ビーガンJAS規格と動物実験~最終製品に対し動物実験が行われている食品の例「マルチビタミンB12かいわれ」

ベジタリアン・ビーガン対応の加工食品のJAS規格(日本農林規格)の策定が予定されており、6月29日に農林水産省で最終の審議が終わった段階です。その詳細は別途ご報告しますが、動物実験については、「最終製品について動物実験が行われていなければOK」という緩い形になってしまったので、このことを先に取り上げたいと思います。

まず、パブリックコメント案に「義務的かつ規制上の要求事項がある場合を除き,」とあった部分について削除を求める意見が最も多く寄せられたとのことで、この部分の削除は実現しました。ご意見を送ってくださった皆さまありがとうございました!

ですが、この削除が実現した理由は、なんと最終製品にのみ動物実験が行われていなければよいからなのだそうです。

ですので、今後制定されるこの規格については、特に下記の2点について、ご注意ください。

  1. 動物実験を行っている企業の商品でもベジタリアン・ビーガンJASの認証を取得することができる
  2. 動物実験が行われた原料を使用していてもベジタリアン・ビーガンJASの認証を取得することができる

この点は農林水産省にメールでも確認しましたので、間違いありません。

②については、確かに、かなり古い時代に動物実験されてしまって市場で一般的に使われている原料も存在すると思われるので、クルーエルティーフリー化粧品と同様、”cut-off date”の考え方を導入すれば、認証に使用禁止を取り入れることが可能です。おそらくこうした国際認証の仕組みを農林水産省は知らないのだと思います。(公表されたパブリックコメントの結果に、当会の意見の趣旨について、内容を間違えたまとめ方がされていたからです。知識があれば間違えません。)

このベジタリアン・ビーガンJAS規格は、国際標準化機構(ISO)規格(ISO 23662)を参照に作られているそうですが、このISO規格策定の過程で、ビーガン団体は撤退しました。まさに、動物実験について、意見が合わなかったのです。World Vegan Allianceは、最終的に取りまとめられた規格であるISO-23662を認めないと表明しています。

Vegan World Alliance

The practice of astroturfing—hiding who is really behind the…

日本のJAS規格案は、そのISOよりさらに緩く、最終製品に対して動物実験が行われていなければよいという形になってしまいました。日本の企業では認証取得の実現可能性が低くなってしまうからだそうですが、本末転倒ではないでしょうか。動物実験を行っていたり、添加物を山盛り使う製品ばかり作っていたりする大手企業だけが頭にあるのだということが、この発言からも伺えます。本当にビーガン対応製品を売りたいのであれば、先に企業の体質を変えることのほうが、動物たちにとってどれだけ重要なことか、と思います。

また、農林水産省は、「特定保健用食品については、動物試験が義務的かつ規制上の要求事項とされていないと認識しております」などとしていますが、トクホは、新規性のある場合には動物実験データは、必須です。何かしらの根拠が示せればよいということになっていますが、なければ動物実験をしなければなりません。新規性がなく、以前のトクホ製品と同等のものであれば、特に根拠は不要になっているだけです。(実際に行われたトクホの動物実験の例についてはこちら。)

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規制上の要求がある場合にだけ動物実験を行っています」と回答してくる食品企業が幾つもあるかと思いますが、これまで確認できた範囲では、具体的にこれが何を指すかというと、トクホ取得のための動物実験でした。企業は規制上の理由でトクホの動物実験をしていると言っているのに、農林水産省はなぜ関係ないなどと言うのでしょうか。「義務的かつ規制上の要求事項がある場合を除き,」は案から削除されたので、運用上の問題は起きないかとは思いますが、疑問です。

信じられないことですが、カゴメやニップンのように、動物実験を行っている企業が、既にビーガン対応をうたう商品を売っています。ビーガンの脱動物搾取の考えを理解して販売しているとは、とても思えません。

動物実験についてはとても緩くなってしまう新JAS規格ですが、農林水産省の審議の場では、さらに「最終製品に動物実験が行われることはないのではないか」という趣旨の、極めて甘い観測もされていたので、驚きました。

加工食品には該当しないかもしれないですが、「完全菜食者向け」をうたって動物実験が行われたこともあるので、具体例を挙げます。ビーガンの方々に誤った選択をしてほしくないからです。もちろん企業にも。

動物実験が実施された「マルチビタミンB12かいわれ」

ビーガンが不足がちになると言われているビタミンB12を強化した食品として販売されている株式会社村上農園の「マルチビタミンB12かいわれ」ですが、この製品に対しては発売前に動物実験が行われています。

2004年の発売当時、広島大学が株式会社村上農園との共同研究の結果,商品化に成功したとリリースしていたので、発売元の村上農園に問い合わせた方に、動物実験が行われていることを認める回答が来ました。

下記に全文を掲載しますが、「完全な菜食主義の方」向けに開発したつもりであったことは、驚きます。今からすると、とてつもない勘違いに見えますが、当時は、日本で乳卵も避けるベジタリアンといえば、健康やヨガ・宗教などのためにやっている人たちだけが目についたのでしょう。

少なくともビーガンは「完全菜食主義」といったものではなく、脱動物搾取の理念のもとに実行するライフスタイルなので、村田農園の考え方には全く賛同できません。

このかいわれの製造法は、ビタミンB12水溶液を根から吸わせているだけであり、わざわざ購入しなくてもサプリメントを摂るのと同じです。サプリメントは、ビーガン対応のものが海外通販で購入できます。

発売当時の村上農園からの回答

赤字はPEACEによる

村上農園 研究開発部の●●と申します。このたびは商品へのお問い合わせ誠にありがとうございます。早速ですが、質問にお答えいたします。弊社商品「マルチビタミンB12かいわれ」に含まれるビタミンB12は、生物学的に活性があります。つまり、人体内で有効に働く完全型のビタミンB12です。

開発者の広島大学名誉教授 佐藤一精先生がバイオオートグラフィーを行い、微生物定量や動物の内因子を用いて化学発光を利用する定量法などで定量して確認しておられます。
また、先生は共同研究者である大阪府立大学中野先生から動物実験でもビタミンB12活性が確認できたという報告を受けておられるとのことでした。

長年、佐藤先生はビタミンB12について研究を続けてこられた方で、今回の商品化では、とくに完全な菜食主義の方に野菜からVB12を毎日手軽に摂ることのできる食材を提供したいと望んでおられ、私どもはそれをお手伝いし商品化いたしました。●●様 ぜひこの商品の素晴らしさをご理解いただき菜食主義の方々へお勧めくださいますようお願い申し上げます。

最後に佐藤先生より食べ方について以下の件を●●様にお伝えするようにとのことでした。
食べ方は電子レンジで20秒間~1分間加熱して食べたり、沸騰水に20~30秒間茹でて、そのままか、ドレッシングなどをかけて食べるのが良いのだそうです。佐藤先生が「農耕と園芸 9月号 p.47-49」に特徴など執筆しておられます。もしご興味があれば書店を探してみてくださいね。FAXでよろしければその頁を●●様宛に送信させていただきますので改めてご連絡ください。

村上農園 ●●●●●

最後のほうは、完全にこちらの意図が伝わっていなくて、本当に悲しい回答です。

健康食品等で、堂々と動物実験を行っていることを宣伝材料にしているところは、まだまだほかにもありますが、少なくともビーガン向けで売りたいのであれば、動物実験を行わない&原材料に行われていないか確認するくらいのことは常識になってほしいものです。

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