「動物福祉(アニマルウェルフェア)を考える議員連盟」設立集会

動物の福祉 議連

2月19日に新たに立ち上がった、「動物福祉(アニマルウェルフェア)を考える議員連盟」設立集会を傍聴させていただきました。

去年の動物愛護法改正では畜産動物や実験動物の取扱いについてなど積み残し課題があったことを受け、生方幸夫議員(立憲民主党)の発案で、新たに超党派で今後の日本の動物福祉全体を考えるための議員連盟がつくられたものです。

初回は、環境省、農林水産省、厚生労働省、文部科学省から現状の取り組みについて短いヒアリングがあり、その後、各議員から質問や今後への意見などが出されました。

豚コレラ(豚熱)問題から被災時の対策、学校動物や犬肉輸入問題、動物園、実験動物、と畜方法、海外の希少種、爬虫類などなど、集まった議員の関心は実に様々だと感じました。動物愛護法改正の検討過程では、殺処分問題や犬猫販売業について、同じことの繰り返しに時間がとられすぎだと感じることが多々あり、議員の関心が偏っているから仕方がないと思っていましたが、実際にはそんなことはないのだと思います。

とはいえ、正直、動物福祉で一本筋が通るのか不安に感じる部分もありましたが、家庭動物に限らない議論ができる場が久しぶりにできたことに期待をします。(以前、民主党には動物福祉議連がありました)

爬虫類議連や水族館議連とも既に繋がっている様子があり、業界の意向がどう関与するのかも注視です。集まっているのは動物福祉に関心のある議員ですが、政策をつくるには関係者との合意形成も最終的には必要なので、国会議員にはその役割も期待します。

最終的にどこをめざすのかについては、まだまったくの白紙ベースとのこと。今後、勉強会を積み上げていくそうです。

実のところ、国会議員が動物福祉の現状をあまり知らないことがこれまで法改正が進まなかった原因かと思っています。ぜひ知るところから始めてほしいですし、予断をもって拙速に進めることはしないでほしいと思っています。

動物福祉(アニマルウェルフェア)を考える議員連盟

立ち上げ1週間前に勉強会も開催されました

立ち上げ1週間前の2月12日に、動物福祉をテーマにした議員向け勉強会も開催されました。講師は、佐藤衆介先生(東北大学名誉教授/現 八ヶ岳中央農業実践大学校 畜産部長)でした。傍聴したスタッフからのレポートです。

●生方議員のあいさつ

次の改正に向けてもがんばりたい。7年ぶりに動愛法の改正が成立したが、産業動物や実験動物が盛り込めなかったので、何ができるか勉強して来週議連を立ち上げたい。アニマルウェルフェア(以下、AW)を一般にも普及していきたい。

●佐藤衆介先生のお話

はじめに

1、AWとは

AW改善の5つのエポック:

  1. 1965年 ブランベル・レポート
  2. 1992年 5つの自由モデルの提案(FAWC(イギリス農用動物福祉委員会) 1992)
  3. 2000年 EUがAWをWTOに非貿易的関心事項と提案
  4. 2017年 OIE(世界獣疫事務局)がAW世界戦略を採択
    One Welfareの考え方。動物の利用は正当なこととし、動物の利用を動物の感受性を認識してAW国際規約を定めることで、人道的であることを確認する。動物の利用には、倫理的責任を有する。
  5. 2018年 OIEがAWを再定義
    AWとは、生活および死亡時の環境との関連からくる動物の身体的・心理的状態を意味する。

2、AW改善について

栄養・衛生環境・温熱環境面は改善されたが、動物の苦痛・やりたがっている行動、人との関係への配慮の改善はどうか?

改善されてきているものとして、例えば:

  • 採卵鶏
    ⇒エンリッチドケージで、巣箱・爪とぎを置く。エイビアリー方式(少し開放型)
  • ブタのストール飼育
    ⇒ニューカッスル大とエジンバラ大で開発したシステム。
    わらのところがあったり、巣作りができるところがあったりする。
  • 乳牛
    ⇒子牛は生まれてすぐ親から離されると、その後の影響が大きく、生産性に関わることが分かってきた。
    親子で過ごせるようにした方がよい。
  • ブロイラー
    ⇒密度を下げて運動できるように。床敷きは清潔に。早く成長させると心臓・足・肺などに負担がかかるので、もう少しゆっくり成長させるように研究。

〇AWの改善は、動物よし、生産者よし、消費者よし、社会よし、未来よし

  • 動物虐待と人間虐待は同じ。
  • 慢性的ストレスは免疫を下げる。
  • AWの改善で、抗生物質の使用が減る。
  • 痛みを伴う処置をすると認知バイアスが起こり、「また痛いことをされるのでは」というストレスで、免疫が下がる。
  • 飼育前歴で動物の性格は変化する。

3、今後どう推進するか

  • BBFAW(Business Benchmark on Farm Animal Welfare:畜産動物福祉に関するビジネスベンチマーク)の報告書:
    AWがビジネス展開にとって大事という認識が低い⇒
    AW改善の制限因子を突破するための戦略で各企業を評価。2018年、日本の企業は、最低評価。
  • 日本では、消費者も生産者も実需者も関心外。
  • 技術革新、農業補助金、公正価格、農家のインセンティブが鍵。

〇質疑応答では、議員からの質問を受けて以下のような話が出た。

  • 感じる(sentient)存在であるかどうかが倫理の境である。生きているときの状態が大事。
  • AW学は、学会には250人ぐらい。
  • AWに賛成でもお金を出すのは別で、それはヨーロッパでも同じ。子どものころからの教育が大事。学習指導要領も変わり、SDGsに関連して、倫理的消費が入った。
  • 認証については、統一マークはヨーロッパにもない。ヨーロッパのものは、愛護団体の認証や生産者団体の認証。日本にはない。ヨーロッパで2009年に統一の認証をやろうとしたが、農家を調査するのが長時間かかり、農家から反対されて頓挫した。

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