環境省の高病原性鳥インフルエンザへの動物園等での対応指針改訂

環境省が、2回の検討会を経て「動物園等における飼養鳥に関する高病原性鳥インフルエンザへの対応指針」の改訂を行いました。新しいバージョンが昨日公開されています。

この改訂は、昨年動物園などで高病原性鳥インフルエンザが発生し、特に感染鳥から他の飼育下の鳥への2次感染があったこと、また野鳥の対応指針の改訂があったことなどを受けて行われたものです。

主に感染疑いの鳥への対応や、日ごろの行政機関との連絡体制、環境省動物愛護管理室の役割などについて加筆修正されました。

検討会は2回とも傍聴したのですが、逐一のご報告ができないままでした。動愛法に定められた終生飼養との関係性の整理など、気になる論点があったのですが、意見を提出する時間的余裕もないまま(パブリックコメントもなく)素早く最終版公表となりました。

国内外の動物園での発生事例については、資料がこちらに公表されますので、それを見ると参考になるのではないかと思います。

以下、気になったところなどです。

●前文「家きんについては、産業動物か否かにかかわらず、家畜伝染病予防法の適用を受けるため、家畜保健衛生所等と協議し、その指示に従って適切に対応するものとする。」

新しく加えられたのは下線部です。

この指針は、要するにあまりはっきりは書かれていないのですが、高病原性鳥インフルエンザが発生した場合、畜産用途で飼育されている家禽であれば同一施設内ではすべて殺処分となるが、動物園という特殊な施設(希少種がいたり、思い入れのある扱いがされている鳥がいたり、また施設の形態や数や配置、飼われている鳥の種類などもさまざま…)では、もう少し柔軟に対応できるよう定めましょうという内容になっています。

今回追加された、この「協議し」というところに、その肝が表れれているように思いました。一方的に殺処分を命じられるという関係性でなく、きちんと個別の事情について配慮・勘案しつつ最善の対策をとるということですね。

必ずしも殺処分ではないが、そうするにはきちんとしたやり方でやってくださいね、という指針であるとも言えます。何も対策できない施設がむやみに生かそうとするだけでは、感染が拡大してしまいます。それは、動物たちにとっても不幸を拡大させるだけです。(でもこの観点で全く考えられていなくて、あくまで産業保護が主眼になっているかとは思いますが…)

「動物園の動物は本来終生飼養だが」というところは、前文に入れては?という意見もありましたし、かなり議論もされたのですが、結局反映はされていないようです。

●ニワトリ以外の感染・発症についてはよくわかっていない

高病原性鳥インフルエンザの「高病原性」とは、鳥に対して病原性が高いことを指していますが、確実にわかっているのは、ニワトリでは高い病原性を示し死ぬまでも速やかということであって、実は他の鳥については、どのようになるのか、どれくらいで死ぬのかなどもよくわかっていないとのことでした。

感染がわかった鳥でも、治療を試みる(治るとわかっているわけでもないので、この表現についても議論はありましたが)と書かれているのは、このことがあるためです。

またここで、「希少種であるなどの理由から治療を試みる場合には」とあり、大事なのは希少種だけなのかと疑問も感じますが、ここはもちろん「など」であり、園として思い入れのある個体なども含まれると考えてよいそうです。

また、この対応指針では、「強毒」の型のものだけではなく、「弱毒」の型も対象に含めて書かれているので、その点も誤解があってはいけないと思います。

●気になったこと

この検討会に園長さんたちが出ているような動物園は、国内動物園としてはそれなりの規模のところであり、常勤の獣医師がいたり治療設備があったりするところかと思いますが、世の中の展示施設はそういうところばかりではないということが、やはり気になります。

かつて養鶏場では、毎日のように死んでいるから鳥インフルエンザだと気が付かなかったという話もありました。同じように、頻繁に鳥が死んでいる施設なら、「いつものことか」と初動で気が付かないということもあり得るのではないでしょうか。

しかも、家禽を含めた鳥類をかなりの種類飼っていて、希少種もいる、しかも屋外の飼育環境から割と密閉的な室内施設への移動もあるといった事業者でありながら、ひごろ衛生面での配慮がない、死因を調べるという意識が全くない、などとなってくると、もし高病原性鳥インフルエンザに見舞われた場合、どうなるのだろうと思います。

もちろん対応能力なしと判断されれば一律殺処分しかないということになるでしょう。命の沙汰も所有者次第…です。

▼ふれあい移動動物園の家禽たち

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