人と動物のキメラ胚(動物性集合胚)、総合的検討の段階へ

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4月12日、特定胚等研究専門委員会(第98回)が開催され、既に資料も公開されています。人と動物のキメラを胚の段階からつくる動物性集合胚(動物の胚にヒトの細胞を入れる)について、社会的・倫理的検討が終わり、それを受けた総合的な検討の段階に入りました。

科学的な観点については、以前動物性集合胚の取扱いに関する作業部会で一通り検討がされましたが、少し時間も経っているので、これまでの間に研究の世界で起きたことなどを新たに交えて検討をすることになります。

初回は、阿久津委員(国立成育医療研究センター研究所)から「『ヒト及び動物』の要素が交じり合うイメージについて ―動物性集合胚研究の結果からみる表現型の実際-」との発表でした。

資料も配布されなかったのですが、要するに海外で現時点で成功(?)したとされている研究でも人の細胞が混じっている率が低すぎ、人の幹細胞を動物の胚に入れたとしてもホストとなる動物の形態から大きく外れることはないですよと、懸念を払しょくしたいのだろうという内容の話でした。

■今後の検討課題

「今後の検討課題(たたき台) 」 の中に、「動物福祉の観点から、胎仔及び母体等の経時的観察の必要性について」と書かれています。

しかし、続く「今後の課題」の部分には現行の動物実験に関する法令・基準に従えばよいという一文しか挙げられておらず、内容としてはかなり不安です。

社会的・倫理的検討のとりまとめでは、以下のように動物福祉について思いのほか記述されているのですが…

■社会的・倫理的検討のとりまとめ最終版に修正反映

今回、参考資料4として、社会的・倫理的検討のとりまとめ文書の最終版が配布されました。

アメリカNIHがモラトリアムとして資金提供を中断している状況について記述がないことを当会から指摘しましたが、その点については、表の部分で修正がされていました。

動物福祉については、下記のような記述がなされています。(抜粋)

3.その他

○ 動物福祉の観点では、動物胚に異種の細胞を移入するため、動物性集合胚の胎内移植に当たっては、通常の胚発生・個体発生と比較して、以下のような懸念が考えられる。

  • 動物性集合胚の発生に伴い、胎仔自体あるいは特定の臓器が物理的に増大して、胎仔及び母胎が苦痛やストレスを生じる可能性は低いものの、否定はできない。
  • 胎仔あるいは母体に何らかの免疫学的な異常や、生理学的な異常が起きる可能性を否定できない。
    このため、動物性集合胚の胎内移植後、着床までの胚、妊娠期間中の胎仔及び母体の状態を経時的に観察しながら、研究を進める必要がある。

【社会的不利益・動物福祉】

○ 動物性集合胚を移植される動物のストレスは、通常の胚発生・個体発生に比較して何らかの違いを生じる可能性がある。物理的に胎仔のサイズが増大することは、通常の胚盤胞補完法では起こらない可能性が高いが、起こる可能性は全くないことはない。また、生物学的な問題として、異種の動物であるので、何らかの免疫学的な異常や、生理学的な異常が起きる可能性がゼロではない可能性がある。これらの点を予備的な試験によって、仮親のストレスとして、どういったストレスがあるのかということを検討しながら進めることが望ましい。その際、人道的エンドポイントの設定が必要となる可能性がある。

○ マウスを用いた通常の胚盤胞補完法ではヒト-マウスキメラ個体は発生しない可能性が高く、キメラ動物がヒトの配偶子を作るとか、あるいはキメラ動物がヒトの知能とか精神を持つ可能性はきわめて低いが、科学的知見を積み重ねることが妥当ではないか。

○ 実験動物の福祉については海外では大きな議論のあるところであり、我が国ではあまり議論が行われず、問題化していないことを踏まえれば、今回、動物性集合胚研究について動物福祉の観点から検討したことは重要である。

3.その他

【国内】
○ 実験動物の福祉については海外では大きな議論のあるところであり、我が国ではあまり議論が行われず、問題化していないことを踏まえれば、今回、動物性集合胚研究について動物福祉の観点から検討したことは重要である(再掲)。

【海外】
○ 動物性集合胚という概念は海外にはなく、ヒト-動物キメラという少し広い概念で捉えており、動物性集合胚に区切って規制している国は日本以外にはない。国際的には、ヒトの細胞や遺伝子を動物個体へ移植する研究の規制の枠組みは、ヒトを対象とする研究の規制と、動物実験の規制の二本立てが標準であるが、近年、米英等において、多能性幹細胞の動物への移植についても従来の対応で良いか検討が行われた(表参照)。

○ 英国医学アカデミー「ヒトの物質を含有する動物」プロジェクトの一環として英国で実施した意識調査では、大多数が、ヒトの健康改善・疾病治療を目的とした研究であることを条件に、ヒトと動物の遺伝物質の混合を伴う研究を支持。但し、“人間のような”外見・脳・生殖機能を持つ動物の作成については、相対的に懸念が強く、これが英国の政策に反映された。

[意識調査結果と考察]
・外見:ヒトの内蔵を持つ動物については許容している人でも、ヒトのような外形(ヒトの毛髪、皮膚、手足等)を有し、又は、振る舞いをする動物に対しては強い抵抗感があった。これは、通常、外見で種を区別しているためと考えられる。また、ヒトのような外形を有する動物は、動物の生来的な行動に身体が適合しないなど動物福祉の観点からも問題がある。

・脳:ヒトのような意識、人格が生じることに抵抗感があった。意識調査を受けて脳にヒト由来細胞をもつ動物の認知能力や行動について検討した結果、げっ歯類は脳のサイズ、神経相互接続、感覚入力、運動出力、成体までの発達経路などがヒトと大きく異なるため、ヒトの特徴を持つげっ歯類は生まれない。一方、大型動物(ブタ、ヒツジ等)、殊に感覚入力/運動出力能力がヒトに近い霊長類については議論の余地がある。ヒトの細胞を霊長類に移植することで、英国では実験使用が禁止されている大型類人猿の能力を獲得する可能性もある。

・生殖機能:ヒト由来生殖細胞をもつ動物に対する受容性が最も低かった。文化的重要性(性、生殖、出産等)、影響の大きさ、ヒト生殖細胞を用いた研究の結果は動物のみならず生まれる子供にも生じるなどが受容性の低い理由として考えられるとしている。

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