▲新しくくるゾウも、特定動物の飼養・保管許可が下りている施設に、以前と変わりはないという。
アジアゾウは、ワシントン条約付属書Iに掲載されている希少種であり商業取引は禁止されています。しかし、サーカスなど短期展示のためには、本国に返還すること前提で、年限上限付きで輸入をすることができます。
その年限の上限がもともと3年だったところを、2015年に経済産業省が6年まで延長可に制度を変えていました(詳細はこちら)。しかし、なんと昨年9月、木下サーカスが那須ワールドモンキーパーク園長の関わるアジア野生動物研究センターに泣きつき、その働きかけによって、理由があれば、6年からさらに期間を延長する追加ができるように、経済産業省は再び制度を変えていたんです!
驚愕です。経済産業省は、一体どこまでエンターテインメント産業を優遇するのでしょうか!
これにより、今年3月、大阪公演まで使われていたゾウのワッサナーは、本来、去年9月の岡山公演後に帰国しなければならなかったところを、今年3月まで、サーカスの営業に利用されたわけです。集中豪雨により飛行機が飛ばなかったという理由があるようですが、それにしても、法令改変による延期によって、営利目的に利用できてしまうのはおかしいのではないでしょうか。
これがワシントン条約の運用の実態です。
ワッサナーは、その後も何らかの都合でラオスに戻れておらず、那須サファリパークへいったん預けられているとのことです。
木下サーカスには、このワッサナーと、先に帰国済みのブアクムの2頭がいましたが、東日本大震災後に「日本・ラオス親善ゾウ」として日本に短期展示目的で輸入された6頭と同じ年に計8頭、ラオスから来ており、帰国も同時だそうです。
ラオスから貸与されているゾウの一覧
那須ワールドモンキーパーク トンクーン、ナッド
東北サファリパーク(冬季は沖縄こどもの国) ブントーン、トンサイ
岩手サファリパーク カンピアン、ブンミー
来日当初とは組み合わせが変わっていますが、相性等の問題があり、入れ替えが行われたそうです。このゾウたちは、ラオスでは個人のゾウ使いの所有物であったり、村などで共有されている場合もあるそうで、帰国後に動物園等に戻るわけではありません。つまり、使役や観光産業などに使われているゾウです。日本で2頭一緒にいましたが、元から一緒にいたわけではなく、相性の問題などもあったわけです。ゾウ使いたちも、本国でのことは、多くは語らない様子だとか。ラオスからは、中国のエンターテインメント産業等への出稼ぎなども行われているそうです。繁殖は、メスを野生に放し、妊娠したら再度捕まえるというやり方であり、純粋な飼育下繁殖ではありません。(ワシントン条約の運用にあっては、個体の由来も重要情報)
木下サーカスに限らず、まさにアジアゾウの利用、搾取と一体なのが、日本のゾウ展示でした。
さらに問題なのは、次のゾウの輸入の手続きが進められていることです。木下サーカスは現在名古屋で興行中。もしかして既に間に合わないかもしれませんが、それでも一言、日本のサーカスに連れてきてコンテナ小屋暮らしをさせるのは問題だ、輸出するべきでないと、ラオス政府に向けご意見をお送りください。
意見送付先
駐日ラオス大使館 サンプルレター
〒106−0031 東京都港区西麻布3−3−22
FAX:03-5411-2293
英語ができる方は本国へのメールもお願いします。
Ministry of Agriculture and Forestry
Mr. Sousath Sayakoummane
Director General of Department of Forestry , MAF
Fax: +856 (21) 21 74 83
Email: ssayakoummane@gmail.com, cc: ckeophouvong@yahoo.com
経済産業省
サーカスのためにワシントン条約上の規制をどんどん緩めるのは止めるべき、サーカス・短期展示目的でゾウを輸入させないで!と意見をお送りください。
メールフォーム(ページの最下部にフォームがあります)
担当は、貿易経済協力局 貿易管理部 貿易審査課 野生動植物貿易審査室
電話:03-3501-1723 FAX:03-3501-0997
電話対応時間:平日(行政機関の休日を除く)の9時30分~17時(12時~13時を除く)
サンプルレター
できれば書き換えて、自分の思いを伝えてくださいね! 大使館は日本語でOKです。
ラオス人民民主共和国
特命全権大使
ヴィロード・スンダーラー閣下
拝啓
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
今般、日本の木下サーカスが貴国からアジアゾウを再び借り受けようとしていることを知り、非常に遺憾に感じております。木下サーカスでは、コンテナづくりの簡易な飼育小屋でアジアゾウが飼育されており、十分な飼育環境もなく、全国のサーカス会場を転々と連れまわされています。生き生きとしていないその姿は、涙を誘うものです。
またそもそも、サーカスでアジアゾウのショーを見世物にすることは、野生動物と人とのかかわり方について、多くの日本人に誤った考えを植え付けてきています。
サファリパーク等でのゾウライドも同様ですが、野生アジアゾウ、ひいては野生動物全般の保全にとって悪影響を及ぼすことになる娯楽のために、アジアゾウを貸与・輸出することを、どうか止めていただけないでしょうか。気候も環境も全く異なる日本にアジアゾウを連れてくるのではなく、もっと別の形でラオス・日本間の友好が図られることを祈念しております。
どうか輸出を中止してください! よろしくお願い申し上げます。
敬具
▼日本での飼育小屋(木下サーカス)
追記
[caption id="attachment_28061" align="aligncenter" width="700"] 木下サーカスの飼育設備[/caption]非常に腹立たしいことですが、木下サーカスにラオスから2頭のアジ[…]
●日本に6年いたアジアゾウのワッサナーが日本でさせられていた芸
- 輪っかを鼻で回す。
- 小さな台の上に乗って、前足で立ったり後ろ足で立ったりする。
- 体の前を上げて後ろ足で立って、二足歩行する。
- 鼻に人を乗せて歩く。
- リボン付きの棒を鼻で持ってくるくる回す。
追記2
その後、ラオスからはアジアゾウ輸出停止措置がとられました。木下サーカスの2頭のゾウに間に合わなかったことが悔やまれます。
追記:2023年11月、ワシントン条約第13条に基づくラオス人民共和国への取引停止勧告は、付属書の動植物全てに拡大しました。この勧告の中でも、要件を満たすまでアジアゾウを輸出しないよう、引き続き同国に対し勧告が継続されています。下記の記事は[…]