X章「動物を基礎とする測定指標の使用のための指導原則」案

また7.1章「アニマルウェルフェアの勧告にかかる序論」に新たに新規章として下記のような内容を付け加える案が示されているとのことです。

  1. OIEのアニマルウェルフェアの基準では、動物の環境/管理の特定の条件を規定するよりも、動物にとってよい成果を重視する。
  2. 「畜産物生産システムにおける動物のウェルフェアに係る一般原則」では、最も適切な測定指標(可能であれば動物を基礎とする測定指標)を基準に含む。
  3. 基準を(注:エンドユーザーが)使う際は、生産システムや条件に照らして、最も適切な動物を基礎とする測定指標を選択する。
  4. 基準は、可能な場合には動物を基礎とする測定指標を満たすための明確な目標・閾値を定める。
  5. リソース・管理に基づいた測定指標も適切であれば、定めることができる。

※下記PDFも参照。当局はデータを収集するべきといったことも書かれています。

質疑応答等の中で示された説明として、リソースとは空間的ゆとりや温度、敷料の状態など飼育するためのものすべてを指し、管理とは衛生管理措置などを指すとのことでした。

よい成果とは、死亡率が低いであるとか、損傷率が低いであるとか、動物が自由に動き回れるであるとか、体形の変化がないとか、そういったアウトカムのこと。

背景には、一律の条件を規制のような形で決め込むよりも各地域で結果に関する指標を定めてそこを目指したほうがよいといった近年の傾向があるのではないかと思いました。

●7.X章「アニマルウェルフェアと豚生産システム」案について主な議論

まず全体についてですが、豚のすべての生産システムに共通するものをつくるという考え方とのこと。

原文がShouldになっているものは勧告だが、ウェルフェアコードは、貿易上の扱いは不明確との説明もあり、これに基づいてどういう政策を日本でやるのかについては、畜産技術協会の指針に反映させて生産現場へも反映させるという従前通りの説明でした。同協会の指針について、「単純な民間の団体の指針ではなく国と民間で一緒に作ってきたものとの認識がある」とのことでしたが、現状で期待できるのかは疑問です。

測定指標として、行動、罹病率、死亡率・淘汰率、体重・体形の変化、繁殖効率、外観、取扱時の反応、跛行・歩行異常、飼養管理上の処置による合併症が挙げられていましたが、これに対しては、「採食状況は健康のバロメーターであるし、枝肉の評価や廃棄率なども入れてはどうか」といった意見が出ていました。

「痛みを伴う処置には耳標、耳刻は入らないのか、犬歯の切除は?」といった質問があり、日本の指針の中に入っているものについてはコメントを検討するといった事務局からの回答がありました。

「ヒネ豚(きょうだいの中でも小さく育たない子豚のこと)は人道的殺処分の対象か?」という質問もあり、これについても検討するとの回答。しかし逆に、ヒネ豚は安楽死の章に、耳刻は個体識別の章に、それぞれ書いてあるのではないかといった意見も出ていました。

また、近年欧米諸国で禁止や自主的廃止の進む雄豚の去勢については、やはり話題になり、「このコードが採択されるまでの間にEUでは全面禁止になる、断尾もEUでは検討されていて禁止の方向にある、そういった中、『一般的に行われる』といった表現はおかしいのではないか」という意見が出ました。

これについては「日常的に行われてはならないとすべきではないか」との発言があったため、「現実的なものを盛り込む必要がある、一般的に行われてきたと過去形にするのが正しいのではないか」等の意見もありました。事務局からは、日本の指針でも推奨していないのでコメントを検討したいとの回答がありました。

●そのほか、アニマルウェルフェアについて

この日は、「インターネットを通じて家畜が過酷な飼育状況にあるということが、特にここ1~2年の間に非常に消費者に浸透している」といった消費者団体からの生の声も聞かれ、非常に状況が変わってきたことを実感しました。

事務局サイドからは、そういう過激な(と言いかけて訂正していましたが)情報発信に対して全体がそういうことをしているわけではないという情報を開示していくことがのぞましい等の発言がありましたが、しかし実態として集約的工場畜産の割合のほうが圧倒的に高いことは間違いがなく、まだまだ動物の扱い方に対する意識の乖離があると感じます。

ほかにも、抗菌剤使用と飼育方法の関連性や、ワンヘルスでの取り組みといった話題が出ました。

ほか、資料上、「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」と「役用馬のウェルフェア」の章でも微修正があり、次回総会への提案が採択されたことが示されています。

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