一昨年、ボーンフリーUSAが飼育下の魚類の苦しみに関するレポート「Oceans Away from Home: The Suffering of Fish in Captivity」を公表した際、下記の連続ツイートをしました。動物展示施設に対し、自然界から野生の魚を捕獲、収集することを直ちに中止し、飼育下での直接の触れ合い(タッチングプール、タッチタンク)を禁止するよう求める内容です。ブログにも改めて報告書の概要を再掲しておこうと思います。
今年、ボーンフリー財団が飼育下の魚類の苦しみに関するレポートを公表した。
展示施設に対し、自然界の生息地から野生の魚を捕獲、収集することを直ちに中止し、飼育下での直接の触れ合い(タッチタンク)を禁止するよう求めている。https://t.co/6ywVb4I97a— PEACE 命の搾取ではなく尊厳を (@animalsPEACEnet) September 14, 2023
主な調査結果
- 世界中で、約 5,400 種 10 億匹以上の観賞魚 (淡水魚と海水魚) がアクアリウム業界で毎年取引されていると推定されています。これらの種のうち、何らかの形で規制または保護されている種はほとんどありません。
- いくつかの例外を除き、アメリカの法律は、飼育されている魚類を虐待、ネグレクト、残虐行為から保護していません。
- AZA (アメリカ動物園水族館協会)施設の 76.5% が水生動物を飼育しているにもかかわらず、飼育下の魚類に対する最低限の飼育設備の基準やサイズ、福祉、または保護要件などはありません。また、タッチングプール(ふれあい水槽)に対する規制もありません。タッチングプールは、人獣共通感染症の感染(致命的となりうるものもある) により、人間の公衆衛生と安全に大きなリスクをもたらします。
- 水族館の水槽は、野生において最も定住性の高い魚の最も小さい生息域のサイズよりも桁外れに小さいため、魚類の健康状態と福祉は極めて劣悪です。
要約
魚類は世界中で飼育される動物のなかでも最も人気の高い部類に含まれますが、基本的な飼養管理や福祉の点で最も見過ごされ、無視されている動物でもあります。犬や猫であれば、通常、完全に動物虐待とみなされる多くのケースが、水生種になると、同じ結論や懸念に至らないのです。
そのように人間にとって価値があると認識されるものと動物のもつ知覚との間の、この大きな乖離について多角的な説明を提供するため、この報告書では、次のようなことを概説しています。
有害でほとんど規制されていない観賞魚の私的取引、
それに伴う野生での生息数減少、
魚類の持つ感覚/感情や複雑な認知機能、社会的な意味をもつネットワーク、大型の陸生哺乳類と同じように痛み・苦しみを経験することなどを確かめた研究、
公衆衛生と安全に大きなリスクをもたらすタッチングプールや、シアン化合物漁といった非倫理的な慣行などを含め、魚類を飼育する動物園・水族館による非倫理的で残酷な行い、
魚類に関するアメリカの法律
このレポートは、文献調査と現地調査の両方を組み合わせることによって、動物の福祉・保護のためと主張する施設においても、今日において、明白に、そして驚くほど広い範囲で容認されてしまっている動物福祉最大の不平等のひとつを明らかにします。
勧告事項
- 動物展示施設に、タッチングプールを禁止するよう要請してください。タッチングプールは真の保全活動にはまったく貢献せず、動物と、それに関わる人間の福祉に直接悪影響を与えるからです。
- 動物展示施設に、自然の生息地から野生の魚を捕獲してコレクションとすることを直ちに中止するよう要請してください。そうすることで、野生の個体群を保護し、シアン化合物を使う漁業などの有害な漁獲方法の使用を減らすことができます。
- 当報告書にまとめられた科学的根拠に基づき、州および連邦の両方の動物虐待規制法において、魚類が「動物」の定義に含まれるよう声を挙げてください。
ペーシング(同じ場所を行ったり来たりする常同行動):飼育下の魚が水槽内で同じ循環を描いて泳いでいるのがよく見られます。これは、狭い水槽スペースでは魚が最高速度に達することができず、異常な行動を引き起こすためです。
Pick up
不自然な飼育環境
この報告書では、球形の水槽が虫眼鏡のような効果をもたらすことにも触れられています。魚たちに不自然な体験をもたらす飼育設備は、奇妙な反復行動に遭遇することが多く、攻撃やガラスを繰り返しこするような行動(体の損傷を引き起こすことが多い)やペーシングなどとして現れることがあります。
照明や音
照明や音は魚に大きな悪影響を与える可能性があります。 人から逃げる、隠れるなどの防御行動は、コルチゾールレベルの上昇(ストレスが高まっていることを意味する)と関連していることが多く、慢性的に経験した場合、ストレスレベルの上昇、病気への感受性の増加、魚の死亡率の増加などにつながります。
アメリカでは明らかに福祉上の問題があるとして、タッチプールから魚類を撤去した水族館も多いそうです。ただし、代わりにイソギンチャクやヒトデなどは使われてしまっているとのこと。
タッチングと感染症
タッチングでは、丹毒、カンピロバクター、サルモネラなどをはじめとしたさまざまな細菌感染症が魚から人へ感染するかもしれません。逆に結核などは、触れ合い前の不適切な消毒や傷口によって、人から魚に移す可能性があります。
オーストラリア北部や東南アジアで見られる珍しい熱帯病、メリオイドーシス(類鼻疽)がアメリカで子どもなどに発生した際は、輸入された熱帯魚を飼育していた自宅水槽が原因と特定されています。
タッチングとケガ
タッチングプールでは、エイのトゲが刺さる、サメに咬まれるなど、酷いこともされています。 ある水族館では1年に30人も負傷しました。
エイのトゲを2週間ごとに切除するという非人道的なことも行われていますが、これは感染症等を引き起こす可能性もあります。 フグに咬まれて神経毒でしびれや呼吸困難の事例もあるとのこと。
ボーンフリーUSAは、アメリカ動物園水族館協会(AZA)に対し、すべての加盟施設でのタッチングプールの禁止を求めるメールアクションを行っています。
タッチングプールは動物福祉や安全性全般にとって悪影響を及ぼし、一般の人々への教育や野生動物保護の支援に、いかなる意味でも役立っていません。
【2023年当時行われていたオンライン署名の内容】
タッチングプール内の動物はストレス誘発行動を示しており、不自然な環境では福祉や健康状態が悪化することを示しています。 来場者から逃げる、浅い水槽から脱出しようとする、異常な反復行動をするなどが含まれます。 タッチングプールの数え切れない魚が、水質の悪化、生命維持システムの故障、水槽内の毒素などの問題により死亡しています。
さらに、タッチプールの魚によって多くの人が負傷しました。 これらの事故は、多くの水族館が、危険を軽減するために動物の体に不自然な改造を加えていたにもかかわらず、発生しました。タッチプールはまた、動物と来場者の間で病気が伝染しうる機会を提供します。 AZA 施設のほとんど (76.5%) で水生動物を飼育しており、その多くにタッチングプールが設置されています。 全国規模の苦しみを最小限に抑えるために、会員施設によるこの残酷な行為を今すぐ禁止してください。
こんなことはもう止めるべき(鳥羽水族館、2024年11月)
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