アメリカでウサギ数千匹を死なせている「兎ウイルス性出血病」が日本各地の展示施設でも発生中

アメリカ南西部で、ウサギに致死的な出血病を起こすウイルスが蔓延しているという報道が、今年の5月ころから続いていました。

この病気は、兎ウイルス性出血病(兎出血病※、RHD)といい、今蔓延しているのは、中国で最初に発生した1型ではなく、その後ヨーロッパで見つかった2型です(RHDV2)。アメリカでは、飼育下のカイウサギ(家畜化されたアナウサギ)だけではなく野生のノウサギに感染が広まってしまい、数千匹が死亡したと日本でも報道されています。ペットや食肉を介して広まっているのではないかとも言われています。

今年7月1日、家畜伝染病予防法改正の施行と同時に、法律上の呼称が「兎ウイルス性出血病」から「兎出血病」に変更になりました(こちら)。既存の情報は、まだ「兎ウイルス性出血病」の呼称が使われているので、この記事ではわかりやすさに配慮し、古い呼称のまま残しています。

日本でも各地で発生していた! 発生は主に展示施設

驚いたのは、盛岡市動物公園で続いていたノウサギの死亡の原因が、このウイルス(RHDV2)によるものだったことです。外部からの動物の侵入によるものか等、SNSで連続死が話題になっていましたが、結果が公表され、原因は、まさかの兎ウイルス性出血病でした。

盛岡市動物公園く表文書「ノウサギの死亡原因について」より

6月27日から7月9日にかけて、当園で飼育しているキュウシュウノウサギとトウホクノウサギ8頭の死亡が続き、死亡についてのご報告を随時してきましたが、その間も連続して死亡した原因について調査してきました。その結果、兎出血病というウイルス感染症が原因と判明しました。

しかし、さらに驚いたのは、この病気が、なんと去年の5月から国内で散発的に発生していたことです。

兎ウイルス性出血病は家畜伝染病予防法によって届出伝染病に指定されているので、農林水産省のサイトで自治体別に発生状況が公表されます。

それによると、昨年、愛媛県、茨城県で発生。今年に入り、千葉県で2回出ています。また、まだ届出情報は出ていませんが、今年7月、栃木県で家畜保健衛生所が独自に注意を促す文書を公表していました。

栃木県県南家畜保健衛生所「兎出血病が発生しました」より
兎出血病(兎ウイルス性出血病)が、県北地域で発生しました(届出伝染病)。本病は、2019年に国内(愛媛県、茨城県)でも発生が確認されており、感染拡大が懸念されます。

そして、岩手県の盛岡市動物公園です。

日本では2002年を最後に発生しておらず、アメリカの報道を見て「日本に入ってきたら嫌だな」と思っていましたが、何のことはない、もう日本に入って来ていたのです。

調べられる範囲で詳細を以下に掲載しましたが、主に動物園等の動物展示施設で広まっています。

最初の事例である愛媛県立とべ動物園では、来園者を介してウサギに感染した可能性もあり、また最初の発症例が出た日から8日間はふれあいが継続されていたことを考えると、施設管理者が深刻な感染症だと気づかないまま、ふれあいコーナーがこのウイルス感染源となっている可能性は否定できません。

▼ツイートもしました

ウサギにとって致命的な病気

感染したウサギの致死率は90%とも言われ、治療法はありません。具合が悪くなってから死ぬまでも早く、翌日~翌々日で死亡。急性の出血性疾患なので、所見としては、鼻血が見られたりすることもあるそうです。全身臓器の出血により死亡します。

人間には感染しませんが、ウサギ間での感染力は強く、集団飼育されているウサギがバタバタと死亡します。何も症状を示さず突然死することもあるそうです。

口、鼻などの粘膜から感染し、感染した動物や死体、血液、糞尿等だけでなく、飼料、飲水、敷料を介したり、ハエなどの昆虫によっても媒介され、広まります。

ワクチンは、EUでは承認されていますが、日本やアメリカでは承認されていません。

感染予防には徹底した消毒が必要ですが、新型コロナウイルスとは違い、アルコール系消毒剤は効きません(エンベロープがないウイルスです)。塩素系、ヨウ素系、またはアルデヒド製剤を使用するよう、指導されています。

家畜伝染病予防法による監視伝染病のうち、届出義務しかない伝染病なので、あくまで指導だけで殺処分等に法的根拠はありませんが、発生時には、生き残ったウサギの殺処分を指導される可能性も高いです。OIE(国際獣疫事務局)でも、年1回の報告が必要なリストB疾病として指定されています。

各県での発生状況

各自治体の家畜保健衛生所が獣医師からの届出先であり、施設等への指導等の役割も担います。個人情報ということで、なかなか詳細を教えてもらえませんが、施設が判明したところについては、直接施設にも問い合わせました。

説明用にA4用紙1枚にまとめたものもつくりましたので、活用ください。

聞き取りの概略は以下の通りです。

2019年5月 愛媛県立とべ動物園

ふれあいのカイウサギ10匹とノウサギ1匹、計11匹が死亡した。

最初の発症は5月4日、ふれあいのウサギであった。入院させたが、翌5日に死亡。以後、19日までに続けて同様に10匹が連続死。7日に1匹、8日1匹、9日3匹、10日2匹、11日1匹、14日1匹、19日1匹が死亡。別の部屋で飼育されていたふれあいのウサギ5匹は何も起きていないが、同じ部屋にいた10匹が全て死亡した。

別途入院させていたノウサギも死亡した。ウイルス感染によるものと考えられる。ノウサギは家畜伝染病予防法の届出義務の対象外のため、届出数にはカウントされていない。

ふれあいは12日に中止した。ウェブサイトでの公表はしていない。検査結果がわかったのは28日だった。

ウイルスの侵入経路は不明だが、ゴールデンウィーク中で来園者の多い時期に発生しており、可能性としてはウサギを飼育している来園者を介してということも考えられる。

新しいウサギの導入は2年以上なかった。翌月、茨城県で37匹死亡が発生していることについても尋ねたが、特につながりなどに心当たりはないとのこと。

2019年6月 茨城県南 展示施設(非公開)

県南家畜保健衛生所の管内(土浦市、石岡市、龍ヶ崎市、取手市、牛久市、つくば市、守谷市、稲敷市、つくばみらい市、かすみがうら市、利根町稲敷郡全域)。公園のようなところで展示されているウサギだが、どこだかは教えられないとのこと。

届出では2匹となっているが、この2匹の検査結果が出るまでに多数死んでおり、計39匹死亡している。当初はコクシジウム症を疑っていたが、最終的に2匹を死亡後に検査したところ、兎ウイルス性出血病の診断だった。

飼育していたウサギ49匹中39匹の死亡であり、残りの12匹は場所を移して飼育。半年間検査を継続して行った。ウイルスの侵入経路は不明。

※牛久市内で、ウサギが大量死したためにウサギ飼育とふれあいを廃止した場所があるが、病名の鑑定はつかなかったと述べている。現在は移動動物園に切り替えたとのこと。(死亡数は39匹ではないと述べており、届出されている上記事例とは別と考えられる?)

2020年4月 千葉県 展示施設(非公開)

23匹届出。ウイルス型は不明。

2020年5月 千葉県 展示施設(非公開)

3匹届出。ウイルス型は不明。

千葉県の2カ所は別の施設。それぞれ別々の家畜保健衛生所の管轄区域内である。発生施設へは、消毒の徹底と、同室のウサギの殺処分が指導されている。千葉県も4月には新型コロナウイルスによる非常事態宣言下にあり、発生は閉園中だった可能性がある。ウイルス侵入経路不明。

片一方の事例は、千葉県北部家畜保健衛生所の管内(成田市・佐倉市・四街道市・八街市・印西市・白井市・富里市・印旛郡・香取市・香取郡)であり、2019年の茨城県南に距離的に近い。新しいウサギの導入などはなかったという。発生は閉園中だった様子。診察した開業獣医師から当該施設へ殺処分が指導されているとのことだが、実際に殺処分されたかどうかまでは確認していないとのこと。

もう1カ所は、消去法で中央家畜保健衛生所管内(千葉市・習志野市・市原市・八千代市市川市・船橋市・松戸市・野田市・柏市・流山市・我孫子市・鎌ケ谷市・浦安市)ではないかと考えらえるが、公表されていない。

2020年7月 栃木県 (業種も非公開)

県北家畜保健衛生所管内(大田原市、那須塩原市、那須烏山市、那須町、那珂川町)で発生。届出数は4。

ウサギがばたばたと死んだため、家畜保健衛生所が相談を受けた。施設の詳細は教えられないとのこと。生き残りが何匹いたかは不明だが、全頭殺処分だった。

展示用かどうかわからないのは、この栃木の例のみ。ただし、食用の飼育場は管内にない。診療獣医師への注意喚起文書が公表されている。

2020年6~7月 盛岡市動物公園

ウサギの死亡が続いていることがSNSで公表されており、検査結果が出た段階で、経過等の詳細がPDF文書で公表された。(既出)

6月27日~7月9日にかけてキュウシュウノウサギとトウホクノウサギ計8匹が死亡。5匹について、検査により確定した。

ウイルスの侵入経路は不明。別の場所で飼育されているふれあい用のカイウサギは発生していない。そのため餌を介した感染は疑っていない。飼育員も別であった。

ノウサギ8匹が生き残っているが、展示は中止している。検査・消毒等を続けるとしている。

国内のふれあいのウサギが感染源?

アメリカ南西部での蔓延状況はひどく、生態系への影響も強く懸念されます。

日本はまだそこまでには至っていないかとは思いますが、これだけ各地で出ているとなると、ウサギを飼われている方・扱われる方は、むやみに他所のウサギと触れ合ったりしないほうがよいのではないかと思います。

触れ合った場合、手洗いはもちろん、衣服等もすべて洗濯し、靴底の消毒もしてください。

ウサギを多数飼育しているところではバタバタと死ぬので気がつくはずですが、死んでいても検査もしないような業者は幾らでもいます。検査したとしても、公表を望まない事業者が多いことは間違いありません。ふれあいに行かない・行かせないことが一番です。

届出伝染病ではありますが、食用のウサギ飼育が衰退している今、農水省も特に何か動こうという感じはありません。動物愛護行政のラインでも、まだ問題として扱われている気配はありません。

自治体は、事業者を守ること優先で、皆が知らずにウサギの触れ合いに行っていても警告も発しません。公表をした盛岡市動物公園は良心的です。

つまり、自衛しかありません。

学校でウサギを飼育している児童がいる家庭なども、子どもを触れ合いに連れて行かないでほしい。学校のウサギでも感染が広まる可能性はありますが、バタバタ死んでも検査も消毒もしない学校もあると思います。そういうところがまた感染源になっていきます。

致死率が高いと言っても、生き残るウサギもおり、生き残ったウサギはウイルスのキャリアになります。最低でも42日間より長い期間、ウイルスを排出するそうです。こうしたウサギを触った手で他のウサギを触ったり、ウサギが飼育されているスベースを歩き回って汚染物が靴底に付着したまま他のウサギがいるところを歩き回ることで、広がっていきます。

今のところ、日本では野生のノウサギに発生しているという情報は特になく、発生しているのは主に展示施設。ふれあいを介して広まっていることを強く懸念します。

また、去年の感染例は、海外から帰国/入国した来園者が原因ということも考えられますが、今年は新型コロナによる入国制限もある中、既に4カ所で発生。国内のウサギでウイルスが維持されている可能性があるのではないでしょうか。

そして、去年茨城県南部で発生し、今年、しばらく時間をおいてから発生したのが千葉県。地域的にも、とても近いです。新型コロナウイルスによる休園中の感染である場合は、来園者由来ではないことになりますから、どこから感染したのかということになりますが、どの自治体に聞いても感染経路はわからないと言いますし、実際確定はむずかしいでしょう。

目に見えないウイルスへの対策がとても厄介であることは新型コロナウイルスで痛感しているところですが、ウサギのこの病気にも注意を払っていただければです。

参考まで、海外のソースを貼っておきます。


追記

この件について、奄美新聞が取り上げてくださいました。

兎ウイルス性出血病について、奄美新聞が取り上げてくださいました

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