PEACE活動報告ブログ

ヌードマウスの生産現場は?&日本実験動物学会総会報告

SNSで当日少しご報告をしていましたが、5月に第63回日本実験動物学会総会が川崎で開催されたので参加して来ました。

その際に聞いた話の中から、ヌードマウスの生産現場についてまとめてみました。動物実験は、実験においてだけではなく、そこに至るまでにも多くの動物が犠牲になっています。最も驚いたのは、ヌードの子は水が上手く飲めず、ある工夫をしなければ死んでしまうこと、また出荷前のチェックでは体に傷があるだけでも殺処分になること、でした。

総会のほうは、以下ざっとですが、ご報告です。

●ミニシンポジウム1(動物福祉・倫理委員会企画)「動物実験3Rsのエビデンス」

1日目の朝から動物実験の3Rのセッションがありました。一人目は、米国獣医学会の動物の安楽死に関するガイドライン2013年版について、2007年版とどこが変わったかなどを中心に話した沖縄科学技術大学院大学の鈴木真氏でした。

殺処分方法は、安楽死として「容認される」「条件付きで容認される」「容認されない」の3段階で評価されており、2007年版ではげっ歯類で「容認される」とされていた方法が減り、バルビツール酸系の薬剤およびケタミン等の解離性麻酔薬の静脈内投与の2つだけになったなど、大きな変更があったことが報告されました。げっ歯類にCO2を用いることは条件付き容認ですが、普段飼育しているケージのままで行う等の話があり、その他、動物種ごとに安楽死法について説明がありました。

来年1月12日~13日まで、同大学にて国際動物福祉シンポジウムが開催されるとのこと。

続いて酪農学園大学・山下和人氏から「実験動物の苦痛を軽減するための麻酔・疼痛管理」というテーマで講演がありましたが、どちらかというと伴侶動物医療分野の知見を動物実験に生かすという観点であり、牛の話は出ませんでした。馬の去勢の注射麻酔については、学生が蹴られるなどの危険性があるので、必ずご自分が立ちあっているとのこと。

もう一人は医学統計の基礎について東北大学から宮田敏氏で、最初「エクセルのセルには全角ではなく半角で」レベルの話から始まったのでびっくりしてしまいましたが、ちゃんと統計の話でした。ポジティブな結果もネガティブな結果も正直に書くこと等、おっしゃっていました。

●企業展示

三協ラボサービス株式会社の実験手技訓練用のマウス型シミュレーターが完成していました。名前はMimicky mouse。既に発売中です。経口投与や尾静脈への注射など、実際に生きたマウスを使う前に練習できます。動物のストレスや苦痛を減らすために是非普及してほしいと思いました。しっぽが特にリアルにできています。

Mimicky mouse

Mimicky mouse。左:手はケージ蓋の格子に引っかかるようにできている

●LASセミナー2 「今さら聞けないES細胞、iPS細胞 (II)」

途中からしか聞くことができませんでしたが、入ったとたんに胚盤胞補完法(動物胚に人の細胞を入れて人と動物のキメラをつくる方法で臓器をつくる) の話が始まりました。動物の側の操作の話はいろいろ先行していて華々しくきこえますが、人の多能性幹細胞にキメラ形成能がなければそもそも成功しない話です。そこに触れないのはどうしてなのだろうと感じました。倫理的な話は全然触れられませんでしたが、関係者だけの集まりだとそういうことになるのだと思います。

この世界では、マウスの背中に人の耳も悪い話としては語られていません……

この世界では、マウスの背中に人の耳も悪い話としては語られていません……

●ミニシンポジウム2「ヒト化臓器モデルによる医学/創薬研究の新展開」

一方、横浜市立大学から発表のあったiPS細胞からのヒト臓器作成の話は、臓器の形そのものを再現できているわけではないですが、細胞の塊を導入することによって生体内で再生をうながすもので、動物ではかなり成功しているような印象を与えていました。現時点で動物が犠牲になっているのは残念ですが、何も人と動物のキメラなどつくらなくても、他のアプローチがあるではないかと思ってしまいます。

●ミニシンポジウム5「発生工学研究の新展開~マウス以外の動物の疾患モデル確立に向けて~」

所属が京都大学iPS細胞研究所に変わっていたので気が付かなかったのですが、ナイーブ型多能性幹細胞について話をした高島康弘氏は、イギリスで「リセット細胞」作成実験を行ったご本人でした。リセット細胞は、ヒト多能性幹細胞をより初期胚に近い状態にリセットしたという意味で名づけられた細胞で、人では作成できていなかったナイーブ型ではないかというのが目玉でした。

ナイーブ型がこれまでのプライム型と何が大きく違うかといえば、他の動物種の胚に入れてキメラになるのが特徴とされているわけですが、実際にこのヒト幹細胞をマウス胚に入れて、マウスと人間のキメラ胚の作成を試みたのが、この方々の実験でした。全然機能しなかったので、今後は(日本で)マーモセットで研究するとおっしゃっていたかと思うのですが、試験管内培養とはいえ、マウス胚にヒト幹細胞がとりこまれるところまで実験したのは、やはり恐ろしいことだと思います。

ちなみに、この胚をマウスの子宮に戻す実験はライセンスが出なかった(注:イギリスでは動物実験計画に国の許可が必要)と言っていたので、理由について質問したのですが、その段階まで実験する必要がないから申請をしなかったという意味である訂正されていました。申請をすれば許可は出たと思われるが霊長類では許されないとのことでした。

●LASセミナー3 「実験動物福祉」

上記のシンポジウムと同じ時間帯に実験動物福祉のセミナーがあったのに、満員立ち見でこれ以上会場に入れられないとの理由で聞くことができなかったのは非常に残念でした。それだけ関心が高いことは喜ぶべきことですが、一番広い会場はガラガラだったので、何とかならないものかと思います。(これまでもそういうことが…)

内容は、一つは、ARRIVEガイドラインについてであり、講師は翻訳を行った東大の久和茂氏、もう一つは「げっ歯類/麻酔法の基礎と応用」で講師は、国立国際医療研究センター・岡村匡史氏と島根大学・桐原由美子氏でした。

●市民公開講座「私たちの健康を支える実験動物」

最後の市民公開講座は、司会のジャーナリストを名乗る方が思い入れが強い内容で、「こういうものを一度開きたかった」とおっしゃっていましたが、かなり時代遅れな内容に感じました。私たちがヒポクラテスやベルナールの時代の動物実験を非科学的で残酷と思うのと同じように、未来の人々から見たら、今の動物の利用は野蛮で不必要なものに見えるのは間違いありません。

その司会の方は科学者ではない人でしたが、ブタの臓器にメスを入れさせるという子供向け「科学」講座を開かれたことがあると言っていました。どうしても絶対にやらないと言った子供もいたとのことなので、事前に内容について教えていなかったのか、もしくは親の意向だけで子どもを参加させていたのか等、疑問だらけでした。一体どういうイベントだったのかと思います。どこか命を犠牲にすることを美化しており、関係者ではないにもかかわらず(関係者ではないからこその?)思い込みがあるように感じました。

また、日本の科学者は「慰霊祭をやれば感謝を表していることになるから免罪される」という非科学的な思考から、早く脱しなければいけないと改めて痛感しました。死んだ後に反省しても仕方ない上に、「感謝」で片づけるのは、反省も何もしていないということです。

唯一、東京医科歯科大学実験動物センター金井正美氏が、獣医療の現場と連携し、そのデータを使うことで実験動物の利用を減らせないかということも考えていると話していたのは目新しく興味をひきましたが、全体に質疑応答も一切なく、一方的に話を聞かされるだけであったのは残念です。

大会看板

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