2019年改正動物愛護法解説:帳簿の備付け義務の対象が拡大

2019年動物愛護法改正解説

動物に関する帳簿の備付け等(第二十一条の五):犬猫等販売業から拡大されました

 ※下線が改正部分。

(動物に関する帳簿の備付け等)
第二十一条の五 第一種動物取扱業者のうち動物の販売、貸出し、展示その他政令で定める取扱いを業として営む者(次項において「動物販売業者等」という。)は、環境省令で定めるところにより、帳簿を備え、その所有し、又は占有する動物について、その所有し、若しくは占有した日、その販売若しくは引渡しをした日又は死亡した日その他の環境省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。
2 動物販売業者等は、環境省令で定めるところにより、環境省令で定める期間ごとに、次に掲げる事項を都道府県知事に届け出なければならない。
一 当該期間が開始した日に所有し、又は占有していた動物の種類ごとの数
二 当該期間中に新たに所有し、又は占有した動物の種類ごとの数
三 当該期間中に販売若しくは引渡し又は死亡の事実が生じた動物の当該事実の区分ごと及び種類ごとの数
四 当該期間が終了した日に所有し、又は占有していた動物の種類ごとの数
五 その他環境省令で定める事項

現行法で犬猫等販売業者にのみかかっている規制のうち、56日齢規制など犬猫限定の条項を除き、全てを第一種動物取扱業者に拡大することを3団体として求めてきましたが、そのうち、帳簿の備え付け義務と、毎年の自治体への報告義務についてのみ、改正が実現しました。

これまで、犬猫等販売業者以外の業者にも、「第一種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」により5年間の台帳の備え付け義務はあったのですが、細目の最後のほうに書かれているせいか、自治体職員すらこの義務を知らないことがたびたびありました。不適切・劣悪飼養の指導に際しても数の増減などを立入時に台帳で確認したり、台帳をつけさせることでどれだけ動物を飼養しているのか事業者に管理させたりするような指導が行われていないのが現実でした。

扱う動物種や業種によって、法律に書かれているか細目に書かれているか、扱いが違うのもおかしなことですが、業者自らが、飼養保管の状況や業務処理能力を自覚するためにも、帳簿と報告の義務は必須です。

健康安全計画の提出、獣医師との連携、獣医師に死亡の検案を求めることができる条項などが、未だ犬猫等販売業者にのみとどまってしまったことは非常に残念ですが、今回の改正で一歩前進がありました。動物販売業者等定期報告届出書の提出が犬猫以外の動物にも広がりました。

政令により、譲受飼養業までが対象として指定された

法律で「その他政令で定める取扱い」とされた部分については、パブリックコメントを経て政令が既に改正されており、動物を譲り受けてその飼養を行う業(老犬・老猫ホームなど)が追加で指定されました。環境省によれば、帳簿の備付け義務と報告の義務は、動物の所有権を有する業種のみを対象とするとのことでした。(動物の所有権が移転しない、保管業や訓練業は対象外になります)

動物の愛護及び管理に関する法律施行令 新旧対照版

※下線が改正により新たに追加された部分。

(第一種動物取扱業の登録を要する取扱い)
第一条 動物の愛護及び管理に関する法律(以下「法」という。)第十条第一項の政令で定める取扱いは、次に掲げるものとする。
一 動物の売買をしようとする者のあつせんを会場を設けて競りの方法により行うこと。
二 動物を譲り受けてその飼養を行うこと(当該動物を譲り渡した者が当該飼養に要する費用の全部又は一部を負担する場合に限る。)。

(動物に関する帳簿の備付け等を要する取扱い)
第二条 法二十一条の五第一項の政令で定める取扱いは、前条第二号に掲げるものとする。

施行規則改正

この改正に伴い施行規則が改正され、第十条の二が以下のようになりました。(下線部が改正箇所)

3団体では、おびただしい数を扱うような例外的な場合を除き、原則として個体ごとの帳簿記載義務を求めましたが、動物の品種等ごとの記載でよいことになってしまいました。帳簿の記載の考え方については、施行通知にて示されています。

動物の愛護及び管理に関する法律施行規則

動物販売業者等が取り扱う動物に関する帳簿の備付け)
第十条の二 法第二十一条の五第一項の環境省令で定める事項は、次のとおりとする。
一 当該動物の品種等の名称
二 当該動物の繁殖者の氏名又は名称及び登録番号又は所在地(輸入された動物であって、繁殖を行った者が明らかでない場合にあっては当該動物を輸出した者の氏名又は名称及び所在地、譲渡された動物であって、繁殖を行った者が明らかでない場合にあっては当該動物を譲渡した者の氏名又は名称及び所在地、捕獲された動物にあっては当該動物を捕獲した者の氏名又は名称、登録番号又は所在地及び当該動物を捕獲した場所
三 当該動物の生年月日(輸入等をされた動物であって、生年月日が明らかでない場合にあっては、推定される生年月日及び輸入年月日等)
四 当該動物を所有し、又は占有するに至った日
五 当該動物を当該動物販売業者等に販売した者又は譲渡した者の氏名又は名称及び登録番号又は所在地
六 当該動物の販売又は引渡しをした日
七 当該動物の販売若しくは引渡しの相手方の氏名又は名称及び登録番号又は所在地
八 当該動物の販売又は引渡しの相手方が動物の取引に関する関係法令に違反していないことの確認状況
九 販売業者にあっては、当該動物の販売を行った者の氏名
十 販売業者にあっては、当該動物の販売に際しての法第二十一条の四に規定する情報提供及び第八条第六号に掲げる当該情報提供についての顧客による確認の実施状況
十一 貸出業者にあっては、当該動物に関する第八条第八号に規定する情報提供の実施状況並びに当該動物の貸出しの目的及び期間
十二 当該動物が死亡(動物販売業者等が飼養又は保管している間に死亡の事実が発生した場合に限る。次号において同じ。)した日
十三 当該動物の死亡の原因

2 前項に規定する事項を帳簿に記載する場合には、動物販売業者等(犬又は猫を取り扱う者に限る。)は、その所有し、又は占有する動物の個体ごとに、それ以外の動物販売業者等は、その所有し、又は占有する動物の品種等ごとに当該事項を帳簿に記載するものとする。
3 法第二十一条の五第一項の帳簿は、記載の日から五年間保存しなければならない。

(中略)

(動物販売業者等が取り扱う動物に関する届出)
第十条の三 法第二十一条の五第二項の届出は、次項の期間終了後六十日以内に、様式第十一の二による届出書を、当該届出に係る事業所の所在地を管轄する都道府県知事に提出して行うものとする。
2 法第二十一条の五第二項の環境省令で定める期間は、毎年四月一日から翌年の三月三十一日までの期間とする。
3 前項の期間は、新たに第一種動物取扱業の登録を受けた場合にあっては、登録を受けた日から登録を受けた年度の三月三十一日までの期間とする。
4 法第二十一条の五第二項第二号及び第三号の数の報告に当たっては、当該期間中の各月ごとの合計数を報告するものとする。

また、改正施行規則公布と同時に公表された「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部を改正する省令及び環境省関係告示の整備に関する告示について」には、概要として以下のように書かれています。

(4)動物に関する帳簿の備付け等を要する取扱いの追加(第10条の2関係)

改正法により、帳簿の備付け等の対象動物が動物全般に拡大し、対象業態も拡大されたことに伴い、犬猫については個体ごとに、犬猫以外の動物についてはその品種等ごとに記載するものとする。また、犬猫の譲渡しを業として行う第二種動物取扱業者についてもこれを準用する。

施行通知

施行の直前、2020年5月28日付けで環境省から自治体に通知された「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の施行について」(施行通知)では、以下のように説明されています。(この通知は、地方自治法に基づく、国から自治体への「技術的な助言」に相当します)

4 帳簿の備付け等に係る義務の対象の拡大(第21条の5関係)

第一種動物取扱業者のうち動物の販売、貸出し、展示及び譲受飼養を業として営む者並びに第二種動物取扱業者のうち犬猫等の譲渡しを業とする者(法第24条の4第2項による準用)に帳簿の備付け等が義務付けられた。これにより、これまで犬猫等販売業者に義務付けられてきた犬猫等の個体に関する帳簿の備付け等について、対象となる動物及び業種の範囲が拡大された。

帳簿の記載方法に関しては、施行規則第10条の2において、犬猫については従前どおりその所有又は占有する動物の個体ごとに記載を行うこととされ、犬猫以外の動物については個体識別等が難しく、複数の個体を仕入れ、個体群ごとに管理する場合があること等を考慮し、その所有又は占有する動物の品種等ごとの記載を行うこととされた。犬猫以外の動物に関する帳簿を動物の品種等ごとに記載する場合、その動物を所有又は占有するに至った日(仕入日等)ごとに帳簿に記載し、当該動物の繁殖者の氏名や生年月日等の事項は、幼齢等の理由により個体識別ができない場合を除き、個体ごとに記載することが想定される。

また、法第21条の5第2項の届出については、施行規則第10条の3第1項及び第2項の規定により毎年4月1日から翌年の3月31日までの期間終了後60日以内に、法第21条の5第2項各号に規定する事項を記載した施行規則様式第11の2の届出書を都道府県知事に提出して行う必要がある。なお、改正法の施行の際現に業を行っている場合における令和2年度の届出対象期間は、令和2年6月1日からとなるが、自治事務の範囲内において、令和2年4、5月分の報告を行わせることを妨げるものではない。

➡改正動物愛護法に関するページに戻る
2019年改正 動物愛護管理法 2020年 2021年 施行

2019年改正法の概要 目次

● 動物の所有者等が遵守すべき責務規定を明確化

● 第一種動物取扱業による適正飼養等の促進等

参考:2019年改正動物愛護法に入らなかったこと<動物取扱業>

● 第二種動物取扱業に帳簿の備付け義務

● 動物の適正飼養のための規制の強化

● 特定動物(危険動物)に関する規制の強化

● 動物虐待に対する罰則の引き上げ

● 都道府県等の措置等の拡充

● マイクロチップの装着等

● その他

● 附則

活動分野別コンテンツ

活動報告ブログ

NO IMAGE

動物の搾取のない世界を目指して

PEACEの活動は、皆さまからのご寄付・年会費に支えられています。
安定した活動を継続するために、活動の趣旨にご賛同くださる皆さまからのご支援をお待ちしております。

CTR IMG