12月11日、平成29年度第2回国際獣疫事務局(OIE)連絡協議会を傍聴してきました。日本政府としてどういう意見をOIEに提出するのか、有識者や業界団体から委員を集めて検討するのが、この連絡協議会です。
今回の連絡協議会で動物福祉に関連して議題になったのは、主に3つです。
「アニマルウェルフェアの勧告に係る序論」の改正案についてと、新規章案「アニマルウェルフェアと豚生産システム」について、そして新規章案「アニマルウェルフェアと採卵鶏生産システム」についてでした。
特に採卵鶏のウェルフェア条項案は今年初めて全貌が明らかになったもので、日本政府がOIEに出す意見について議論するのも初めてです。農水省が全文の翻訳も行っていました。
OIEは世界181か国が加盟する国際機関なので、採卵鶏で注目されるのは、やはりバタリーケージに代表されるような過密劣悪飼育をどうするのかということだと思います。
すでにバタリーケージを禁止している欧州や、さらにその欧州で今も使うことのできるエンリッチケージ(改良型のもの)まで廃止する予定の国などがある一方、日本のようなバタリーケージがほぼすべての国もあり、どうやって同じウェルフェアコードをつくることができるのか注目されるところです。
しかし、ふたを開けてみると、ケージそのものについてはあえて言及しないスタイルがとられていました。過密さについても数値もありません。ただし、厳密に守ろうと思ったらバタリーケージは不可能ではないのか、と思われる要素は多々あります。
今般、動物福祉についてはアウトカム(成果・結果=動物の状態がいいかどうか)で考えるという考え方が普及してきていますが、このコードも動物の健康度を測る指標で判断するという要素が取り入れられています。
つまり、鶏が死亡率も低く健康で・・というところを目指そうと思えば、自ずからどういう飼い方になるかというところは限られるはずです。(本来は)
しかし、「日本としては国内の産業で実現可能な範囲で意見を出す」と既に農水省事務局がこの日言っていたので、日本政府にどこまで期待できるかわかりませんが、ぜひ動物がより良い状態で過ごせるような基準作りの提案を国としてしてほしいと思います。
そこで12月21日、認定NPO法人アニマルライツセンターさんの呼びかけで、PEACE、ヘルプアニマルズ、NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)、ザ・ヒューメイン・リーグ・ジャパンの5団体は、連名で農林水産省消費・安全局動物衛生課国際衛生対策室および食品安全政策課国際基準室に要望書を提出しました。
要望したポイントは、以下の通りです。
- 砂浴び工程の存在は、ウェルフェアのポジティブな状態を示す場合があると記載。
- 特に育雛システムにおいて、豊かな環境と、突くことができるサラサラした素材を提供することで、羽つつきの深刻化を防止する助けになりうると追加。
- 運動及び快適な行動に、羽づくろいを追加。
- 過剰な爪の発育、壊れた爪及びつま先の損傷は、ワイヤーの床によってもまた引き起こされることを明記。
- 敷料が提供されなければならないものとする。
- 砂浴びの基材が提供されなければならないものとする。
- ついばみの区域が提供されるべきであるとする。
- 巣作りの区域は提供されるべきであるとする。
- 全ての鶏が同時に止まれるスペースのある止まり木が提供されなければならないと追記する。頭上に十分な高さがなければ雌鶏が止まり木に直立することができないことも明記する。
- サーカディアンリズムのところに明期だけでなく、1日のうち3分の1の継続的な暗期を追加。
- 有害な羽つつき及び共食いの予防及び管理の部分に、遊動行動を促進する屋外へのアクセスや暗所への保育箱設置を追加。
- デビーキング(嘴を切ること、断嘴)する位置について修正。
- 捕鳥の部分に、鳥の首または翼をもって取り上げてはならないを追加。
- 家畜保管場所やと畜場での保管時間は2時間を超えてはならないとする。
※科学的根拠も含めた全文は、アニマルライツセンターのサイトをご覧ください。