昨年、「美しさに犠牲はいらないキャンペーン、化粧品規制協力国際会議にて動物実験廃止を訴え」の中で公表される予定とご紹介していたICCR(化粧品規制協力国際会議)の報告書”Integrated Strategies for Safety Assessment of Cosmetic Ingredients: Part II”(化粧品原料の安全性評価のための統合戦略に関するICCR報告:その2)がICCRのサイトで公表されました。
それに関連し、欧州委員会が動物実験なしで化粧品の安全性評価を行うため包括的な原則を公表したというリリースを出していたので、翻訳でご紹介します。
このとりまとめには日本からも貢献しているのですが、あまり大きく取り上げられていないことは残念です。
リリース:
化粧品の次世代リスク評価のための原則
2019年1月22日
規制当局および産業界と国際的に協働し、EU共同研究センター(JRC:ジョイントリサーチセンター)の科学者たちは、動物実験を伴わない化粧品の安全性評価のための包括的な原則のとりまとめに貢献した。
化粧品原料および製品の安全性評価のための動物実験は、EUでは完全に禁止されています。したがって、化粧品の安全性は、新しい方法と戦略によって保証される必要があります。これは、有害性を引き起こす機序を理解する際に「ブラックボックス」となっている、動物を用いる試験法から転換するという毒性学の一般的な流れと合致しており、情報がより多く得られ、的が絞られた化学物質の評価を実現します。化粧品分野は、化学物質の安全性評価の進歩を導く、またとない機会を得ているのです。
欧州連合、ブラジル、カナダ、日本、米国の規制当局および業界による国際的なワーキンググループは、化粧品原料の安全性評価のための新規手法とデータの統合を支える9つの包括的な原則を概説しました。このワーキンググループは、化粧品の安全性に関する一般的な問題を扱う化粧品規制協力国際会議(ICCR)の一部です。
「次世代」リスク評価の原則のうち、メインの4つは、安全性評価に使用される方法はヒトの健康への影響を評価するために適切なものである必要があり、全体の目標は被害の防止であるべきと述べています。
(体に)影響が出るときの生物学的なメカニズムに関する仮説は、物質へのばく露の方法、期間、頻度を考慮すべきですし、評価を導きだすべきでしょう。他の5つの原則は、評価がどのように実施され、文書化されるべきかに関するものです。
「次世代」リスク評価では、細胞株や3D培養臓器でのin vitro試験を計算モデリングと組み合わせるなどの新しいアプローチ方法論を用います。
これらの方法は、動物実験に比べてヒトへの妥当性を高める視点から開発されており、より確実にヒトの健康を守ります。安全性評価を行う方々の追加の手引きとして、ワーキンググループは、これらの新規手法について長所と限界の両方を記載し、化粧品の安全性評価の過程でどのように使用できるかを示す2つめの報告を出しました。
この報告書はまた、EU共同研究センターも関わった、化粧品安全性評価のためのin silico手法の概説をまとめた以前のICCRの活動に基づいています。
参考文献:
Dent M. et al., “Principles underpinning the use of new methodologies in the risk assessment of cosmetic ingredients”, Computational Toxicology, 7 (2018), pp. 20-26. doi: 10.1016/j.comtox.2018.06.001
ICCR Report on Integrated Strategies for Safety Assessment of Cosmetic Ingredients: Part 2(化粧品原料の安全性評価のための統合戦略に関するICCR報告:その2)
Report from the Commission to the European Parliament and the Council on the development, validation and legal acceptance of methods alternative to animal testing in the field of cosmetics (2015-2017), COM/2018/531 final.(化粧品分野における動物試験代替法の開発、評価および法的受け入れに関する委員会から欧州議会及び理事会への報告)
出典:
EU Science Hub:Principles for Next Generation Risk Assessment of Cosmetics
補足:
文書全てはとても訳せないところですが、9つの原則とは以下のような感じです。(ちょっと意訳かもしれません)
原則1:全体の目標は、ヒトの安全のためのリスク評価である
原則2:まず暴露を評価する
原則3:評価は仮説によって促される
原則4:評価は有害事象を防ぐように設計される
原則5:段階的、複層的なアプローチを使う
原則6:存在するすべての情報を適切に評価する
原則7:確実で適切な方法・評価戦略を使う
原則8:評価の筋道は透明性を持って明文化する
原則9:不確かさの原因について特徴を明らかにし文書化する