2019年改正動物愛護法解説:販売場所は事業所に限定
販売に際しての情報提供の方法等(第十二条):
対面販売義務が強化され、犬猫の販売場所は事業所に限定されます
(販売に際しての情報提供の方法等)
第二十一条の四 第一種動物取扱業者のうち犬、猫その他の環境省令で定める動物の販売を業として営む者は、当該動物を販売する場合には、あらかじめ、当該動物を購入しようとする者(第一種動物取扱業者を除く。)に対し、当該販売に係る動物の現在の状態を直接見せるとともに、対面(略)により…(以下略)
※下線が改正部分。
第二十一条の四 第一種動物取扱業者のうち犬、猫その他の環境省令で定める動物の販売を業として営む者は、当該動物を販売する場合には、あらかじめ、当該動物を購入しようとする者(第一種動物取扱業者を除く。)に対し、その事業所において、当該販売に係る動物の現在の状態を直接見せるとともに、対面(略)により…(以下略)
いわゆるインターネット販売の禁止条項であった第二十一条の四について、法の抜け道となっていた、スタッフや別事業者が空港で動物を受け取り購入者に渡す等の手法を封じるための改正が実現しました。
私たち3団体は、当初(当該事業所の)動物取扱責任者が販売しなければならない形で要望しましたが、販売は必ずしも動物取扱責任者でなくてよいということもあり、登録事業所での販売を義務づければよいのではないかと考え直していましたが、改正法では単純に「その事業所において」が追加され、その主旨での改正が実現しました。
今後施行へ向け、この改正の意味するところの周知徹底を図る等、実効性を持たせる施策が重要になってくると思います。動物がいるところまで買い手が実際に見に行き確認するというのがインターネット販売禁止の趣旨でしたが、脱法販売が横行していたため、このような改正に至りました。実際に購入するなどの方法でペット販売関連の企業が調査を行っていました。
登録していない場所での1日だけの移動販売は実質禁止に
これまでは、登録事業者であれば、登録がない場所で24時間に満たない移動販売を行うことができました。しかし、登録事業所での対面販売が義務化されましたので、このような販売方法をとることはできなくなります。このことについて、動物愛護部会で確認をした委員がいらっしゃいますので、議事録の該当部分を抜粋します。環境省の回答は、1日だけであっても事業所として登録させるのか、それが適切なのかどうか検討しなければならないという意味だと思います。
【山口臨時委員】 今回、販売の説明につきましては、事業所においてのみということになっておりますので、これをもって移動販売というものはできなくなると判断してよろしいんでしょうか。
【新美部会長】 よろしくお願いします。
【長田動物愛護管理室長】 今回は、販売の場所が「事業所」という形で限定をされた形になりますので、制度上、第一種動物取扱業者として都道府県知事等の登録を受けた際に、登録している事業所での販売というのが原則になるということでございます。
どういった場合に登録を認め、どういった場合に認めないかということについては、さまざまな運用上の配慮がなされている部分もございますけれども、ここについては、今回の改正の趣旨を踏まえて、新たに見直しをするべきところがあるのかどうかということも含めて、検討をしてまいりたいというふうに考えております。
施行通知
施行の直前、2020年5月28日付けで環境省から自治体に通知された「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行について」(施行通知)では、以下のように説明されています。(この通知は、地方自治法に基づく、国から自治体への「技術的な助言」に相当します)
施行規則に書かれている対象動物は:
第八条の二 法第二十一条の四の環境省令で定める動物は、哺乳類、鳥類又は爬 虫類に属する動物とする。
3 動物を販売する場合における対面による情報提供の徹底(第21条の4関係)
現行法において、第一種動物取扱業者が動物を販売する場合に、購入者に対し、飼養方法等について対面で説明することが義務付けられている。しかしながら、空港や個人宅に販売予定の動物を運び対面での説明を行うといったこれまで許容されてきた販売方法は、実際にその動物を飼養してきた事業者の事業所で説明が行われないため、消費者に十分な情報が提供されない懸念があるほか、その場で消費者に契約を求める事態に陥りやすく、安易な購入に繋がりやすいという懸念があった。これを踏まえ、消費者が現物の動物を直接確認し、契約前に丁寧な説明を受け、飼養の可否を適切に判断することを可能とするため、改正法により、対面で説明を行う場所が事業所に限定された。なお、対象が哺乳類・鳥類・爬虫類の販売を行う全ての第一種動物取扱業者であることについては、従前のとおりである。
2019年改正法の概要 目次
● 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等
- 登録拒否事由の追加により欠格要件が強化されました
- 環境省令で定める遵守基準を具体的に明示する条項が入りました
(飼養施設の構造・規模、環境の管理、繁殖の方法等) - 販売場所が事業所に限定されます
- 生後56日(8週)を経過しない犬猫の販売規制が実現するも、例外措置が附則に
- 帳簿の備付けと報告の義務が犬猫等販売業から拡大
- 動物取扱責任者の条件が追加されました
- 勧告・命令違反の業者の公表と、期限についての条項が新設されました
- 廃業・登録取消後に立入検査や勧告等を行うことができる規定が新設されました
参考:2019年改正動物愛護法に入らなかったこと<動物取扱業>
● 動物の適正飼養のための規制の強化
● 都道府県等の措置等の拡充
- 動物愛護管理センターの業務を規定、自治体への財政上の措置も新設
- 動物愛護管理担当職員の配置は義務になり、市町村にも設置努力規定
- 動物愛護推進員は委嘱が努力義務に
- 所有者不明の犬猫の引取りを拒否できる場合等を規定
● その他