実験用サルのべ1万7200匹の飼養許可を受ける新日本科学、外来生物法違反により許可更新が遅れる!

日本最大の実験用サルの施設で、許可の更新が遅れていたのは外来生物法違反のせいだった!

日本で最も多数の実験用霊長類を扱う企業は、鹿児島市に本社のある、株式会社新日本科学です。

昨年、PEACEでは、この企業の本社に併設される安全性研究所が、特定外来生物であるカニクイザルやアカゲザルについて、どれくらいの規模で許可を受けているのかなどを知るために、環境省に情報公開請求をしました。

それが、6月10日付けのことでした。

そして、1回期限の延長があったのち、8月に文書が開示されたのですが、なんと最新の許可についての書類が入っていません!

前回の飼養許可の有効期限は、2020年5月31日(アカゲザル)と6月10日(カニクイザル)ですから、PEACEが開示請求したときには、許可はおりていなければおかしいです。

なのに書類がない。

もしかして無許可状態なのか? 環境省九州地方環境事務所に問い合わせるのですが、どうもPEACEが開示請求した後に許可は下りているらしいが、いつ下りたかは教えられないそう。許可の有効期限が切れてから新しい許可を得るまでの間に空白期間があるのはおかしいではないかと問い詰めて、やっと申請書類が期限前に出ていたらしいことは教えてもらえました。

しかし、このような大企業が時間の余裕を持って申請しないのはおかしいのではないか、許可が下りるまでに時間がかかることは想定されるのでは?という気持ちで、9月に2回めの開示請求をしました。

しかしこの想像は甘すぎました。

今年2月になってやっと書類が届き、なんと新日本科学が外来生物法に違反していたため、指導を受けており、それで許可が遅れたことが判明

新日本科学の3つある霊長類の動物実験の拠点のうち、本社もある鹿児島市の拠点で、です。カニクイザル上限5500匹、アカゲザル上限4000匹の施設です。

グループケージは、外来生物法違反だった!

動物に苦痛を与える行為を伴う動物実験の世界でも、社会性のあるマカクザルの飼育は、国際的には、動物福祉上の理由から「群れ飼育」に移行しつつあります。

どうも新日本科学も、そのためのグループケージを一部導入していたらしいのですが、これが、外来生物法に定められた許可を受けていない檻でした。平成27年から、ずっと違反状態でした。

不自然ですが、これが新日本科学側の言い分です。

■ 新日本科学の始末書

 

■ 環境省側の記録

不自然な新日本科学の言い分

社長名の始末書では「施設」とは建物のことだと勘違いしていたように書いてありますが、非常に不自然です。

特定外来生物の飼養許可が、動物を入れている檻やケージ、水槽等そのものを対象にしていることは、あまりにも基本的で自明のことです。(一般の飼育者の施設について考えてみればわかることです。) 外来生物は、逃してはいけないのですから、どういう檻に入れて飼うのかが問題です。

そして何より、過去の許可ではケージの図面やサイズ、鍵の状態などについて詳細に書類も出しています。

また、過去の許可には条件がついており、「使用等施設の変更、飼養等管理体制の変更をしたいとき」は事前に申請するようちゃんと書かれています。

もし始末書にあるように、本当に法律を理解していなかったのだとしたら、このように多数のカニクイザルやアカゲザルを飼育する資格は、そもそもなかったと言えます。

問題は、サルにストレスを与えたこと!

当たり前のことですが、新しく許可がおりる前に違反が発覚しているので、サルたちは、許可が出るまで、いったん前回まで許可が出ていたケージへ移されました。

そのことが写真で全て記録されています。

新日本科学が最初からきちんと許可を受けていれば、このような余計なストレスはかかりませんでした。

これらの写真も全て開示されました。(写真一覧はこちら。)

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スライドショーになっています 写真についての詳細は、新日本科学の外来生物法違反に関する記事をお読みください。[gallery type="slideshow" link="file" columns="1" size="full" […]

医薬品等の前臨床試験で法律違反とは驚きだが、処罰はされず、始末書だけ!

結局、この違反がわかったのは、今年の2月に書類が届いたときです。9月に開示請求をして翌年の2月に届くという、恐ろしい時間のかかり方をしているので、リアルタイムで知ることはできませんでした。1回目の開示請求は、まさに違反が発覚した頃であったにもかかわらずです。

つまり、わかったときには、すでに全て終わっており、社長に始末書だけ出させて、処罰はなしとなってしまっていました。

医薬品等の前臨床試験として行われるサルの動物実験が、実は違法な状態で行われていた。大問題だと思いますが、新日本科学は、クライアントにこのことを知らせているのでしょうか。

動物愛護法改正に反対する動物実験関係者たちは、これまで、「外来生物法があるから」「特定動物の規制があるから」「カルタヘナ法があるから」等々、法律を守って適切にやっているんだと主張してきました。(私たちは、動物福祉を担保させるための条文がないと言っているのですが!)

が、実際には法律は守られていませんでした。「売り」のはずである「動物福祉」のためのグループケージで(といってもサルにとって極小のケージであることに変わりはありませんが)、違反していました。新日本科学の言葉通りなら、法律が何を規制しているのかを全く理解していませんでした。

時間が経ってしまっているので、ニュース性が落ちてしまっており、ネットで広めるしか、知ってもらう手段がありません。どうか、皆さん、拡散してください。

新日本科学は、カニクイザルとアカゲザルの飼養許可数を合計すると、のべ1万7200匹にも及ぶような巨大な動物実験施設を運営しています。

その詳細については、ページを分けました。下記のページをご覧ください。

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情報公開について

環境省も、事情があって許可が遅れたと言えばいいのに、不自然に隠し続けたので、わけがわからず本当に困惑しました。不信感しかありません。開示請求すればわかることについて、なぜ回答しないのでしょう。これまでイギリスや韓国の情報公開法の運用に接する機会がありましたが、日本と根本的に違い、質問に回答することで情報開示の使命を果たしており、なおかつ期限も明確です。

日本は、回答できないから行政文書の写しを開示請求しろという、ばかばかしいダブルスタンダードな運用をしています。問い合わせには答えず、開示請求なら開示するわけです。自分たちで仕事を増やして、ばかばかしいと思います。回答を遅らせ、事実を隠蔽するには最適な、日本らしい方法かもしれませんが。

役所の説明は信用できないので、開示請求で確認することは極めて重要だという認識を新たにしました。

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