日本人研究者は井の中の蛙? 文科省は資料を訂正せず

動物性集合胚(人と動物のキメラ作成)について規制緩和を検討している文科省の特定胚等研究専門委員会の第94回(2016年10月5日)で東京大学の久和茂教授が発表した資料の誤りについて訂正を求めましたが、文科省から連絡があり結局1か所修正があったのみでした。(要望内容はこちら

動物愛護法に「5つの自由」が入っていると書かれていたところ(実際には5つのうち3つしか入っていない)に「(一部)」が加わっただけです。

修正されなかった点のうち、特に日本の欄にのみ「利用分野で法規制:薬機法、省令GLP、化審法、カルタヘナ法、感染症法、家伝法など(環境省、厚労省、農水省、文科省、経産省)」などと長々と書かれていていて、まるで日本のほうが動物の取扱いに関して規制があるかのように見せかけていることは非常に問題であり、日本の研究者の「ずるさ」を感じます。

このような詭弁は久和氏だけでなく日本の動物実験関係者にしばしばみられることですが、これらの法令に類似の規制は当然EUにもアメリカにもあり、むしろ逆に日本では取り立てて実験動物の福祉に関する言及がないにもかかわらず、海外では各分野での規制に動物福祉の採用がより一層進んできているという状況があります。動物実験自体をカバーする規制があるにもかかわらず、です。

とりいそぎなので一部ではありますが、比較表をつくってみました。表に載せるべきは、日本ではなくEUやアメリカの法令でしょう。

 EUアメリカ日本
GLPGLP指令
(Directive 2004/9/EC、2004/10/EC)

動物保護(animal protection)について言及あり。実験動物の保護に関するEU指令及び各国法に基づき、動物を用いる実験の数の削減が求められている。

医薬品GLP
(21 CFR Part 58)

動物福祉(animal welfare)について言及あり。さらに改正により動物福祉が強化される予定。(こちらを参照

GLP省令
 

動物の管理についてしか述べていない。

化学物質REACH

動物を用いる試験数の削減、代替手法の促進、実験動物の保護に関するEU指令の遵守等が求められている。脊椎動物の試験の代替、減少及び軽減(3R)が明記されており、試験の重複を避けるための制度にかなりの条文が割かれている。

TSCA

改正により動物実験の削減、代替の推進が盛り込まれた。(こちらを参照

化審法

試験に用いられる動物について言及した条文はない。

動物衛生動物衛生法
(Regulation 2016/429)

そもそもEUの動物衛生戦略において動物福祉の促進は目標の一つ。動物衛生法では、動物福祉との相互関係等について知識を有することが責務として定められている。

動物健康保護法
(Animal Health Protection Act:AHPA)

家畜の健康保護の維持が目的。

家畜伝染病予防法

畜産の振興が目的。(動物福祉は担わない運用)

※ほかにも、例えば日本のカルタヘナ法は動物福祉とは無関係。一方、EUは実験動物の保護に関する指令に、遺伝子組み換え動物の福祉について言及がある。

参考文献:
樋口修「EUの動物衛生政策―動物衛生法(規則2016/429)を中心として―

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