アカミミガメを特定外来生物に指定するということはまだ決まっていません 第4回外来生物対策のあり方検討会傍聴

アカミミガメ規制、また飛ばし記事が出る

昨日(7月6日)、朝日新聞のサイトに「アメリカザリガニ、特定外来生物に指定へ 放出禁止に」との記事が出て驚きました。アメリカザリガニ、ミシシッピアカミミガメ、いずれも特定外来生物に指定することが決まったという事実はありません。確かに環境省は以前から、アカミミガメをいつかは特定外来生物に指定する、その検討をするとは言っていますが、そのことについて、何か動きがあったとか、決まったとかいうことは現時点ではありません。

昨日、たしかに環境省では「外来生物対策のあり方検討会」の第4回が開催され、オンラインで傍聴しましたが、そもそもこの会合は種の指定を検討するための会合ではなく、外来生物法及び外来種対策を今後どうするかという全体のあり方を検討するための会合です。この検討会の取りまとめを経て、法改正の必要があるということになれば、法改正にもつながります。種の指定は、いま検討が進んでいるのとは別の話です。

輸入・販売禁止先行は実現するか?

確かに、現在示されている素案に、この朝日新聞の記事に書かれている新しい規制の区分をつくるような話に近い文言は載っています。当会が傍聴している理由も、まさに、現行の特定外来生物に指定することは難しいが、何らか手を打たなければならないアカミミガメなどの動物種に対し、輸入禁止や販売禁止を先行させるよう、これまで要望してきたことが理由です。

いわゆる「蛇口」を締めずに殺処分ばかりが先行するおかしな事態が続いており、昨年11月、立憲民主党の堀越啓仁議員が衆議院の環境委員会でこのことを質問してくださった際に、環境省は、この検討会で今後のことは検討すると答弁しているので、動きをチェックしていました。(このときの答弁は、特定外来生物に指定してしまうと飼育の規制もすることになるので、飼育数が多い動物は難しいんだよねということを言外に言いたいのだろうと思います。下記に会議録掲載。)

ですから、記事にあるような新たな規制の仕組みが実現する可能性は、確かにあることはあるのですが、現在検討会で示されている素案に、記事に書かれているような「特定外来生物に新たな区分を設けて、ペットとして飼うことは認めたうえで、販売や譲渡、野外に放出することを禁止する」といったような具体的な記述はありません。また、そのような具体的な内容まで検討されていませんし、まして何も決まっていません。素案には「規制の仕組みを検討する必要がある」と書かれているだけで、何かを禁止するなどということも決まっていません。

環境省は、法的に輸入・販売のみ禁止といったような仕組みを作ることができるのかどうか、まだこれから検討と言っていますし、昨日記事を見たあとで電話で確認しましたが、なぜこのような記事が出てくるのかわからないと言っていました。

素案の該当部分は下記です。

18ページ 
○我が国の生態系等に大きな影響を及ぼしているにもかかわらず、飼養等を規制することによって、大量に遺棄されたり、非意図的な運搬規制により一部地域において経済活動に支障が出たりする等の深刻な弊害が想定される侵略的外来種については、弊害をできるだけ軽減させる形で、生態系等に係る被害の防止に資する規制の仕組みを検討する必要がある。
これで「販売や譲渡、野外に放出することを禁止する」なんて読めませんよね。朝日新聞、勝手に法律をつくらないでほしい。
また、「外来種対策をめぐる現状と課題」の部分に、確かに種名を出して下記のような記述がありますが、これは現状分析であって、背景を説明した部分です。
10ページ
アカミミガメやアメリカザリガニのように、特定外来生物と同様に生態系等への被害が明らかになっているにも関わらず、大量に飼育されていることや、ツヤオオズアリのように国内の一部地域では定着しており、様々な経済活動に伴って非意図的な運搬が恒常的に発生すること等から、現行法では、飼養等(飼養、栽培、保管又は運搬をいう。同法第1条。以下同じ。)の禁止の対象となる特定外来生物への指定が難しい種が存在するという課題がある。

「環境省が新しい仕組みを検討しているのだから、ゆくゆくはこの2種が指定されるはずだ」というのが記事の主張なのだろうと思いますが、それは予想であって、仮に環境省にその意向があるのだとしても、まだ決まったように書くのは早く、既成事実化して自分たちが思うように改正を進めたい意図があるのではないかと疑ってしまいます。

そもそも、根本的な問題として、検討会での検討がまだ終わっていないことがあります。あと1回残っています。8月の第5回で素案の検討を終えた段階で、報道されるならまだわかりますが、まだ決まってもいないものを決まったかのように報じるのは疑問です。取りまとめは、親会である審議会にも諮られるとのことです。※訂正→取りまとめ後、中央環境審議会(部会か小委員会かは未定)で検討を続けていくとのことです。(少し間違えていたので訂正しました。詳しくはこちら。)

国の有識者の会合の検討内容を歪曲したり、終わってもいないのに早取りしたりして飛ばし記事を書くのは日本のマスコミの伝統芸ですが(これまで何度も経験している! )、動物の命がかかっているので止めてほしいです。特に譲渡禁止と勝手に書いているところは問題です。輸入、販売、繁殖は禁止するべきで、遅きに失したと言えますが、飼育禁止はしないのに、飼えなくなった人が他の新しい飼い主を見つけて譲ることまで禁止してしまっては、救える命も救えません。駆除・殺処分されている数と比較すればわずかとはいえ、現時点で、飼えなくなった人から飼える人に譲ることまで禁止するのはおかしいと思います。

そもそも、今後あらたに検討されるかもしれない区分の名称が、特定外来生物になるかどうかもわからないのに、特定外来生物に指定と報じられる根拠、よくわかりませんでした。(普通に考えると別の名称になるのでは? 少なくとも準とか第二種とか付けないと、区別がつきません。)

外来生物法の枠組みを改めることは検討されていますが、踊らされずにウォッチングしましょう。せっかくですから、次の検討会で委員は新しい枠組みについてきちんと審議してほしいです。あと、報道についての苦言をきちんと議事録に残すべきでしょう。

アメリカザリガニについては、子どもが飼っていることが多いから、学校での教育が必要だろうという話は出ていました。素案でアメリカザリガニの名称が出ているのは教育についての部分です。

追記1

翌日も、後追い報道が続いています。でもやはり朝日新聞にならって、内容がおかしいものばかりです。FNNニュースは「飼育は許可制、野外放出を禁止」、共同通信は「飼育は許可制」などと書いていますが、そのようなことまで決まっている事実はありません。

翌日も環境省に再度確認しましたが、飼育が許可制とか、どこから出た話なのかわからないと、やはり言っていました。 飼育が許可制なら、今の特定外来生物と同じですよねとも言ってます。 (ほんとうですよ、現行法も知らない人が報道しないでほしい)

後追い記事でも間違えているのが不思議ですが、役所からするとマスコミ報道は普段からこういうことばかりだそうです。たしかに昔から、政府の審議会等の検討状況に関する報道は、おかしなものが多いです。最悪なのは、開催日の朝に、まだ会合が開催されないのに決まったかのように報道されるパターンが多いことですが、今回のケースは、それよりもフライング期間が長くて驚きました。

追記2

8月6日、最終的に取りまとめられた提言が環境省のサイトで公表されました。詳しくはこちら

関連記事

先日、ミシシッピアカミミガメやアメリカザリガニを特定外来生物に指定することがまるで決まったかのような報道が相次ぎ、「外来生物対策のあり方検討会」の進行状況についてこちらでご報告しました。その後、第5回が8月3日に開かれ、最終的に取り[…]

追記3

その後、野生生物小委員会で検討が行われ、パブリックコメントが始まりました。

関連記事

ご報告が大変遅くなってしまいましたが、ミシシッピアカミミガメなどを想定して、新たな外来生物法の規制が検討されるかもしれない件について、その後、10月5日に環境省で野生動物小委員会が開かれ、あり方検討会の報告書よりは踏み込まれた形で答申案が出[…]

堀越啓仁衆議院議員 国会質疑

第203回国会 衆議院 環境委員会 第2号 令和2年11月17日 会議録より該当部部を抜粋

○堀越委員 (中略)そして、次に外来種についてお伺いしたいと思いますが、まずミシシッピアカミミガメ皆さん御存じでしょうか。ミドリガメと言われて、私も子供のころ、祭りの縁日に行くと亀釣りというのがよくありました。最近はもう見ないかなと思いますが、当時かなり当たり前のように縁日なんかで亀ちゃんがいっぱい売られていて、あのアカミミガメが大きくなると結構な大きさになるものですから、飼えずに野生に放してしまうという方々が多くなっていて、そしてそれを今ちょっとどうしようかということで、防除、駆除の対象になっているわけですね。
 一九五〇年代後半からアメリカから多数輸入されてきたんですが、近年の輸入量というのは、当時百万体だったのに対して五万体前後というふうに言われていますが、まだこれはアカミミガメの幼体を輸入しているという実態があるんですね。これは生態系に大きく影響を与えます。水草の食害であるとか、それだけではない、レンコンですとか、そうした水生栽培をされている第一次産業にも影響を与えているものでもあるので、これは駆除の対象としていても、輸入の対象規制がなっていないと、もう蛇口を閉めないと意味がないんじゃないかというところでありますので、たしか二〇一五年に環境省は、アカミミガメ対策推進プロジェクト、さっきインターネットでちょっと調べたらそうやって出てきたんですけれども、たしかそうやって五年前に打ち出している。二〇二〇年度段階をめどにして、これを輸入禁止していくんだというような方針を示された、その当時行われたというふうに私は先ほど認識したんですが、この辺について、この輸入禁止の措置、具体的にいつから講じるのか、また販売禁止を行う考えはどうなのかということについて、お伺いしたいと思います。
○笹川副大臣 堀越委員には先ほど特段のエールを送っていただきまして、ありがとうございました。動物愛護につきましても、広い知見と、また、御活動いただいていることにも敬意を表したいというふうに思います。
 委員から御指摘いただいたとおり、このアカミミガメにつきましては、緊急対策外来種に選定をし、いわゆる普及啓発、防除マニュアル作成、地方公共団体にも御協力をお願いしたところでございますので、ほぼほぼ縁日ではもう見かけることはないのではないかなというふうに思っております。
 また、委員指摘がございました、供給を断つということになりますと、輸入、販売の規制も重要な課題ということは我々環境省としても深く認識をしているところでございます。
 外来生物法によって、特定外来生物への指定によって輸入、販売の規制を行うということは可能でありますが、仮にそうなってきますと飼養等にも同時に規制をされることにもなりますので、現在、推定でありますよ、推定で百十万世帯にアカミミガメが飼育をされているという状況もございますので、そのことも踏まえた上で、外来生物法施行状況検討会というものがございます、この検討会において外来生物法の施行状況の評価を進めており、その中で、こうした課題を踏まえた上で今後の適切な対応につきましても速やかに検討をしてまいりたいというふうに思っております。
 以上でございます。
○堀越委員 二〇一五年にアカミミガメ対策推進プロジェクトが環境省の方から出されて、それからアカミミガメ防除マニュアル、これですよね、私もこれを見させていただいておりますけれども、防除、非常に必要だとは思います。しかしながら、やはり蛇口を閉めないことにはふえ続ける。確かに、亀も長生きですから、大事に飼っておられる方々もやはりいらっしゃるので、そういった飼養等に関する規制等々も、百十万世帯という、推定ではあるということでしたけれども、行うとなると大変な労力にはなるんだというふうに思いますが、実は私、防除の方法自体が、わなを仕掛けて成体を捕まえて、その後、駆除するわけですが、この駆除の方法自体が非常に私は心苦しいものがありまして、これが適切に運営されていくのと加えて、同時に蛇口を閉めていくことの是正をお願いしたいというところなんですね。  次に質問させていただきたいのがまさにそこで、どういう殺処分の方法をするかというと、まず、ミドリガメをわなで捕まえた後、それを麻の袋とか土のう袋みたいなものに入れて、縛って、ガムテープでぐるぐる巻きにして、そこに個体名を書いて、そしてマイナス二十度の冷凍庫に入れてそれで殺すという形をとっているんです。
 OIEには、ああ、アメリカの獣医師会でもこれは推奨しない、いわゆるじわじわじわじわ殺していく方法というのは推奨しないということも言われておりますし、本来であれば麻酔薬、こういったものを使った方が私はいいんだと思うんですが、そのあたりについていかがでしょうか。
○鳥居政府参考人 お答えいたします。
 委員御指摘の麻酔薬の使用でございますけれども、これは、入手や取扱い、管理に専門的な資格や知識が必要になるということから、地域の多様な主体により実施される防除においては、麻酔薬の使用は難しいというふうに考えてございます。
 こうした状況に加え、外温性動物である両生類や爬虫類については、冷却、冷凍による方法の妥当性を支持する知見も得られていることや、作業者の安全、心理的な負担等も踏まえ、防除の手引においては冷凍による殺処分を現実的な手法として紹介してございます。  その上で、御指摘のOIEが作成しました産業における爬虫類の殺処分についての福祉綱領も含め、最新の知見を参考にし、捕獲個体にできる限り苦痛を与えないことに加え、生態系の保全や関係者の理解を得ることなども留意しながら、引き続き、よりよい方法を検討してまいりたいと考えております。

須磨海浜水族園のアカミミガメたちは大学等の解剖に払い下げがされていた
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