ロシアの動物虐待に関する法改正について国会図書館がまとめた記事が2つアップされていますので、そこから内容をご紹介します。(追記あり)
ロシア連邦刑法典改正
ロシアでは、動物虐待の罰則は日本の「刑法」にあたる法律で定められており、改正されたのはこの部分です。
2017 年12 月20 日連邦法第412 号「ロシア連邦刑法典第245 条及び第258-1 条並びにロシア連邦刑事訴訟法典第150 条及び第151 条の改正について」が施行され、これによって動物虐待に関する定義が拡大されるとともに、罰則も強化されたとのこと。
主要な改正点はロシア連邦刑法典第245 条の大幅改正であり、
- 動物虐待を「暴力的若しくは金銭的動機によって動物を死傷させる行為又は当該行為を残酷な方法若しくは若年者の前で行う場合」としていたところに、新たに「痛みその他の苦痛を与えることを目的とする行為」を追加。
⇒動物を死傷させるに至らない場合でも動物虐待の責任を問うことが可能に。 - 罰則は、8 万ルーブル若しくは収入6 か月分の罰金、義務労働(無償の社会奉仕)360 時間未満、矯正労働(報酬のうち5-20%を政府が徴収)1年未満、禁固1年未満又は保護監察6か月未満のいずれかであったところ、禁固刑の刑期を最大3 年未満に延長、保護監察は廃止。
また、第245 条第2 項で集団で動物虐待を行った場合に罪が重くなるとされていたものをさらに拡大し、以下の場合に罪が重くなるように改正。
●集団、事前に共謀して参集した集団又は組織的な集団による場合
●若年者の前である場合
●マスメディア又は情報通信網(インターネットを含む)で虐待行為を公開した場合
●複数の動物を虐待した場合
上記にあたる場合は、10 万ルーブル以上30 万ルーブル未満若しくは収入1 年分以上2 年分未満の罰金、480 時間未満の義務労働、1 年以上2 年未満の矯正労働、5 年未満の強制労働又は3 年以上5 年未満の禁固のいずれかとのことです。
「強制労働」が一見なかなかのパワーワードですが、2011 年から導入された新たな労働刑で、5年未満の禁固刑の代わりに自宅から労働刑の執行現場に通うことが認められ、報酬の5-20%は政府が徴収する刑だそうです。
刑に下限があるのと、年収計算の罰金刑があるのはすごいですね。
ただし、動物虐待罪以外の法整備は進んでおらず、飼育動物の福祉全般に関する法律については別に独立した法律をつくることになっています。(→注:その後、残りの部分についても法律が成立しました。追記を参照ください。)展示施設規制や動物を伴う移動サーカスの禁止なども含まれる内容となっており、報道が出るたびにとても期待しているのですが、こちらはなかなか制定に至っていません。
この法律により、来場者が動物と物理的に接触する活動は禁止されました。動物が人のいない避難場所に遮られずにアクセスできる場合に限り許されるようですが、動物カフェなどは禁止と報道されています。
猛獣など、愛玩等の目的で飼育してはいけない動物のリストをつくることも盛り込まれました。動物園、サーカス、動物劇場、イルカ水族館、海洋水族館で動物の維持・使用については、ライセンス制となりました。文化および娯楽目的での動物の使用・飼育については、政府が要件を定めるとされています。
ロシア国内のサーカスでの動物利用禁止に関する動向はサーカスの動物利用廃止ブログの記事 をご参照ください。
▼国立ボリショイサーカスの公式サイトにメッセージが掲載された 2月に入り、国立ボリショイサーカスの公式サイトに「公演の予…
狩猟に関する法律の改正
2018年3月7日連邦法第54号「動物虐待の防止に関連してロシア連邦法「狩猟及び狩猟手段の保有並びにロシア連邦の個別の法令の改正について」を改正する法律」が施行され、動物虐待に相当する方法で猟犬の訓練及び調教を行うことが禁止されたとのこと。
- 猟犬は身動きが取れる環境で人が用意した餌を用いて飼育しなければならない。
- 猟犬を狭い場所に閉じ込めたり、餌を与えない等の行為は禁止。
- 猟犬の訓練及び調教は許可制に。政府機関で登録を行った法人又は個人企業のみが特定の施設で実施しなければならない。
昨年、ハフィントンポストが「野生動物を鎖でつなぎ、猟犬にかませる訓練サービスがロシアで横行 『虐待だ』動物愛護団体が反発」と報じていましたが、こういった動きを受けての改正と思われます。
日本でも猟犬の調教のためにイノシシが飼育されており、咬ませることも行われていると聞くのですが、保健所の立入に対しては「咬ませてはいない」と言い訳しているのが現実です。自分の犬を調教している、非営利等の理由のもとに一種動物取扱業も登録していません。山の中なので人の目がありません。
ロシアの新しい規制に比べると、日本のほうがずっと緩い状態です。日本でも猟犬の扱いは狩猟法(鳥獣保護管理法)なのか動物愛護法なのかはっきりさせ、規制強化をするべきではないでしょうか。