象牙等を国外へ持ち出そうとした富士サファリパーク元従業員に求刑1年2カ月

富士サファリパーク元従業員密輸出 裁判

4月7日に、元富士サファリパークの従業員(ゾウ使い)であったラオス人の初公判を聞いてきました。サファリパークで飼育されていた動物由来である象牙(アフリカゾウのもの)や、アジアゾウ、シロサイ、シカ、チーター、キリンの派生物、計227点と158.3グラムを日本国外へ持ち出そうとした密輸出事件で、去年の7月に起きたものです。

CITES(ワシントン条約)該当品目があることを申告せずに(つまり正式な輸出手続きをせずに)税関で摘発された関税法違反事件ですが(詳細は税関の公表を参照)、密輸出されるのが展示施設の動物由来というのは珍しく、サファリパークでの死体の処理や派生物の管理はどうなっているのか非常に疑問に思い、傍聴してきました。

しかし、証拠には富士サファリパーク従業員の供述書も出されていたのですが、勤務状況や、亡くなった動物の埋葬状況という簡単な説明しかなく、傍聴者には詳細はわかりませんでした。現場検証の記録と思われる証拠も出されていましたが、これも傍聴者には内容はわかりません。

標本にするため埋めてあったゾウの死体を掘り起こしたという報道がありましたが、裁判では、あくまで弁護側は、サファリ敷地内に捨てられていたものを拾っただけ、必要ないものだと思ったという主張をしており、被告人質問のときも、掘り起こしたかどうかまではわからない感じの受け答えでした。

被告人側は公訴事実については争わず、ラオスにいる両親からの嘆願書を証拠提出するなど、情状に訴える戦略だったと思います。

また、検察側は冒頭陳述で、持ち出そうとした品は売却しようとしたものだとしていましたが、弁護側は、動物のしっぽの毛でつくった指輪だけ知人に売ったが、他は全てラオスの家に飾ろうと思った、売ろうとしたものではないと主張しました。

裁判官も、最後に、ラオスの実家の家の広さなどを細かく被告人に聞き、そこに全部飾れますか?と聞いていたので、売るためではなかったのかどうかが一番の争点だと感じました。

ほか、被告人は前科前歴なく、日本に来たとき日本の法律を教えてもらったので、日本でも法律を犯さずに過ごすことができたとも言っていた一方、弁護人からの質問では「輸出してはいけないと知らなかった」と言い、検察官に聞かれたときも「洋服のように持ち出せると思った」と答えていました。にもかかわらず、「申告しないといけないことは知っていたか?」という質問には、「はい」と答えていて、あれれれ?どちらなのだろう?と、よくわからない展開になっていました。

裁判は通訳が入っていたのですが、通訳もその回答に驚いていたので、きちんと裁判官の意図通り通訳していたのではないかと思います。ただ、捜査の段階では、通訳が自分の答えを違うように訳したのではないかと思ったこともあったと言っていました。

出国の時も、空港のカウンターで富士サファリパークの人が手続きをしたというのは驚きました。テープで巻いたりして包んだことについては、検察側は、なるべく見つからないようにするためだったのではと言い、被告人はきれいに荷物を包むつもりだったと述べました。

前後しますが、被告人の身上については、2015年から日本で飼育員をやっていた。ラオスの実家は、畑仕事をしていて、動物も飼っていた(ゾウとは明言されていなかった)。日本には、貧しいので出稼ぎにきた。手配は富士サファリパークの人が全てやってくれた。日本語は習っていない。2019年6月まで勤めた。親が具合が悪いので手助けするために辞めた。帰ってからの仕事は畑仕事。それで生活できるはずだった。今回以外で犯罪を犯したことは一度もありません、とのこと。

求刑は関税法違反で1年2カ月でした。

短絡的犯行であり、正規の手続きを踏めばできたばずだったのに犯行に及んでいること、大量であり税関秩序を乱したことなどを挙げ、猛省を促すためと検察側は述べました。

日本人には罰金ばかり求刑して、外国人には強気なのか!?と思いますが、被告人の財産は所持金の10万円程度ということだったので、罰金を科すほうが人道的ではないのだと思います。

弁護側は、営利目的でないこと、第三者の関与もないこと、生きた動物から切り取ったりしたものではないこと、一部は廃棄するものだったこと、動物の保護に影響ないことなどを挙げ、日本の法律について説明を受けておらず、前科前歴もない、両親から嘆願書も出ていて一家の生計を支えている等、情状に訴えました。

また本人も謝罪の意を述べ、できるだけ刑を軽くしてほしいと最後に述べました。

判決は4月21日(火)午前11:00~、同じく千葉地裁です。

おそらく執行猶予がつき、退去強制手続き(いわゆる強制送還)がとられるのではないでしょうか。去年7月に逮捕されてからずっと収監されていたはずで、裁判にも腰縄・手錠・刑務官付きでした。持ち出したときは、こんなことになると思っていただろうか?とは思いました。

しかし、動物の死体に価値があること自体が、野生下の動物たちへの脅威を生み出す原因となっているのであり、動物保護に影響がないという弁護側の見解には同意できません。また、象牙については、国際取引に規制があることをゾウの調教師が知らないはずがないと思います。

富士サファリパークにも電話で聞いてみましたが、死体の処理や派生物の管理、窃盗とは考えていないのかといったところは、答えられないとのことでした。ラオス人を雇用している理由は、アジアゾウの展示は最近始まったが、アフリカゾウとは扱い方が違うので、ゾウが来たとき同時にラオス人も雇用したとのことでした。日本語はリーダー格の人しか話せないそうです。お給料はどれくらいだったのかなど聞きたかったのですが、聞けずじまいでした。

希少種は死体や体の一部も価値を生じてしまうため、展示施設には適切な処理や管理が求められるはずです。展示施設由来の象牙などが商業利用や密輸に回ってしまったら、動物を何のために動物を飼ったりふやしたりいるのかということになってしまいます。

税関HP「各税関の摘発事件発表(令和2年)」より

【東京税関】ラオス人男性による象牙等の密輸出事件を摘発(令和2年1月14日発表)

 東京税関成田税関支署は、令和元年7月4日、ベトナム社会主義共和国を経由してラオス人民民主共和国へ出国しようとしたラオス人男性が、スーツケース及びリュックサックに収納された絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(以下「ワシントン条約」という。)に該当する象牙等を税関長の許可を受けずに輸出しようとしたところを発見・摘発し、千葉県成田国際空港警察署が、令和2年1月14日、同男性を関税法違反で通常逮捕した。

 【犯則物件】   
⑴ 象牙(アフリカゾウ)     13点(ワシントン条約附属書Ⅰ)
⑵ アジアゾウの派生物     157点及び158.3グラム(同条約附属書Ⅰ)
⑶ アジアゾウとシロサイの派生物  1点(同条約附属書Ⅰ)
⑷ シロサイの派生物        2点(同条約附属書Ⅰ)
⑸ チーターの派生物        1点(同条約附属書Ⅰ)
⑹ シカの派生物         16点(同条約非該当)
⑺ キリンの派生物        37点及び7.1グラム(2019.11.26以降同条約附属書Ⅱ)

追記

4月21日に判決が出ました。こちらをご覧ください。

富士サファリパーク元従業員判決は、懲役1年2カ月、執行猶予3年

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