和歌山城の敷地の中にある「和歌山城公園動物園」(この4月1日に「和歌山公園動物園」から名称変更)は和歌山市が設置する動物園ですが、去年4月から大阪の「ワールド牧場」を運営する「有限会社ワールド牧場」が管理・運営の業務委託先となっていました。
しかし今年1月、なんとワールド牧場の代表取締役(当時)が富田林市の倉庫で大麻草を栽培していたとして大麻取締法違反(営利目的栽培)で逮捕。その後起訴され、3月6日には再逮捕。この日まで、和歌山市に対し報告がなかったという報道もありました。
これを受けて、和歌山市は動物園の業務委託について3月11日付けでワールド牧場に6カ月間の指名停止措置をとりました。公開されたPDFはこちら。(※追記:原本は既に和歌山市のサイトから削除されているので、無関係な企業を墨塗にして証拠としてアップしました)
「和歌山市物品等調達業者指名停止要綱」の定めによるもので、動物園の運営・管理には関与できなくなるということです。ただし法人ではなく被告人個人の犯罪ということで、指名停止期間は半年に減らされたそうです。(平成31年3月11日~ 平成31年9月10日)
和歌山市の要綱を見ると、有罪となったときはもちろん、起訴されただけでも指名停止の要件を満たすことがちゃんと書かれていました。
別表
(不正又は不誠実な行為)
措置要件 15 前各号に掲げる場合のほか、代表役員等又は一般役員等が禁錮以上の刑に当たる犯罪の容疑により公訴を提起され、又は禁錮以上の刑若しくは刑法の規定による罰金刑を宣告され、契約の相手方として不適当であると認められるとき。
期間 当該認定をした日から1か月以上12か月以内
他にも、「業務に関し不正又は不誠実な行為をし、契約の相手方として不適当であると認められるとき」などの要件も定められていて、問題業者を指名から外すこともできるようになっています。(いわゆる「おそれ条項」)
また本文には、「当該指名停止に係る有資格業者を現に指名しているときは、市長は、その指名を取り消さなければならない。」「指名停止の期間中の有資格業者を随意契約の相手方としてはならない。」等の定めもきちんとありました。
これは自治体ごとに作っているルールなので、滋賀県であれば滋賀県のルールを見なければなりませんが、一般論として、行政が主催する行事において、刑事事件で起訴されている業者に移動動物園を委託したりすることは、やはり問題があると言ってよいだろうと改めて感じました。
また第一種動物取扱業の登録取消については、民間業者の営業に係るものなので有罪が確定しないと取り消せない仕組みになっているのはやむを得ないかとは思いますが、法改正では、廃棄物処理法などと同じように、いわゆる「おそれ条項」等も盛り込むべきだと改めて思いました。
第一種動物取扱業の登録番号等の表示義務が守られていなかった
ちなみに、「和歌山公園動物園」のサイトでは、第一種動物取扱業の登録番号等の表示義務が守られていませんでした。
ワールド牧場への業務委託を始める前までは、無料の公園ということで第二種の扱いだったそうですが、去年、業務委託先となったワールド牧場が第一種動物取扱業として登録申請したそうです。登録自体はするべきですし、第二種だなどと言って逃げるほうがおかしいと思いますが、市の設置する施設にも関わらず表示に関して違反状態だったのは疑問です。民間企業に業務委託を行っているわけですし、委託先がどこかということを公表して説明責任を果たす意味でも、これらの表示はするべきだったと思います。
ちなみに、公表されていた第一種動物取扱業の登録業者一覧では、既に死亡している先代の代表者による登録が記載されていたため、変更の手続きなどはなされていたのか、和歌山市に聞きました。これについては、公表されていた一覧が先代の死亡による交代時期より古かっただけのようです。
和歌山市保健所生活保健課動物保健班からの回答(抜粋)
第一種動物取扱業者は広告等に登録番号等の記載が義務付けられており、和歌山城公園動物園について適切な掲示を実施するよう担当課に対して指導いたしました。
なお、和歌山城公園動物園の登録状況については、平成30年9月に代表者の変更(海原壹一氏から海原秀展氏)が届出されていますが、代表者の大麻取締法違反による逮捕をうけ、次年度の契約を実施できない状況になったことから、平成31年3月31日で廃業の届出がされています。動物園の管理については別の事業者から平成31年4月1日付けで登録申請を受理しています。
新体制は?
「和歌山城公園動物園」については、新しい委託業者は「滋賀農業公園ブルーメの丘」などを管理・運営する「ファーム」だと報道されていますが、事件による指名停止が急だったため、市のほうで業者を探し、随意契約を行ったものだそうで、入札は行われていません。まだ市のホームページでも公表はこれからのようです。4月1日からファームでの管理が開始されていますが、従業員10名はファームに雇用される形で残り、餌の仕入れ先なども変わらないそうです。今のところ、各種ふれあい体験の回数・実施時間の変更だけが告知されています。
廃園の予定がなくなっていた!
ちなみに、和歌山公園動物園は旧態依然であるだけでなく老朽化が著しい施設ですが、お城という史跡の中にあるため、改築等ができません。
それでも、平成4年度に立てられた史跡和歌山城整備計画では廃止していくことが決定されていたので、ゆくゆくはなくなる動物園だと思っていました。しかし、なんと平成28年度の改訂版では、「厩舎は老朽化し、動物の飼育環境も良好とはいえない」とする一方で、「市民の意向を踏まえながら、今後のあり方を検討する必要がある」という記述に変わってしまったそうです。改築ができない事情は変わっていないにもかかわらずです。
移転についての記述はありますが、長期的に検討。内容は、景観のことばかりで、動物のための改善が目的でないのは明らかです。
閉じ込められている動物のことを考えれば本来淘汰されていくのが自然と思われる施設が、ここでもノスタルジーやこだわりのために維持されていってしまいます。