2018年9月8日にTBS系で放送された「ジョブチューン 日本のスゴ腕ハンターに密着したら幻の食材&生き物 本当に獲れちゃいました!」、ネットでも批判噴出でしたが、とても不快な番組でした。
大阪のペットショップ「from SCRATCH」の店主であり、大阪動植物海洋専門学校の講師でもある中岡裕普氏が、5日間、石垣島などの離島をめぐり固有種を捕獲、商売のために収集するところに密着するという番組でした。いわゆる「採り子」の礼賛番組です。
最初のさわりからして、数年前にヤエヤマイシガメの捕獲で月収500万円あった、世界で日本の亀ブームがありすごく儲かった、亀バブルで自社ビルを建てた同業者もいる、アマガエルも海外では2000円くらいする、レアカラーだと2~3万する等々、「野生動物=金になる」しか観点にない、えげつない内容でした。
八重山列島にいるサキシマヒラタクワガタのうち7センチを超えるものを捕まえようとするパートでは捕まえ方を詳細に放映、与那国島に生息する「絶滅も危惧される幻の蛇」と言いながらヨナグニシュウダを捕まえるパートでも捕まえるまでを不必要に解説。こんなもの流していいのか!?という内容でした。
最終的に5日間で43種類捕獲し、30万円になりました!すごいなー!のような内容も、一体何を考えているのか、憤りしかありません。珍しい生き物を売りさばいて、金になればいいのか。売られた先で生き延びる保証はまったくないだろうに、無責任極まりない商売です。
獲るまで何かわからないが、生きものらしきものが目に入ればとにかく手でバシッと捕まえるとか、呆れた逸話も紹介されていました。
ペットとして日本の固有種が売られている問題で、その中でも特に西南諸島の希少種の捕獲が問題視されるようになってきています。テレビで堂々と顔出しでやるような輩でも入島禁止にできないのか!と憤ってしまいますが、何と、この17日、石垣市議会が抗議決議及び意見書を採択したそうです! 市も民放5社へ要請すると報道されています。
平成30年(2018年)
第5回石垣市議会(定例会)(10月17日)
議案第20号
TBS系テレビ番組「ジョブチューン」による石垣島に生息する希少動物の乱獲を誘発する番組放映に対する抗議決議(PDF):
株式会社TBSテレビ、放送倫理番組向上機構(BPO)に対する抗議決議
去る、9月8日に放送されたTBS系バラエティ番組「ジョブチューンアノ職業のヒミツぶっちゃけます!」
内の企画「スゴ腕ハンター密着SP!」において、珍生物ハンターと称される出演者が石垣島を訪れ、本市の希少な生物を売買目的で捕獲し、その時価相場や、そのような市場があるかの如く放送がなされた。
このような放送は視聴者へ誤ったメッセージを与え、石垣島へ希少生物の捕獲目的での来島を誘発するおそれがあり、生物の乱獲、生態系の崩壊にも繋がりかねず、多様多種の動植物を有する豊かな自然を心から愛し、今日まで守り、共存してきた石垣市民の思いを踏みにじる実に下劣な行為であり、到底看過できるものではなくTBSの放送姿勢には強い憤りを覚える。
よって当市議会は、早急に番組内での正確な情報を提供し、視聴者への誤解を解くように求めると同時に今後このような放送がなされないよう満身の怒りを込めて厳重に抗議する。平成30年10月17日
石垣市議会
議案第21号
TBS系テレビ番組「ジョブチューン」による石垣島に生息する希少動物の乱獲を誘発する番組放映に対する意見書(PDF):
地方自治法第99条の規定により総務大臣、環境大臣に提出される意見書
また10月3日に石垣市環境課もウェブサイトに以下の文章を掲載していました。
豊かな自然に恵まれた石垣島は、離島という閉鎖された環境の中で育まれた古くから生息する固有種や希少種などの貴重な野生動植物が多く生息しています。これらの生物のうち、国や県、市指定の天然記念物や、石垣市自然環境保全条例の中で特に保護する必要があると認められる種として定められた保全種については石垣市内での捕獲を原則禁じておりますが、そのほかにも多くの種が絶滅の恐れのある生物として環境省や沖縄県のレッドデータブックに記載されています。つまり天然記念物や保全種に指定されていなくても絶滅の危機に瀕している動植物は数多く存在しており、石垣島に生息する多くの種が島内の生態系の構築に重要な役割を担っています。
石垣島の豊かな自然と貴重な動植物を保護し、未来に残す為に天然記念物や保全種に指定された種以外の動植物に関しましても乱獲や大量捕獲等の行為は控えていただくようご協力お願いいたします。※石垣市自然環境保全条例において保全種に指定されている動植物を許可無く採取や殺傷、又は損傷した場合は30万円以下の罰金に処される場合があります。
全国でマニア向け販売のために捕獲される生きものたち…
固有種・希少種かどうか、あるいは在来種か移入種かにかかわらず、野生にいる生きものを捕獲して販売することは、動物を苦しめたり死なせたりすることに直結しています。展示即売会でも、海外のWC(野生捕獲)個体だけではなく、日本国内で捕獲されたと思われる様々な生き物たちが食品パック等に入れられて売られています。
現状で違法でないとしても、人間の身勝手な捕獲・販売へはもっと批判が高まってよいでしょう。
▼写真は「ジョブチューン」とは関係ありません。最近の展示即売会より。