円山動物園の繁殖制限の方針を支持する
円山動物園がライオン「クレイ」と「イト」の今後について、11月29日に最終的な方針を公表しました。11月9日にホームページで繁殖制限が公表されると、動物園がひどい決定をしたかのような反応がSNSなどで湧きあがり大変驚きましたが、繁殖制限はそのまま維持されることになり、ほっとしました。
余るライオン「猫より安い」と2020年に朝日新聞が報じたように、動物園やサファリパークでは、ライオンは明らかに生まれすぎています。ライオンの赤ちゃんと写真撮影などのサービスで収入を得るための繁殖も行われています。
2016年6月9日放送のNHK総合『所さん!大変ですよ』では、群馬サファリパークの雄ライオン閉じ込め小屋の様子が放映され、視聴者に衝撃を与えました。
そもそもライオンは、野生では多数のメスに1頭ないしは少数のオスで群れ(プライド)を作って暮らす動物です。生まれた子どものうち、メスは成長してもプライドに残りますが、オスは出ていきます。新しいプライドに入るため、そしてプライドの縄張りを守るため、オス同士で闘争することになりますが、その習性がサファリパークでオスを隔離していかざるを得ないことにつながっています。
年齢が高いほうから殺処分していると従業員が言っていたサファリパークもありますが、群馬サファリパークは、おそらく殺処分はしていないという意味で見せたのではないかとは感じました。しかし、数多くの雄ライオンが獣舎に閉じ込められ、一日のほとんどをそこで過ごさざるを得ない状況は、とても動物福祉にかなっているとは思えません。番組では、百獣の王ライオンが無料で譲られていることに驚くような構成になっていました。
また、日本は1990年代以降、実に140頭近いライオンを中国に輸出しています(こちらの記事を出して以降の輸出の記録もあります)。中国は、絶滅の淵にあるトラの代わりにライオンの骨が漢方薬に使われることもある国です。日本で繁殖され海を渡ったライオンたちは果たして、幸せになったのでしょうか。
木下サーカスのライオンについて調べていて、1990年代以降、日本から中国に多数のライオンが輸出されていることに気がつきました。その数、2018年までで、実に130頭を超えます。日本側の輸出数の記録では、136頭!(中国側の記[…]
ライオンの子が移動動物園に出され、多くが死亡(おそらくは殺処分)されていた過去もあります。この件については、二度と質問するなという主旨の回答しか得られていないので殺処分かどうか断言はできませんが、11頭中8頭が大人にならずに死んでいました。
これは、2015年5月に東京の住宅展示場で撮影した、ふれあい動物園の子ライオンの姿です。「ぼくのなまえは『ナディ』です」と扉のところに書かれています。スタッフは栃木のドギーエンタープライズのジャンパーを来てい[…]
ライオンの赤ちゃんや子どもはかわいいですが、そのかわいい時期が消費された後は、しばしば厄介な存在になっているといっても過言ではないと思います。
動物園は「赤ちゃんが生まれました」を売りにしすぎではないか
この騒動で、余剰動物の問題がほとんど認知されておらず、メスとオスを同居させれば出産させるのがふつうだという考え方が根深いことを知りました。
これは、動物園やメディアが「かわいい赤ちゃんが生まれました!」のような情報発信ばかりしている現状が生んだ勘違いではないでしょうか。
生まれた子が動物園で幸せになっているという思い込みもあると思います。生涯、狭い囲いに幽閉され、コンクリートの寝室と放飼場を行き来するだけの生活、餌は与えらえるだけで狩りをするわけでもない(生きたウサギなどを与えている場合もありますが本来の狩りとは違うでしょう)、群れのあり方ひとつにしても本来の生態とはかけ離れている、そういったこと全てに問題を感じないので、繁殖しろと言えるのではないでしょうか。
ライオンのように出産の頻度や1回あたりの出産頭数が多い動物を出産するに任せていては、不幸なライオンであふれてしまう。そのことに思い至らずに、かわいい赤ちゃんを見たいであるとか、そういった人間中心的な考えになることもいい加減に止めてほしいです。
今回、PEACEからも、繁殖しないよう要望するメールを円山動物園に出しました。動物園は繁殖した動物がどうなったのかについて無責任すぎるのではないかと書きました。
円山動物園で生まれたチンパンジーのダイチは、幼くしてショーのために他園に移され、その後、長い間、堀井動物園のケージ飼育で苦しみました。ようやく熊本サンクチュアリに移されましたが、同居しているのは、これまた円山動物園が繁殖して手放した兄弟です。
全ての動物園がそうですが、円山動物園に生まれたライオンの子を飼う余裕があるとは思えません。新しいライオンがほしいのであれば、より劣悪な飼育環境の施設から引き取るべきでしょう。