動物の愛護と科学に関する環境省シンポジムは動物実験の問題を無視

2月26日、環境省が「動物の愛護と管理と科学の関わり」と題するシンポジウムを開催しました。

その後に開催された動物愛護部会で、環境省から、このシンポジウムの内容については何らか公開をするとの発言があったので、詳細については公開を待ってそちらを見ていただければと思いますが、簡単に印象だけご報告します。

実験動物に関する施策を放置して、そのデータを使えるのか?

まず、最も疑問に思ったのは、「科学と動物愛護」を掲げながら、実験動物福祉を今後どう担保していくのかという話が全く出なかったことでした。

それどころかマウスを用いた実験の結果が堂々と講演の中で使われていたのは驚きました。政策的に何の対応もしないまま、こうやって動物実験の結果を堂々と発表させてしまう神経が理解できません。

そもそもマウスの知見を犬に使うことは飛躍がありすぎて不可能でしょうし、マウスにしても実験用の特殊な飼育環境下での知見が果たしてその生物種における応答として正しいのかどうかについては大きな疑問があります。

また、シンポジウムに先立ち、この講演をした菊水健史教授のある論文について大学に疑義照会を行っているところですが、大学からは「麻布大学における研究活動上の不正行為の防止及び対応に関する規程」に基づき予備調査委員会が対応中との回答が来ているところです。

調査がもう少し必要とのことですので、どういう回答になるかはわかりませんが、当会としては現状、同教授の研究態度への疑念は持っているところです。

とはいえシンポジウムでも、科学は合理性の根拠になるとはしつつも、「動物に対してどういう取り扱いをするかは科学だけではない。線をどこにひくかは社会的な判断が入ってくる」、「科学はまだ完全ではない」、「データをどう解釈するかも客観的にやらなければならない」、「科学は100%正しいとはいえない。例えば50年前の科学を参考にできるか? 科学者によっても見解がことなる。全て不確実で流動的である」、「科学的見解に振り回されては安定性が損なわれる。論文一つで変わってよいのか?」等、常識的な意見も常に出てはいました。

幼齢犬の販売規制問題は?

また多くの人の関心事であろう幼齢犬の問題については、C-barqで日本では知られることになったペンシルベニア大のジェームス・サーペル教授から講演がありましたが、8週齢問題については、規制は7週でも9週でもよいということを強く印象付けるような内容になっていたと感じます。

もちろん8週でもいいわけですが、環境省は今後56日齢規制をどうするつもりなのか、疑問には思う流れでした。

日本のデータの公表は秋ごろであり、それまで結論は出せませんが、日本のデータでは56日以降に親と引き離された犬のデータが不足しているはずであり、そこを科学者がどう「補正」してくるか(そこに業界寄りのバイアスが入らないか)が焦点になるのではないかと予測します。

前回の法改正のときに56日に附則がつけられる結果に至ったのは、現在環境省からこの件に関して調査を委託されている菊水教授のヒアリングが影響したわけですから、懸念を持つのは当然です。

しかし日本で8週齢問題が重視される一方で、より重大な知見も公表されました。

C-barqのデータを使ったフランクリン・マクミランの研究によると、小規模ブリーダーから子犬を得たか、それともペットショップからかでその後の攻撃性等に大きな差があるとのこと。

ペットショップ由来の犬は、攻撃性、吠え続けることなどなど、すべての要素で悪い結果が出ており、しかもその差は小規模ブリーダー由来に比べると特に大きなものでした。2分の1から3分の2くらいブリーダー由来のほうが低いグラフが示されていました。

▼ペットショップ由来と小規模ブリーダー由来で攻撃性等に大きな差(サーペル教授資料より)

これについて、「違いが生じる理由はわかっていない」などと言って結論を先延ばしにしようとする論法も日本人研究者から飛び出していましたが、これは公害や薬害において、なかなか因果関係を認めようとしないときに使われる論法と同じです。

科学は、加害者に有利となるよう、結論を先延ばしするためにも使われてきました。

理由はわからずとも明らかに因果関係が認められるのであれば、「予防原則」的な発想で原因を取り除き、施策に反映させて予防を図るべきでしょう。

このシンポジウムではっきりしましたが、8週齢だけを主張することは、堂々巡りに時間を使わせることになり、むしろペット業界の利になってしまいます。

動物のために本当に変えなければいけないのは店頭販売そのものであるのは明らかです。

いつまでたってもここに議論が到達しないようでは動物福祉は一歩も進みません。

本質的な議論をしたがらない政治家や関係者こそ、愛護を装った業界の支援者と考えるべきでしょう。

そんなことを思った一日でした。


2017.6.17追記:
環境省のサイトで、当日のスライドなどの資料が公開されましたので、リンクを追加しました。

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