SNSで既に第一報をお伝えしましたが、韓国で動物実験に関する情報公開裁判に市民団体が勝訴しました。
「生命体虐待防止フォーラム」のリリースの翻訳をいただきましたので、掲載いたします。
同団体代表のパク・チャンギル先生は大学教授でもいらっしゃり、10年ほど前に日本で開催された動物実験代替法の世界大会(WC6)で来日された際、お会いしたこともあります。動物実験の問題に強く関心を寄せていらっしゃいました。
韓国でこのような判決が出たことに、心からお祝いを申し上げます。
ソウル行政法院のソウル大学校病院動物実験情報の全面的公開判決を歓迎する
ソウル大学校病院の動物実験に対する各種マニュアルと、報告書の公開を要請する動物団体の要求を拒否したソウル大学校病院に対して、行政法院11部(判事:ハ・テフン他)が、全て公開しろという転向的な判決がを下した。ソウル大病院は期間内に控訴をあきらめて、9月5日にこの判決が確定した。 この判決で、今までの徹底して情報を公開しない国内動物実験施設の慣行が変わるだろうとみる。また、積極的な市民による、実験機関のマニュアルの点検が可能になるだろうと見る。
(訴訟進行過程)
ソウル大学校病院に対して、2016年1月29日、国内動物権団体である生命体虐待防止フォーラム代表(原告人)が、ソウル大病院を相手に実験施設の運営方向を判断できる動物実験指針、標準作業書等の実験施設運営に対する規則、点検に対する国内外基準、内部調査報告書などに対する公開を要求したが、これを拒否し、持続的に原告人の異議申請を棄却した。
その間ソウル大病院は、このような内容の行政情報公開がすでにアメリカのピッツバーグ大学、日本の東京大学など、国際的に競争する研究機関が常時的に公開する情報なのにかかわらず、可能性が非常に希薄な“極端な反対や過激な意思表現などに必要な資料で使われる憂慮がなくはない”という理由を掲げ、情報公開に関する法律が非公開理由と規定した通り、公正な業務遂行や研究開発に顕著な支障を招くようになる、また“営業上の秘密”と解釈されることができるので、公開できないと主張した。
しかも、昨年8月16日、原告人が提訴した中央行政審判委員会は、再び、動物実験に対する行政情報の公開請求を棄却して、動物保護行政が社会次元で透明性確保から後退するだろうという憂慮をもたらすことになった。 生命体虐待防止フォーラムがこれを昨年年末、行政訴訟を請求し、全国動物活動家連帯、動物権団体ケア、韓国動物保護連合、環境の定義などの様々な市民団体が、ソウル大学校病院の行政情報公開を促した。 一方行政訴訟は法務法人トダムのソ・クッカ弁護士が進めた。
(裁判の主要内容)
幸い、動物団体の行政裁判請求(弁護人: ソ・クッカ)に対し、ソウル行政法院は公正な業務遂行に支障がもたらされる可能性がある、というソウル大学校病院の主張とは違って、“情報公開によって動物にあまり苦痛でない実験方法、安楽死方法などがあるという指摘があるが、そのことだけでは被告の動物実験業務の実行に支障がもたらされると見られない。むしろ、そういう指摘は動物福祉増進の次元で推奨されなければならないという意見を掲げ、“情報の公開が動物実験業務の妥当性と透明性を確保するのにも寄与するものと見られる”と判決した。
また、非臨床実験機関なので標準作業書が営業秘密として、これを公開しずらいというソウル大学校病院の主張に対しても、他の実験室機関が、この事件の各情報を活用できるといって、非臨床実験機関と指定されるとか、非臨床試験実施機関としての被告の地位や格にいかなる否定的影響を及ぼすことになるとは見られないとその理由を反論して、ソウル大学校病院の主張を受け入れなかった。
ソウル大学校病院はその判決文で情報公開が正当な業務遂行に邪魔になったり、動物実験室の存在の有無が知らされて一部患者に根拠ない不安感を作るよりは“この事件の各情報と関連した建設的批判は受け入れて指摘された問題点を改善していくことによって、動物実験関連事業の合法性、妥当性を確保して、進んで動物実験を効率的に遂行できる推進力を得ることもできるだろう”という前向きな意見を出した。 (**印 テーブル比較表 参照 ※翻訳では割愛)
(今後裁判の影響)
この行政訴訟の弁論を引き受けたソ・クッカ弁護士は“動物実験に関する情報を公開しろという初めての判決で、標準作業書が経営上の秘密ではないという点を確認したという点で意味がある”とその意義を説明し、また、“該当情報が公開される場合、過激主義者などの乱立で業務遂行に支障を与えるという病院側の主張は、やはり根拠がないということが確認された”と意見を明らかにした。
この行政訴訟の原告である生命体虐待防止フォーラム代表パク・チャンギル教授も、“今回の行政訴訟の判決で国内上位圏の実験施設のマニュアルが、果たしてまともに制定されて運営されているかを調べることができるようになって幸運であると、この判決によって“我が国の実験制度の改善の端緒が確立された”とした。
また、情報公開に対する判例が少ない実情の中、今回の判決によって、実験施設だけでなく、各種動物収容施設での行政情報公開が原則として確立することになった。 また、動物収容施設ではなくても、国民の権益と知る権利が重要である公共行政機関の情報公開がより一層強化された。
2017年9月8日
報道資料:生命体虐待防止フォーラム 代表 パク・チャンギル