2019年改正動物愛護法解説:犬猫販売時にマイクロチップ装着の義務化
犬及び猫の登録(第三十九条の二~第三十九条の二十六):
犬猫販売時にマイクロチップ装着が義務化されました
第四章の三 犬及び猫の登録
(マイクロチップの装着) 第三十九条の二
(マイクロチップ装着証明書)第三十九条の三
(取外しの禁止) 第三十九条の四
(登録等) 第三十九条の五
(変更登録) 第三十九条の六
(狂犬病予防法の特例) 第三十九条の七
(死亡等の届出) 第三十九条の八
(都道府県等の指導及び助言)第三十九条の九
(指定登録機関の指定) 第三十九条の十
(指定登録機関の役員の選任及び解任)第三十九条の十一
(事業計画の認可等) 第三十九条の十二
(登録関係事務規程) 第三十九条の十三
(秘密保持義務等) 第三十九条の十四
(帳簿の備付け等) 第三十九条の十五
(監督命令) 第三十九条の十六
(報告) 第三十九条の十七
(立入検査) 第三十九条の十八
(登録関係事務の休廃止) 第三十九条の十九
(指定の取消し等) 第三十九条の二十
(指定等の条件) 第三十九条の二十一
(指定登録機関がした処分等に係る審査請求)第三十九条の二十二
(環境大臣による登録関係事務の実施等)第三十九条の二十三
(公示) 第三十九条の二十四
(手数料) 第三十九条の二十五
(環境省令への委任) 第三十九条の二十六
前回の改正時に附則に検討が盛り込まれていたことではありますが、今改正により、いよいよマイクロチップの装着が犬猫の販売業者に対して義務付けられました。
犬猫を取得した日(例:子犬子猫が生まれた日、購入した日等)から最長で120日以内にマイクロチップを装着することになります。ブリーダーがペットショップなど他の動物取扱業者に販売する場合は、一部を除き生後56日経過後に譲渡しとすることになりましたが、生後57日から合法的に販売できますので、この日までに装着される犬猫が多くなると思われます。
また、マイクロチップを装着した者や、マイクロチップが装着された犬猫を取得した者に対して、登録の義務が定められました。また、条文の半分以上を占めるのは、指定登録機関に関するものです。
個人情報保護の観点などから実施に必要な準備に時間を要するため、これらの規定の施行は公布後3年以内となっています。☛その後、2022年6月1日施行が決定。
マイクロチップの装着については、改正前の法律の附則に「その装着を義務付けることに向けて検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする」とあったものの、前回改正以降、環境省が具体的に行ってきたのはモデル事業を行うこと程度でした。しかし、今改正では自民党どうぶつ愛護議員連盟がマイクロチッププロジェクトチーム(PT)を置くなど最優先事項として検討し、法改正に至りました。
これには、日本獣医師会からの強い働きかけがあったことは間違いありません。マイクロチップの挿入処置を獣医師だけではなく動物看護師もできるようにするため、愛がん動物看護師法も、動物愛護法改正と同じ2019年の通常国会での成立を急がされていました。
所有者明示の方法として、マイクロチップの装着そのものについて私たちは反対ではありませんが、その「義務付け」については、こういった背景があることや、有効性への疑問や弊害の懸念もあることから反対し、「推進」に留めるよう求めてきました。
※詳細は、ともに連携して活動したJAVA(動物実験の廃止を求める会)のウェブサイト「なぜJAVAが犬猫へのマイクロチップ装着の「義務付け」に反対するのか Q&A」をご参照ください。
3団体として、今回の改正作業を担ってきた超党派議連の条文化作業の会議や、自民党どうぶつ愛護議員連盟のPTからのヒアリングを受けた際にも懸念を述べました。その成果、すべての飼い犬猫への義務付けの可能性もあったところ、今回の改正での義務付け対象は犬猫販売業のみに留めることができました。
しかし、法文にあるように、販売業以外の一般飼い主に対しても努力義務が課せられており、附則には下記のような検討事項が盛り込まれました。
狂犬病予防法に基づく犬の登録も守っている人は半数程度と言われ、異物挿入であるマイクロチップについては義務化しても入れない人が多いままの状況が想定されます。また、特に猫については、マイクロチップの有無が所有権の有無の判断に用いられてしまうと、マイクロチップが入れられていないことをもって実際には所有者のいる外飼いの猫や逸走猫が(もしくは占有者の有無にかかわらず野良猫等が)大量殺処分されかねないとの懸念が強く、このような表現になっています。
第十条 国は、マイクロチップの装着を義務付ける対象及び登録を受けることを義務付ける対象の拡大並びにマイクロチップが装着されている犬及び猫であってその所有者が判明しないものの所有権の扱いについて検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
追記
その後、環境省は以下のような仕組みを構築し、国の指定登録機関は日本獣医師会に決まりました。
犬猫以外の動物のマイクロチップ登録は、既存の登録団体の管理が継続します。国のデータベースでは扱いません。
既に登録されている犬猫の登録情報についても、個人情報保護法の問題から国のデータベースへの移管はできず、既存の登録団体の管理が並行で継続します。ただし、国のデータベースに無料でデータを移行できるサイトが公開されており、希望する飼い主はデータを移行することができます。
自治体が狂犬病予防法の鑑札の代わりとすることもできるようになりましたが、施行日までに対応することは難しいと言われています。
- 犬と猫のマイクロチップ情報登録に関するQ&A
- 犬と猫のマイクロチップ情報登録 環境省データベースへの移行登録受付サイト
以下の登録団体に登録済みの犬猫に関しては、無料で国のデータベースに登録情報を移行できる。- Fam
- ジャパンケネルクラブ
- マイクロチップ東海
- 日本マイクロチップ普及協会
- 日本獣医師会(AIPO)
- 動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行について(通知)
→自治体向けに発出された施行通知
2019年改正法の概要 目次
● 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等
- 登録拒否事由の追加により欠格要件が強化されました
- 環境省令で定める遵守基準を具体的に明示する条項が入りました
(飼養施設の構造・規模、環境の管理、繁殖の方法等) - 販売場所が事業所に限定されます
- 生後56日(8週)を経過しない犬猫の販売規制が実現するも、例外措置が附則に
- 帳簿の備付けと報告の義務が犬猫等販売業から拡大
- 動物取扱責任者の条件が追加されました
- 勧告・命令違反の業者の公表と、期限についての条項が新設されました
- 廃業・登録取消後に立入検査や勧告等を行うことができる規定が新設されました
参考:2019年改正動物愛護法に入らなかったこと<動物取扱業>
● 動物の適正飼養のための規制の強化
● 都道府県等の措置等の拡充
- 動物愛護管理センターの業務を規定、自治体への財政上の措置も新設
- 動物愛護管理担当職員の配置は義務になり、市町村にも設置努力規定
- 動物愛護推進員は委嘱が努力義務に
- 所有者不明の犬猫の引取りを拒否できる場合等を規定
● その他