神戸学院大学のマウスを使った動物実験で、論文10本にデータ改ざんが発覚。大学からの回答は…

今年6月、神戸学院大が薬学部の30代助教が発表した論文10本でデータの改ざんがあったとする調査結果を公表しました。

報道によれば、「病気の原因を探るために行った動物実験のデータを、論文の趣旨に合うよう改ざんしていた」神戸新聞)、「マウスに薬を投与した際に血中の物質がどう変化するかといった実験などで、論文の主張に沿うようにデータが操作されていた」朝日新聞)、「動物実験で得られた物質の濃度などに関するデータを論文の主張に沿うように加工した」産経新聞)とあり、動物実験で研究不正が行われたことは明らかです。

しかし、大学からの公表文書には、動物実験での不正であることや、マウスを犠牲にしたデータであることなどが、一切書かれていません。

まるで、動物は命ある存在ではなく、ただの研究材料であるかのようです。驚きました。

教授から求められていた研究業績を何とか達成しようとしたという理由が書かれていますが、どんなにそれが本人にとって苦しかろうと、動物を苦しめ、殺して研究成果を得るということの前には、おのれ可愛さの利己的な理由としか感じられません。

実験結果を改ざんし、論文を量産することで得られるのは、この人の保身や地位の維持だけです。改ざんした研究結果により、さらに動物の犠牲がふえる可能性まであるのに、です。

10本も繰り返しているとなると単に悪質なだけでなく、倫理審査についても甘い考えを持っているのではないかという疑念がわきます。これまで、なぜか研究不正と実験計画書の未提出・未承認実験がセットになっている事例が続いているので、本来なら情報公開請求で確認したいのですが、残念ながら神戸学院大学は私立大学のため、そのような手段をとることができません。

質問して本当のことが返ってくるのか疑問もありますが、大学に質問を送りました。

結果は以下の通りですが、研究者を辞めたから本人の保護のために該当論文を公表しないというのは、科学に対して不誠実な態度で、非常に驚きました。研究者を辞めるのは確かに当然のことかと思いますが、だからといって、そのことでなぜ不正論文の公表を免れるのでしょうか。きちんと後始末をして責任を果たすべきです。

結局、大学で量産されている論文は科学に大した貢献もしておらず、本人の身分や肩書のために製造されているに過ぎないものだから、このような感覚がまかり通るのでしょう。

(撤回されていれば問題ないと考える向きもあるかもしれませんが、”Department of Clinical Pharmacy” “Kobe Gakuin University”等で検索しても論文が撤回されている痕跡は今でもありません。)⇒追記:その後、取下げが行われつつあります。

動物実験安全管理規程が守られていないのも発見しましたが、これについては、ウェブサイトに公開されていた規程が古かったという回答でした。それであっても動物実験に関与しない委員を入れる必要があることが守られていないと指摘しましたが、それについては、現在は動物実験に関与していない教員だという回答が再質問に対してありました。動物実験を止めた研究者が存在すること自体はとても喜ばしいと思いましたが、はたして本当に期待されている委員としての役割を果たしているのかどうかは、全ての委員について言えることですが、外部からは全く判断できません。

そして、この大学でも、獣医師のいない状態で動物実験が行われています。

質問と回答

1回目

(1)今回の不正事件について、当該研究者は、全ての研究で、動物実験を実施する前に動物実験計画書を動物実験委員会に提出し、承認を得てから動物実験を実施していたでしょうか? また結果報告も動物実験委員会に上げられていたでしょうか?
これまで、動物実験に係る研究不正では、計画承認が行われないまま動物実験が行われていた事例が不思議と散見されるため、質問させていただきます。

⇒動物実験を行う場合、動物実験責任者は「動物実験計画書」を学長に提出し動物実験委員会で審議を行い、その結果をもとに学長が承認しなければ、実験を行うことができません。該当研究者においても動物実験計画書の提出があり、動物実験委員会の審議を経て学長の承認を得て動物実験を行っています。
また、動物実験責任者は動物実験計画を実施した後、所定の様式により、使用動物数、計画の変更の有無、成果等について動物実験委員会を通じて、必ず学長に対して報告をしています。

(2)論文は訂正ではなく、全て撤回となりますか。著者ら自身が各掲載誌に連絡をするのでしょうか。

⇒10編の論文すべてを取下げ勧告し、論文著者、責任著者の2名から取下げに応じる意思の回答書を受けています。論文著者は依願退職しており、研究活動に一切関わっておりませんので、今後、責任著者が該当論文取下げの手続きを行ってまいります。

(3)10報撤回であれば、かなり悪質な不正であり、各掲載誌が撤回を公表する前に、どの論文が不正であるか速やかに公表すべきかと思います。今もどこかで、不正論文を根拠に動物実験が行われているかもしれません。どの論文が不正であるのか隠すのは迷惑行為であるだけでなく、動物を無駄に犠牲にするという意味で倫理に悖る行為です。他大学の不正調査でも該当論文は公表されていますが、なぜ貴大学では該当論文を公表されないのでしょうか。

⇒大学としては、規則に基づき調査結果の公表内容のうち、氏名及び論文名称をを非公表といたしました。その理由といたしましては、前述のA氏は、既に大学を退職しており、個人の特定につながる氏名及び論文名については、二次被害を防ぐという観点からも公表を見合せています。
 A氏は既に、依願退職しており、研究活動に一切かかわらないとし、新たな人生をはじめており、今後の誹謗中傷の的にならないよう今の生活に配慮していることと、B教授は、不正行為に関与しておらず、学内での処分を検討しているため非公表としています。
 論文名を公表することは個人を特定できるため、該当する論文数のみを公表しています。

(4)当該研究者らに対する処分結果は公表されますか。

⇒本学就業規則に基づく制裁を行う場合は公表(原則として学内公示)いたします。

(5)「神戸学院大学動物実験安全管理規程」において、動物実験委員会の委員には、「人文学部、総合リハビリテーション学部から各1名」が含まれなければならない決まりとなっていますが、実際の委員リストには、人文学部からの1名が含まれていません。
これは規程違反ではないでしょうか。法学部等、人文科学系の学部があるにもかかわらず、人文学部から委員が充てられていないのはなぜですか。
動物実験委員会は、動物の福祉について審査することが主な目的で設置が求められているものであり、例えばアメリカでは、地域の動物福祉に関心のある一般人を委員に入れなければいけない法律となっているほどです。学内に適任者がいないのであれば、外部からでも、動物実験について利害関係のない(自分では行っていない)立場で動物の苦痛について考えることのできる委員を選任するべきではないでしょうか。

⇒ホームページ(研究支援→生命倫理・安全に関する取組み→神戸学院大学動物実験委員会)の中に掲載されております安全管理規程が、2015年制定時のものが掲載されたままになっておりました。ホームページは現時点の規程の内容に変更しております。
動物実験安全管理規程では、委員の選出に関しては、動物実験等の原則である3Rすなわち、代替法の利用(Replacement)、使用数の削減(Reduction)、苦痛の軽減(Refinement)に基づき、科学的観点、動物愛護の観点及び、環境保全の観点並びに、動物実験等を行う教職員・学生等の安全確保の観点から実施学部を対象としています。
現在、人文学部は実験を実施していないため、2018年度の安全管理規程の改正により同規程から除かれております。 
「学内動物実験委員会の構成2019」の内容が現時点の委員会構成となります。なお、2019年も同規程の一部改正を予定しており、改正承認後にHPの更新を予定しております。

(6)国際的には、実験動物に対する苦痛を伴う処置に対して獣医学的ケアが必要とされており、「実験動物に関して優れた識見を有する者」は単に動物実験を行っている者ではなく、本来、獣医師である必要があります。年間61件も承認されているのであれば、当然必要な措置かと思いますが貴大学では動物実験管理者として獣医師を配置していますか。また、その者が動物実験委員会の委員となっていますか。
マイクロミニピッグの使用も公表されていますが、獣医学的ケアについてどのように担保されているのか疑問に思いました。

動物実験に関する研究不正が長年放置されてきたことも考え併せ、貴大学が動物実験を行っていること自体に疑問を感じます。
3Rを絵空事の言い訳で済ませるのではなく、真剣に対策していただきたいです。
また、動物ではない他の代替手法への移行にも努めていただきたくよろしくお願いいたします。

⇒2018年に改正した動物実験安全管理規程には、実験動物管理者を「実験動物に関する知識及び経験を有し、管理者を補佐して実験動物の管理を担当する者をいう。」と定義しており、ご質問のあります獣医師ではありませんが、各キャンパスそれぞれに専任教員を充てており、動物実験委員会の委員となっております。

再質問

質問(1)では、該当論文に関係する動物実験全てについて、当該研究者が動物実験計画書を提出していたかどうかについてお聞きしました。
ご回答は一般論としてルールをご回答されているとしか読めません。再度確認ですが、該当の動物実験全てについて実験計画書は出ていたのでしょうか。いなかったのでしょうか。

(補足:語気強く聞いてしまっていますが、全てかどうかがわかりづらく感じたので再質問しました)

⇒ 2015年に神戸学院大学動物実験安全管理規程を制定する以前の2006年に制定しました神戸学院大学動物実験指針におきましても現規程と同様に動物実験計画申請の提出に基づき、動物実験委員会の承認を得なければ、動物実験等の実施はできないと規定されています。
 従いまして本件につきましては、7月25日付で回答しておりますが、該当の研究者がこれまで行った動物実験においてもすべて動物実験計画書の提出があり、動物実験委員会の審議を経て学長の承認を得て動物実験を行っています。

質問(5)で、人文学部での動物実験がなくなったためとのことで、それ自体は大変歓迎いたします。しかし、現在の規程と委員の構成を照らし合わせたところ、文部科学省の動物実験基本指針で定められている「その他学識経験を有する者」に該当する委員が総合リハビリテーション学部の疼痛学を専門とする者となっていることがやはりおかしいと感じます。疼痛学が専門であれば、動物実験等に関して優れた識見を有する者か、実験動物に関して優れた識見を有する者かのいずれかにしか該当し得ないのではないでしょうか。文部科学省の動物実験基本指針が意図していることは、動物実験の実施について利害関係がない者を入れ、専門外からの視点を交えて倫理審査を行うべきというところにあるはずです。動物実験に関与する者だけで行う倫理審査に意味はありません。
人文学部も存在するのに、どうして倫理学など、動物実験に関与しない有識者を委員に入れないのでしょうか。専門外の視点がない審査は不適切です。国際的に用いられているIALRのThe Guideでも、自然科学以外の専門の者を1名、一般市民を1名、それぞれ入れることとなっています。
貴大学の動物実験委員会の審査では、非常に不適切な運営がなされており、このことに対して抗議いたします。

⇒ 本学の動物実験委員会においては、文部科学省が平成18年6月に策定した『研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針』の「第3の3 動物実験委員会の構成(1)動物実験等に関して優れた識見を有する者、(2)実験動物に関して優れた識見を有する者、(3)その他学識経験を有する者」に適合した委員により構成されています。
(3)「その他学識経験を有する者」については、(1)及び(2)に該当する者を除き、総合リハビリテーション学部の委員で充当しております。
同委員については、現在、動物実験には直接関わっておらず、これまで動物実験及びその指導経験も豊富で、多くの研究業績も有する学識経験者であり、動物実験の実施に利害関係がない(動物実験に関与しない)者といえます。また、前任校から現在まで、人を対象とする医学系研究倫理審査委員会の委員を長年務めており、倫理面においても十分な識見を有しています。よって、同委員は、(3)「その他学識経験者を有する者」に相応すると判断しています。

 この度、ご指摘いただいた点を含め、動物実験ならびに実験・研究倫理について、本学ではその重要性を深く認識しており、『神戸学院大学動物実験安全管理規程』の前文にあります関係法令、規程・基準、指針に照らしてこれを遵守し、また、他大学の状況も鑑み、検討を深めているところです。

※PEACE注:機種依存文字である丸数字を「(半角数字)」に改めました。


参考

研究不正に関する文部科学省の方針は、国のガイドラインはあくまで参考であり、調査・公表等の対応は各大学で規程をつくって、それに則ってするようにという、動物実験と全く同じ自主管理の体制になっています。

神戸学院大が策定している「神戸学院大学における研究活動上の不正行為の防止等に関する規程」では、公表については以下の通りとなっているので、本来は氏名も公表対象のはずなのですが、この事例では「一部非公表とすることができる」という例外扱いにして非公表としているのだと思います。

(調査結果の公表)
第18条 最高責任者は、特定不正行為が行われたことが確定したときは、不正行為に関与した者の氏名・所属、不正行為の内容、不正に対して行つた措置の内容、調査を行つた者の氏名・所属及び調査の方法・手順を公表するものとする。ただし、最高責任者が非公表とすることにつき合理的な理由があると認める場合は、一部非公表とすることができる。

大学が恣意的な運用をできる自主管理

これでは科学者や研究機関が信頼を勝ち得ることはないでしょう。

追記:文部科学省による公表内容

今年は10月下旬になっても文部科学省が全く不正事案の公表を行っておらず怠慢ではないかと思いましたが、このブログ記事をアップした後、11月も終わるころになってやっと、今年の事例の公表が開始されました。この神戸学院大学の不正についても文部科学省のサイトで公表がなされました。内容は以下の通りです。

論文の撤回が未だされていないことについて、再度神戸学院大学に確認しましたが、取下げの手続き中とのこと。大学が不正論文がどれかを公表していれば気持ち焦りませんが、今でも誰でも参照に実験ができる状態と考えると本当に腹立たしいです。

処分については、回答の公表を控えてくれと書かれており、なぜそんなに不正者をかばうのか本当に疑問です。研究者に責任を取らせるつもりがないならば、研究機関を名乗るのは止め、学部での教育だけしていればいいのではないでしょうか。機関に対応を任せっぱなしの文科省の今のやり方も不信感を煽るだけです。

神戸学院大学元教員による研究活動上の不正行為の認定について

【基本情報】

番号

2019-03

不正行為の種別

改ざん

不正事案名

神戸学院大学元教員による研究活動上の不正行為の認定について

不正事案の研究分野

薬学

調査委員会を設置した機関

神戸学院大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

神戸学院大学 薬学部 元助教

神戸学院大学 薬学部 教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

神戸学院大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

平成21年~平成29年

告発受理日

平成30年7月5日

本調査の期間

平成30年9月7日~平成31年3月31日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

令和元年6月5日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費補助金、学術研究助成基金助成金

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

    1.告発内容及び調査結果の概要
     平成30年1月末に学生から、研究室内で実験データ改ざんの疑いに関する相談があった。その後、同年5月24日に学生から薬学部長に対し、告発の意思が明示されない同相談が寄せられたことを契機として、本事案が発覚した。学部内で調査を行い、その結果を同年7月5日に、薬学部長が学長(最高責任者)に報告した。これを受けて、学内規程に基づき「研究活動上の不正行為に係る調査委員会」を同年9月7日に設置し、以下の通り調査を実施した。調査の結果、平成31年2月21日に特定不正行為の認定を行った。

    2.神戸学院大学における本調査の体制、調査方法、調査結果等について
    (1)調査委員会の構成
      5名(内部委員 2名 外部委員 3名)

    (2)調査の方法等

     1)調査対象

      神戸学院大学 薬学部 元助教 1名

      神戸学院大学 薬学部 教授 1名

      その他関係者3名

     2)調査方法・手順

      調査は、調査対象論文24編の図表に関して、生データと論文の図表作成に用いられた論文データとを照合等により行った。

      ・書面調査(該当論文の内容、実験ノート、生データの照合)

      ・関係者との面談(聞き取り調査)

      ・生データによる再分析

     3)本調査委員会の開催内容等

      ・調査委員会の開催回数 8回   

      ・被告発者への聞き取り調査 3回

      ・関係者への聞き取り調査 5回
      ・関係者への書面調査 1回

    (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論

     (結論)

     1)認定した特定不正行為の種別

       論文に関与する実験データの改ざん

     2)特定不正行為に関する認定を行った研究者

      ア)「不正行為に関与した者」として認定した研究者

        神戸学院大学 薬学部 元助教(平成30年7月31日付 依願退職)

      イ)「不正行為に関与していないものの、特定不正行為があったと認定した研究に関わる論文等の責任著者」として認定した研究者

        神戸学院大学 薬学部 教授

       ※その他の共著者については、「不正行為に関与していないこと及び不正行為があった研究に係る論文等の責任を負う者でない者」として認定した。

     3)特定不正行為の手法及び内容

       元助教が、生データから論文データに加工する段階で生データの数値を操作して、論文の主張にとって有利な方向になるよう改ざんを行っていた。

     4)特定不正行為が行われた研究課題(論文)
       平成21年から平成29年の間に、元助教が発表した論文10編

     (認定理由)

      元助教が関わる論文を調査し、生データと論文データとを照合した結果、多数の相違があり、有意性の高いものに生データを改ざんして作り直していることを確認した。実験データの精査結果、元助教の自認、及び関係者からの聞き取り調査等から総合的に判断し、元助教を「特定不正行為を行った者」と認定した。
      また、教授は、いずれの実験に対しても、元助教が提示したデータ解析済みの図・表だけのチェックにとどまり、生データを確認することもなかった。直接不正行為に関与はしていないが、改ざんが認定されたすべての論文の責任著者でありながら、責任著者としての注意義務を怠ったことから、教授を「不正行為に関与していないものの、特定不正行為があったと認定した研究に関わる論文等の責任著者」と認定した。

    3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
      不正行為を認定した論文について以下の支出があった。

     ・科学研究費補助金及び学術研究助成基金助成金 計349,750円(論文別刷り、英文校正、投稿料)

    ◆研究機関が行った措置

    1.論文の取下げ
     被告発者 元助教と論文責任著者である教授に対し、改ざんが認定された論文10編について取下げの勧告を行った。

    2.被告発者及び論文責任著者における神戸学院大学の対応

     大学で検討中である。

    ◆発生要因及び再発防止策

    1.発生要因
    (1)元助教の研究公正に対する意識の欠如
      平成21年から平成29年までに発表された論文において改ざんが見られ、常態化していたことが読み取れる。元助教は、研究者、教育者として、当然守るべきルールや姿勢についての認識が甘く、コンプライアンス意識が低かったことが大きな要因である。一方、元助教が、教授から求められていた研究業績を何とか達成しようと、精神的にも肉体的にも追いつめられてきたこともこれらの行為を常態化させていた要因の一つである。

    (2)研究データのチェック体制の欠如

      研究室内の研究者で共同研究が行われていたにもかかわらず、研究室内又は共同研究者間におけるチェック体制が機能していなかった。
      具体的には、1)当該研究室では、定期的にラボミーティングが行われ、実験計画、実験結果について検証・議論が行われていたが、実験結果についての議論は、結果から作成された図表に基づいてのみ行われ、生データや実験ノートの確認は行われていなかった。2)論文作成に際しても、論文内容について、実験ノートや生データを基に最終確認が行われていなかった。これらのことが、元助教によるデータの改ざん行為を可能にするとともに、常態化することを助長したと考えられる。

    (3)研究室の運営環境及び若手研究者育成への責任

      研究室全体や研究室内の個人単位で、論文の本数や競争的資金の獲得も含めて高い業績達成目標があり、目標達成のために数多くの実験、学会発表、論文の作成・投稿等が求められていた。
      また、元助教は、長年、教授の研究室にて指導を受けてきたが、元助教は、研究者としての基本的な姿勢や倫理観を十分に身に着けていたとは言えない。その点において、教授は、若手研究者に対する研究倫理面の指導が行き届いていなかったと言える。

    2.再発防止策
    (1)研究者における研究公正に対する意識の向上

      研究倫理教育の実施による研究者倫理の向上を図るため、既に大学において実施しているeラーニング等研究倫理教育コンテンツの受講案内、講演会(研修)やFD活動等を通じて研究者行動規範教育をより一層強化する。
      学部等と所管部署である研究支援センターが協働して、研究倫理教育等不正行為防止のための研修等の受講状況の把握・検証及び未受講者に対する改善勧告等を徹底して行う。不正行為を防止し公正研究を推進するための会議として設置されている「公正研究委員会」の下で、このような体制作りを全学的に実行していく。

    (2)研究データのチェック体制
      研究データ(生データ、実験・観察ノート、実験試料、試薬等の研究成果の事後検証を可能とするものをいう。)の保存期間は、研究成果の発表後、5年間を原則としている。研究を進める過程で行う研究室内でのカンファレンスにおいて、研究内容の方向性と基礎データの取り方に誤りがないか、確認するプロセスを研究室内に確立する必要がある。上記(1)の研究倫理教育を通して、自らの研究活動に真摯かつ誠実に取り組む重要性を研究室内と研究者に再認識させる。これら研究活動の立案・計画・申請・実施・研究データの保存から公表(発表)等のそれぞれの過程において、論文の責任著者及び共著者の役割・責任範囲を明確化することでチェック体制を強化する。

    (3)研究室の運営環境及び若手研究者育成について
      若手研究者育成のためには、研究活動の場においては、職階の上下に関わらず自由に意見を言える雰囲気や環境が保たれなければならない。若手研究者が、円滑に研究活動を遂行できるように支援や助言ができる体制づくりを行う。研究者、研究支援人材等の広く研究活動に関わる者の自律性を高める取り組みは、学生や若手研究者を指導する立場の研究者が自ら積極的に取り組むべきである。研究機関全体として、研究倫理教育を徹底し研究者としての規範意識を向上していくために、指導的立場の研究者を対象に、一定期間ごとに研究倫理教育を推進する研修を行う。また、指導的立場の研究者を対象としたハラスメント教育を徹底する。

    (4)その他(不正行為が発生した際の行動規範について)

      今回の事案では、研究不正の告発等から大学が把握するまでに数か月を要した。大学のこれまでの研究不正への対応としては、大学内における「神戸学院大学における研究活動上の不正行為の防止等に関する規程」等を教職員に周知するとともに、危機管理マニュアルに通報窓口を定めるなどしていたが、今回は十分に周知されていなかった。そのことを踏まえ、不正行為が発生した際の行動規範をリーフレット等にまとめ、一層の周知を徹底する。

    ◆配分機関が行った措置

     科学研究費助成事業(科学研究費補助金・学術研究助成基金助成金)について、改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出があったため、返還を求めるものであり、また、科学研究費助成事業(科学研究費補助金・学術研究助成基金助成金)の成果として執筆されたものであることから、当該資金への申請及び参加資格の制限の対象となる。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、経費の返還を求めるとともに、資格制限の措置を講じる予定である。

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