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動物用ワクチンのパブリックコメントに意見を送りました  

締切前に告知できないままになってしまって申し訳ありません、先日、農林水産省で実施されていた2つのパブリックコメントに意見を送りました。いずれも、動物用ワクチンのバッチ安全試験(生産単位ごとに安全性に問題がないか確かめるための試験)に関するものです。

生ワクチンと不活性化ワクチンの両方のガイドライン案がパブコメ対象となっており、VICH(動物用医薬品の承認審査資料の調和に関する国際協力会議、つまりICHの動物用医薬品版のような組織です)で議論のステップが進行中のものになります。関係各国で同じ内容のガイドライン案がパブコメにふされ、今後、その意見を集約してVICHで検討することになります。

内容的には、ワクチンの使用対象種となっている動物を使って(例えば牛用ワクチンなら牛を使って)行う検定試験について、10バッチごとの試験に省略可とするもので、使用される動物の数が大幅に減らすことができます。ワクチンの製造・品質管理の向上によって、過度な検査が不必要になってきたことを反映しています。

しかも、EUでは既にこの部分での動物を用いた検査はそもそも要件から削除されているので、PEACEとしては、日本も今後同様の対応を目指してほしいと意見を送りましたが、農水省としては、今回の削減する内容のガイドラインが確定し、実際にこれらが施行されてから何年間かは、「問題ない」という実績が積み上がるかどうか、経過を見なければと考えているようでした。EUが既に先を行っているので、EUでの知見も参考にしてほしいと思います。(EUと日本で対象疾病が大きく異なることはないそうです)

ちなみに、これらのガイドラインは、国(動物医薬品検査所)が行う国家検定だけではなく、事業者が行う自家検定にも適用されますが、国家検定に関しては動物医薬品検査所の年報で件数を知ることができます。検定結果によって販売に至らなかったような事例はほとんどなく、最新の統計では0件でした(企業による取り下げは1件)。

現在は使用した動物の数まではわからないのですが、現在動物医薬品検査所では、使われた動物の数の年次報告について検討中との情報があり、そのことについても意見を送りました。農水省の動物実験基本指針に基づく対応のようなので、指針ができたときから始まっていれば、10年分のデータがあったのに……と、やはり悔しく思います。

また、不活性化ワクチンのガイドラインでは、例えば日本の生物学的製剤基準のところで、犬および猫を用いる試験の記述がありますが、実際に犬・猫を用いるよう求められているワクチンはほとんどなく、必ずその動物種が使われているわけではありません。ここは誤解がないようにした方がよいのではないかと思いました。

今回はワクチンの対象動物を用いるバッチ安全試験についてですが、VICHではこのガイドライン策定後、次はマウス・モルモットを使った試験(日本の動物用生物学的製剤基準では異常毒性否定試験と毒性限度確認試験)の有効性について議論する予定とのことです。これについても、動物を用いない試験法への代替を期待します。

参考:

パブコメ意見

意見1
私どもは動物保護団体として、動物愛護法に定められている「動物実験の3R」の原則の観点から、動物用生ワクチンの対象動物バッチ安全試験の省略要件が定められることを歓迎します。農林水産省として、今後も動物を用いる試験の代替や、使用動物数の削減へ向けた取り組みに力を入れていただきたく、何卒よろしくお願い申し上げます。

意見2
案の表1の日本の部分で、現在の動物用生物学的製剤基準において必ずしも対象動物の試験が求められているわけではないのに、
犬のワクチンであれば犬の試験が、猫のワクチンであれば猫の試験が必ず求められているように読めてしまうのは、誤解を招くのではないかと思います。特に、伴侶動物の飼育者にとっては、この点は非常に気になる点です。備考欄に、安全試験に対象動物を用いた試験は必ずしも求められていない旨、記載することを提案いたします。

意見3
このガイドラインが実施された後、日本でも新しい条件での実績が積み上がっていくことかと思いますが、ゆくゆくは、EUで既に対象動物を用いたバッチ安全性試験が求められていないのと同様、日本でもそもそも要件から削除するという対応をとるよう、ご検討の程、よろしくお願い申し上げます。

意見4
動物用ワクチンの国家検定に用いられている動物の数について、毎年統計を出すよう、要望いたします。
「農林水産省の所管する研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」では、「研究機関等の長は、研究機関等における動物実験等に関する情報(例えば、機関内規程、動物実験等に関する点検及び評価、当該研究機関等以外の者による検証の結果、実験動物の飼養及び保管の状況等)について、毎年度、インターネットの利用、年報の配布その他適切な方法により公開するものとする。」とされており、国家検定を実施している動物医薬品検査所も、これに従う必要があると考えます。ご対応の程、よろしくお願い申し上げます。


その後の経緯①

その後、およそ2年経った2018年4月27日にパブリックコメントの結果が公表され、ガイドラインの改正も成立しました。これにより、動物用生ワクチン、動物用不活性化ワクチンの両方で、対象動物バッチ安全試験(TABST)の省略が実現することになりました。いずれもEUではすでに求められていない試験でしたが、日本でもようやく省略可能となりました。

その後の経緯②

動物医薬品検査所が年間の動物の使用数を公表するようになりました。

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