2019年改正動物愛護法解説:犬・猫の繁殖制限を強化
犬及び猫の繁殖制限(第三十七条):
犬・猫の繁殖制限が強化されました
※下線が改正部分。
(犬及び猫の繁殖制限)
第三十七条 犬又は猫の所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置をするように努めなければならない。
(犬及び猫の繁殖制限)
第三十七条 犬又は猫の所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置を講じなければならない。
不妊去勢手術などの繁殖制限について、現行法の努力規定では弱いことから、手術による繁殖制限を義務とする表現に改める改正を求めていました。「みだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には」という条件は残っているものの、今回、手術等による繁殖制限の義務化が実現しました。
この改正により、自治体が繁殖制限をしない飼い主に指導をしやすくなったり、市民が不妊去勢手術の助成金制度を求める際に活用ができるでしょう。
過剰繁殖の問題は犬猫に限ったことではないため、私たち3団体は人の所有・占有下にあるすべての脊椎動物に繁殖制限措置の対象を拡大することも求めていましたが(注:手術の義務化は犬猫だけとする)、この改正はなされませんでした。
施行通知
施行の直前、2020年5月28日付けで環境省から自治体に通知された「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行について」(施行通知)では、以下のように説明されています。(この通知は、地方自治法に基づく、国から自治体への「技術的な助言」に相当します)
「その他の措置」として雌雄の分別飼育をわざわざ挙げているところが、往生際が悪いと感じてしまいますが、法律に例示として挙げられているのは不妊去勢手術です。第一には手術が選択肢と考えるべきです。
11 犬及び猫の繁殖制限の義務化(第37条関係)
犬又は猫の所有者に対し、適正な飼養が困難となるおそれがある場合に、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置を講じることが義務付けられた。この規定は、従来の努力義務を義務化することにより、犬又は猫の所有者が多頭飼育崩壊に陥る事態を予防し、適正な飼養又は保管が図られるために設けられた。「その他の措置」としては、例えば、雌雄の分別飼育が挙げられる。
2019年改正法の概要 目次
● 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等
- 登録拒否事由の追加により欠格要件が強化されました
- 環境省令で定める遵守基準を具体的に明示する条項が入りました
(飼養施設の構造・規模、環境の管理、繁殖の方法等) - 販売場所が事業所に限定されます
- 生後56日(8週)を経過しない犬猫の販売規制が実現するも、例外措置が附則に
- 帳簿の備付けと報告の義務が犬猫等販売業から拡大
- 動物取扱責任者の条件が追加されました
- 勧告・命令違反の業者の公表と、期限についての条項が新設されました
- 廃業・登録取消後に立入検査や勧告等を行うことができる規定が新設されました
参考:2019年改正動物愛護法に入らなかったこと<動物取扱業>
● 動物の適正飼養のための規制の強化
● 都道府県等の措置等の拡充
- 動物愛護管理センターの業務を規定、自治体への財政上の措置も新設
- 動物愛護管理担当職員の配置は義務になり、市町村にも設置努力規定
- 動物愛護推進員は委嘱が努力義務に
- 所有者不明の犬猫の引取りを拒否できる場合等を規定
● その他