ノースサファリサッポロにの建物は全て無許可で違法状態
危険な動物とのふれあいを売りにし、動物福祉に配慮のない施設として知られていた札幌市の動物展示施設「ノースサファリサッポロ」ですが、2月1日の読売新聞の報道を皮切りに、総ての建築物が開業以前から違法に設置されていた問題についての報道が続いています。
【読売新聞】 宅地や商業施設の開発が制限される「市街化調整区域」に動物園を無許可で開設したとして、札幌市南区の「ノースサ…
ノースサファリサッポロが営業している場所は、都市計画法の定める市街化調整区域にあたり、住宅や商業施設、ビルなどを建築する開発は原則認められない場所だったというのです。開業は2005年ですから、実に20年も問題が続いていたことになります。
札幌市は、「郊外の大部分が『市街化調整区域』であり、森林や農地などの貴重な自然を保全し、無秩序に市街地が拡大するのを抑制しています」とウェブサイトに書いています。
ノースサファリサッポロは札幌市の動物園条例の対象となる「動物園」にはあたりませんが、多くの人が動物園だと思っているような施設です。動物園が(実際にそれができるかは別として)環境保全などをうたわなければ存在意義を失う時代に、地域の自然を破壊して土地を開発、次々と違法に建築物を建てていたというのだから、驚きます。
当会でも札幌市に確認しましたが、現在ノースサファリサッポロの総ての建築物は許可なく違法に建てられたもので間違いがないとのこと。運営会社であるサクセス観光に対し、市はいよいよ建物の除却命令を出す方針です。2月10日の市長会見での質疑応答も視聴しましたが、札幌市はあくまで完全撤去を求めており、ノースサファリの現状の建物に許可が出ることはありません。
動物の命を預かる業でありながら、その事業の根本となる建築物について違法状態を解消せず事業拡大して継続してきたなどというのは、あまりに無責任です。
ノースサファリ側は、当初は市の見解に抵抗を見せるような文書を公表していましたが、その後、次々とその他の問題点が報道される中、撤去へ向けた計画を17日に市に提出すると公表しました。
土地計画法以外の問題も、次から次へ
これまでに報道された他の問題には、以下のようなものがあります。
- 国道沿いに誘導のための看板を違法に設置していた。北海道開発局が8回指導。報道後に全て撤去された。
- 建物の一部や看板、恐竜のオブジェが、市の所有する河川敷にはみ出している。
- 近隣の市街化調整区域に新たに土地を購入しており、そこをイベント会場にする予定である。地元住民は反対。
- 2005年の開業時に第一種動物取扱業の登録をしておらず、市が翌年、事後的に登録を認めた。
- 飲食店も開業時に無許可営業がわかっていたが、市は事後的に営業許可を出した。
- 2018年9月にサービス開始した宿泊施設(グランピング)も、当初、旅館業の許可申請はなく無許可だった。
- ゴマフアザラシの(鳥獣保護法上の)飼養登録を5年間していなかった。➡詳しくはこちら
- 開業前の2004年、無許可で川の水を引く水路の工事をしていて、市が指導し工事が取りやめられていた。←追加
- クマやコブラなどの特定動物を無許可の状態で飼育していたことがわかり、市が10回以上行政指導していた。←追加
- 動物や展示について札幌市が30回以上、指導していた。←追加
- 施設内の調理施設の使用水は井戸水だが塩素減菌機が設置されていなかった。消費期限切れの豚肉が厨房内の冷蔵庫にあった。←追加
- 2024年1月に取得した市街化調整区域の土地9万8000平方メートルについて、土地国土利用計画法で義務付けられている契約成立から2週間以内の市町村への届出をしていなかった。←追加
- 2019年、無許可で川の土砂を削ったり盛ったりしていることが分かり、市が行政指導を行っていた。←追加
- 2024年、キャンプ場で炊事後の後片付けに川の水を使っていたが、市は公益性がないとして利用を認めない方針を伝えた。←追加
- 無許可で川に橋を架け、行政指導を受けていた。市の条例違反となるため、2019年に市が撤去を指導し、翌年に撤去された。橋にはしっかりとした基礎がなかった。←追加
- クラブにキツネ、サル、フクロウなどを連れてきてナイトサファリをやっているとの苦情が市にあった。サルにジュースをやっていた。(ナイトクラブはすすきのにあった有名店「KING XHMU」)←追加
20年前の動物業者では、ままありがちだったかもしれませんが「法を守って事業をする」という考えがあまりになさすぎです。報道によれば、開業当時10棟だった無許可建築は去年3月までに156棟まで増加。これをさらに拡大しようというのですから、市が強硬な手段に出るのは当たり前で、遅すぎたくらいです。
指導回数は17回と報じられていますが、これは、あくまで都市計画法の問題についての回数です。それ以外にも、動物の扱いの問題について、以前は動物管理センター(現・動物愛護管理センター)から「毎月のように指導に行っている」と聞いていました。テレビでこの施設が紹介されると、すぐ「酷い施設をテレビで見た」と通報が来るとも聞いていました。
【読売新聞】 札幌市南区の市街化調整区域で開発許可を得ないまま民間動物園「ノースサファリサッポロ」が営業している問題で、…
それにしても、第一種動物取扱業の登録がされてしまったことが悔やまれます。それによって長年この施設で動物が苦しむことになり、今、行き先の問題に直面しているはずです。こうしたことにならないよう、事業の根本となる土地・建物については、登録時にきちんと合法性を要件とできるよう動物愛護法の改正が必要です。(私たちの考えていた改正逐条案では弱いことがわかったので、さっそく要望項目をふやしました。今後、第十二条の改正を要望していきます。)
また、去年グランピング施設のアザラシがあまりにかわいそうだということでネットで炎上し、市には500通の通報があったと報じられています。その際にも集英社オンラインが報じてくれましたが、野生捕獲のゴマフアザラシについて、ノースサファリサッポロでは鳥獣保護法上の飼養登録を怠っていた問題がありました。今回、北海道のテレビニュースでも報じられましたので、それについて別途投稿します。
2025年2月21日追記:ノースサファリサッポロが「実際には死亡していないにも関わらず7頭が死亡と報道されていることなど事実と異なる点」があると公表しましたが、札幌市環境局環境都市推進部環境共生担当課に確認したところ、確かに去年ノースサファ[…]
ノースサファリサッポロでは昨夏、仔ライオンのアポロ(オス)とルーナ(メス)が立て続けに死亡。「2頭共に多臓器不全によるショックと衰弱が原因ではないか」との公表。つまり、要するに熱中症ではないかと、このこともSNSを中心に問題視された。
【追記】
その後も別の問題が発覚し続けているので、リストに追記していっています。(2025.2.19)
関連記事
2025年2月21日追記:ノースサファリサッポロが「実際には死亡していないにも関わらず7頭が死亡と報道されていることなど事実と異なる点」があると公表しましたが、札幌市環境局環境都市推進部環境共生担当課に確認したところ、確かに去年ノースサファ[…]
市街化調整区域に許可なく建築物を建て続けてきた動物展示施設「ノースサファリサッポロ」(北海道札幌市南区)に事実上の閉園命令が出されようとしています。そのことが報道されてから、その他の法令違反等についても連日の報道が続いています。詳細はこちら[…]