2019年改正動物愛護法解説:動物取扱責任者の要件が改正されました。研修は外部委託可能に
動物取扱責任者(第二十二条):責任者の条件が追加されました。一方、研修は外部委託を可能にする改正が行われました
(動物取扱責任者)
第二十二条 第一種動物取扱業者は、事業所ごとに、環境省令で定めるところにより、当該事業所に係る業務を適正に実施するため、動物取扱責任者を選任しなければならない。
2 動物取扱責任者は、第十二条第一項第一号から第七号までに該当する者以外の者でなければならない。
3 第一種動物取扱業者は、環境省令で定めるところにより、動物取扱責任者に動物取扱責任者研修(都道府県知事が行う動物取扱責任者の業務に必要な知識及び能力に関する研修をいう。)を受けさせなければならない。
※下線が改正部分。
第二十二条 第一種動物取扱業者は、事業所ごとに、環境省令で定めるところにより、当該事業所に係る業務を適正に実施するため、十分な技術的能力及び専門的な知識経験を有する者のうちから、動物取扱責任者を選任しなければならない。
2 動物取扱責任者は、第十二条第一項第一号から第七号の二までに該当する者以外の者でなければならない。
3 第一種動物取扱業者は、環境省令で定めるところにより、動物取扱責任者に動物取扱責任者研修(都道府県知事が行う動物取扱責任者の業務に必要な知識及び能力に関する研修をいう。次項において同じ。)を受けさせなければならない。
4 都道府県知事は、動物取扱責任者研修の全部又は一部について、適当と認める者に、その実施を委託することができる。
動物取扱責任者は、従業員に法律を周知徹底するなど、事業者が適正な動物の飼養管理を維持するための重要な役割を担いますが、知識がなく、劣悪飼育事業者での実務経験があるだけである等でも可となってしまっているのが実態です。
また、実務経験を証明する書類を多数発行している業者の存在も明らかになっており、さらにお金をもらって証明書を出している事業者の情報もあり、虚偽による登録も一定数あるものと推測されます。
適切な動物取扱責任者の選任を明文化することはなかなか難しい課題ではありますが、3団体として、「動物の取扱いに関連する十分な実務経験を有し、かつ、環境大臣の認定を受けた資格を有する者の中から」を条件とすることを求めてきました。
今後の政省令等の改正により、どこまで要件を厳しくできるかが課題ではありますが、私たちの提案に近い「十分な技術的能力及び専門的な知識経験を有する者のうちから」との条件が追加されました。
しかし一方で、責任者研修については、外部委託が可能になる改正が行われました。愛護団体からは、このような改正の要望はなかったのではないかと思います。
施行規則改正
この改正に伴い施行規則が改正され、動物取扱責任者の要件は、下記のように定められました。
3団体では、自宅での飼養経験は実態があるかどうかの確認ができず、虚偽を述べることが自由にでき、また業として動物を取り扱うための知識・経験を持ち合わせているとは考えられないため、取扱責任者の要件として認めないよう求めましたが(単なる従業員ではなく、責任者であることに留意)、「実務経験と同等と認められる一年間以上の飼養に従事した経験」との文言が入ってしまいました。
これまでは、業で扱う動物を一切扱ったことがなくても動物取扱責任者になることができましたので、実際の実務での取扱い経験は必須と考えますが、微妙な記述となりました。施行通知にて、「単なるペットとしての飼育経験は実務経験と同等とは認められないことに留意が必要である」との助言はなされていますが、今後どのように運用されていくのか、懸念もあります。
要件については、個人情報に当たるとの解釈のもと非公開となることが多く、外部からのチェックが働きづらい点です。
動物の愛護及び管理に関する法律施行規則
(動物取扱責任者の選任)
第九条 法第二十二条第一項の動物取扱責任者は、次の要件を満たす職員のうちから選任するものとする。
一 次に掲げる要件のいずれかに該当すること。
イ 獣医師法(昭和二十四年法律第百八十六号)第三条の免許を取得している者であること。
ロ 愛玩動物看護師法(令和元年法律第五十号)第三条の免許を取得している者であること。
ハ 営もうとする第一種動物取扱業の種別ごとに別表下欄に定める種別に係る半年間以上の実務経験(常勤の職員として在職するものに限る。)又は取り扱おうとする動物の種類ごとに実務経験と同等と認められる一年間以上の飼養に従事した経験があり、かつ、営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術について一年間以上教育する学校その他の教育機関を卒業していること(学校教育法による専門職大学であって、当該知識及び技術について一年上教育するものの前期課程を修了していることを含む。)。
ニ 営もうとする第一種動物取扱業の種別ごとに別表下欄に定める種別に係る半年間以上の実務経験(常勤の職員として在職するものに限る。)又は取り扱おうとする動物の種類ごとに実務経験と同等と認められる一年間以上の飼養に従事した経験があり、かつ、公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術を習得していることの証明を得ていること。
また、責任者研修については、法律の改正では外部委託できるようになっただけなのに、関西広域連合からの要望により、なぜか年1回規定がなくなってしまいました。すべての事業所に年1回立入できている自治体であれば研修回数を減らすこともできるのかもしれませんが、実態として、法律が登録業者にまだまだ浸透していないことは明らかです。内容についても後退が見られ、今後どのようになっていくのか懸念を感じます。法改正からは読み取れない規制緩和が行われてしまいました。
動物の愛護及び管理に関する法律施行規則
(動物取扱責任者研修)
第十条 都道府県知事又は都道府県知事から動物取扱責任者研修の全部若しくは一部の実施を委託された者は、動物取扱責任者研修を開催する場合には、あらかじめ、日時、場所等を登録している第一種動物取扱業者に通知するものとする。
2(略)
3 第一種動物取扱業者は、選任したすべての動物取扱責任者に、当該登録に係る都道府県知事の開催する次に掲げる事項に関する動物取扱責任者研修を受けさせなければならない。ただし、都道府県知事が別に定める場合にあっては、当該都道府県知事が指定した他の都道府県知事が開催する動物取扱責任者研修を受けさせることをもってこれに代えることができる。
一 動物の愛護及び管理に関する法令(条例を含む。)
二 飼養施設の管理に関する方法
三 動物の管理に関する方法
また、改正施行規則公布と同時に公表された「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部を改正する省令及び環境省関係告示の整備に関する告示について」には、概要として以下のように書かれています。
改正法により、動物取扱責任者の選任要件について「十分な技術的能力」及び「専門的な知識経験」の双方が求められることとなったため、これを施行規則で明確化するとともに、獣医師及び愛玩動物看護師についても要件を満たす資格として規定する。なお、現任の動物取扱責任者は、これらの要件について改正法の施行の日から3年間は従前の例によるものとする。(3)動物取扱責任者研修の適正化(第10条関係)
地方分権提案事項に関する閣議決定等を踏まえ、研修回数及び時間に係る義務付けを廃止するなど、都道府県知事等の裁量が確保できる規定に見直しを行う。
施行通知
施行の直前、2020年5月28日付けで環境省から自治体に通知された「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行について」(施行通知)では、以下のように説明されています。(この通知は、地方自治法に基づく、国から自治体への「技術的な助言」に相当します)
5動物取扱責任者の要件の適正化等(第22条関係)
(1)選任要件動物取扱責任者の要件として、十分な技術的能力及び専門的な知識経験を有することが加えられ、選任要件の適正化が図られた。具体的な要件は、施行規則第9条に列記している。このうち、第1号ハ及びニに規定する「取り扱おうとする動物の種類ごとに実務経験と同等と認められる1年間以上の飼養に従事した経験」については、雇用関係が発生しない形(師弟関係やボランティア等)又は常勤ではない雇用形態等において、動物取扱業者と同等と認められる飼養に従事した経験を想定している。本規定の適用は、動物取扱業と同等の飼養経験の内容とその従事期間が証明されること等をもって、判断されたい。また、一般家庭での飼育経験を一律に除外することは困難であるが、単なるペットとしての飼育経験は実務経験と同等とは認められないことに留意が必要である。
(2)研修動物取扱責任者研修については、(1)に記載の動物取扱責任者の選任要件の適正化も踏まえ、施行規則第10条第3項の研修回数や研修時間に係る規定が削除されるとともに、法第22条第4項において、当該研修の全部又は一部を委託することができる旨が規定された。これらは、都道府県知事が第一種動物取扱業の区分や取扱対象動物の分類群等に応じて研修内容を変更する等、地域の実情に応じて、より効果的な研修を行うことができるよう改正されたことに留意が必要である。
2019年改正法の概要 目次
● 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等
- 登録拒否事由の追加により欠格要件が強化されました
- 環境省令で定める遵守基準を具体的に明示する条項が入りました
(飼養施設の構造・規模、環境の管理、繁殖の方法等) - 販売場所が事業所に限定されます
- 生後56日(8週)を経過しない犬猫の販売規制が実現するも、例外措置が附則に
- 帳簿の備付けと報告の義務が犬猫等販売業から拡大
- 動物取扱責任者の条件が追加されました
- 勧告・命令違反の業者の公表と、期限についての条項が新設されました
- 廃業・登録取消後に立入検査や勧告等を行うことができる規定が新設されました
参考:2019年改正動物愛護法に入らなかったこと<動物取扱業>
● 動物の適正飼養のための規制の強化
● 都道府県等の措置等の拡充
- 動物愛護管理センターの業務を規定、自治体への財政上の措置も新設
- 動物愛護管理担当職員の配置は義務になり、市町村にも設置努力規定
- 動物愛護推進員は委嘱が努力義務に
- 所有者不明の犬猫の引取りを拒否できる場合等を規定
● その他