第17・18回食品安全委員会WG~動物実験ではないコンピューター予測手法などについて審議

動物実験代替法など、食品安全に関わる新しい毒性予測評価の方法について検討を行っている食品安全委員会のワーキンググループ(評価技術企画ワーキンググループ)ですが、6月25日に2回にわたり開催されました。

ともに傍聴不可だったので傍聴はできませんでしたが、資料等のページが公開されました。

第17回食品安全委員会評価技術企画ワーキンググループ

第17回は令和2年度食品安全委員会運営計画についてと、in silico評価方法に関連する研究事業の成果報告・意見交換が主な議題でした。

食品安全委員会から研究予算が出る「食品健康影響評価技術研究」で採択されていた「食品に非意図的に混入する微量化学物質のリスク評価へのin silico評価手法の適用に関する研究」(2018年度~2019年度)の研究結果について、研究班から報告を受けた後、内容について意見交換を行ったとのことです。

この研究は、食品の容器・包装などから食品に移る微量な化学物質の安全性(毒性)予測のための研究であり、現在どこかで動物実験が行われているものの代替というよりは、微量であるために動物実験に適さないと考えられ、行われて来なかった分野について、新しくコンピューター予測を導入できないかという観点で行われているものだそうです。

まだ、どの規制に盛り込まれるかなど、具体的なことが決まっているわけではないそうです。

第18回食品安全委員会評価技術企画ワーキンググループ

第17回は非公開なので議事録も出ませんが、第18回は、完全な非公開ではなく、新型コロナウイルス対応のため傍聴不可だっただけですので、議事録は公開されるそうです。

(Q)SARを活用した変異原性の評価についてが主な議題となっていて、素案について話し合ったようですが、継続審議と報告されています。今後は、この素案について引き続き検討していくそうです。

食品安全委員会は、動物実験の代替・改善等を方向性として示している

食品安全委員会では、以下の文書で、動物実験におけるアニマルウェルフェアへの配慮や代替法の開発等について、方向性を定めています。該当部分を抜粋します。

食品の安全性の確保のための研究・調査の推進の方向性について
(平成22年12月16日 食品安全委員会決定)
(最終改正:令和元年8月27日)
 より抜粋(3)新たなリスク評価方法等の活用
化学物質のリスク評価において欧米や国際機関で検討又は利用されている「毒性学的懸念の閾値(Threshold of Toxicological Concern TTC)」(注を用いた方法を始めとする新たなリスク評価方法を導入し活用することが必要である。また、情報技術の飛躍的な向上を踏まえ、リスク評価に必要な科学的データを効率的に収集・統合し、有効に利活用していくことが必要である。加えて、リスク・ベネフィット解析の観点を取り入れたリスク評価方法の検討のための研究への取組も重要である。動物実験においては、アニマルウェルフェア(注3)にも配慮し、動物実験の基準理念である「3Rの原則」(注4)の観点から実験方法を改善することやin vitro、in silico評価法等の動物実験の代替法の開発、導入が課題である。

そのほか、リスク評価結果を適切に国民等に示し、その理解及び定着につなげていくという観点も重要である。
このため、以下に掲げる研究・調査を実施することにより、リスク評価が国際的に調和し、迅速・的確に行われることを目指す。
①国内外の動向を踏まえた、新たなリスク評価方法の導入のための研究・調査
②既存のデータ等の活用によるリスク評価方法の確立のための研究・調査
③「3Rの原則」の観点からの新たなリスク評価方法の導入や実験方法の改善のための研究・調査
④リスク評価結果に関する国民等の理解と定着に資するための研究・調査

(注3)アニマルウェルフェア
国際的に知られた動物の保護のための「5つの自由」(①飢餓と渇き からの自由、②苦痛、傷害又は疾病からの自由、③恐怖及び苦悩からの自由、④物理的、熱の不快さからの自由、⑤正常な行動ができる自由)を中心にした概念 。

(注4)3Rの原則
動物実験に関する理念として、Replacement(科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用すること。)、 Reduction(科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限りその利用に供される動物の数を少なくすること。)、 Refinement(科学上の利用に必要な限度において、できる限り動物に苦痛を与えない方法によってしなければならないこと。)から成る。

食品に非意図的に混入する微量化学物質のリスク評価へのin silico評価手法の適用に関する研究

(2018年度~2019年度)

研究概要
化学物質のリスク評価は、動物試験等による安全性評価結果を基本とするが、不純物等のように食品に非意図的に含まれる化学物質には、十分な毒性試験情報が得られていない。物質やその量自体が微量であり試験実施が困難な物質も多い。近年、医薬品不純物の遺伝毒性評価を始めとして、化学物質の化学構造等の情報をもとにしたin silico評価手法のリスク評価への適用や適用に向けた検討が進められている。本研究では、欧米のリスク評価機関等において有用性が示唆されているin silico評価手法や評価支援ツ ールについて、食品安全委員会におけるリスク評価における有用性や適用のあり方について検討を行うことを目的とする。

研究課題番号主任研究者名(所属機関名)
小野 敦(岡山大学)

※2020年度からは、「In silco手法の導入による食品関連化学物質の肝毒性予測の精緻化に関する事例研究」という課題が採択されています。(主任研究者は山田隆志(国立医薬品食品衛生研究所))

<h3>追記</h3>

2020年12月、上記の研究の報告書が公開されました。

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