日本の医療分野の研究開発や、その環境整備を取り仕切る立場にある国の機関、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)が、「研究公正に関するヒヤリ・ハット集」日本語第2版を発行したとのこと。
これは、実際に研究不正に至る前に防ぐことができた事例を集め、似たような境遇になった時に思いとどまったり、相談をしたりできるように、学べるようになっている冊子です。
研究公正に関するヒヤリ・ハット集(第2版)(2023年3月発行)
この中に、動物実験に関係する事例がありました。
60~61ページに載っている「動物実験でしか検証していない健康食品の効果の誇大広告」です。
ある大学の教授が、ストレスをかけた雄のマウスに植物由来の成分 X を投与する実験を行い、生殖機能の一部が改善したという結果に基づいて特許が出願されていたのだそうですが、共同研究先の企業が、その成分Xの販売のために怪しい広告案を出してきたというのです。
広告内容についてはこう書かれています。
大学の産学連携の事務担当者者が、利益相反アドバイザーの教授に相談したことで、この怪しい広告は世に出ずに済んだようです。それどころか、大学と企業の交渉の結果、大学は、この企業に対する特許権の使用許諾を取り消したとのこと。企業も欲をかくと損をします。
大学は、効果の定かでない健康食品に名前を使われずに済み、名誉を守りました。
背景に、企業から資金提供を受けて研究しているため、産学連携の事務担当者も意見を言いにくい状態であったことが書かれており、なるほどと思いました。
お金を出して動物を苦しめ、都合の良い結果が出たら人で試すこともせず、大学名で信頼させて消費者に売りつける。何とあくどい商売でしょうか。
動物が、このような商売のための道具として犠牲になっていることに、消費者はもっと意識を向けるべきだと思います。
これまでの実例
動物実験等を根拠にした宣伝に対し、景品表示法に基づく措置命令が出た!動物実験しか根拠がないのに「体にいい」「効能がある」などと宣伝する広告がしばしば目につきますが、「人ではどうか」ということが立証されていないのに宣伝につかってい[…]
人への有効性を実証するデータがないのに広告することは不当表示に該当住宅のポストに動物実験の写真を堂々と使ったチラシが投函されていました。驚きます。マウスとカイコの動物実験を大々的に根拠としていますが、人でどうだったかの科学的根拠[…]
人への有効性を実証するデータがない広告は不当表示!食品やサプリメントなどの宣伝では、よく「動物で効果があった」というエピソードが使われることがあります。しかし、種差が存在するため、効能などの反応は動物と人間で同じではありません。[…]