昨日、環境省が「カルタヘナ法におけるゲノム編集技術等検討会」の第1回を開催しました。
現在、カルタヘナ法で規制の対象となっているのか、なっていないのかがグレーであるゲノム編集について、そもそもどのような技術なのか概念整理を行うという名目で設置された検討会です。5月に中央環境審議会自然環境部会が開催された際に示されていたスケジュールよりかなり遅れていますが、2回開催して終了と聞いています。次回は、この8月中に開催だそうで、随分急いでいるようです。
7月11日に、この検討会の親委員会である遺伝子組換え生物等専門委員会が開催された際に既に報道されている通り、国として遺伝子導入がないものは規制しないという方向性は決まっている様子でした。
予期せぬ遺伝子導入や形質の発現について研究者たちも懸念を持っていないわけではなく、今のカルタヘナ法でカバーできないのであれば法改正を行えばよいではないかと感じますが、それは前提となっておらず、あくまで現行のカルタヘナ法に合わせる運用をするためにどう概念整理したらよいかという話し合いが行われていました。
つまり、塩基配列を切断させて自然に修復させることで変異を発生させる、意図的に遺伝子の導入をしない手法(SDN-1)については、規制の対象外だよねということが前提で話が進められました。
しかし、いわゆるオフターゲット効果(意図しない遺伝子の改変)がゲノム編集で最も懸念を持たれている部分ですので、ゲノム編集された生物にDNAが組み込まれていないかどうかについては科学的に確認される必要があるという部分は、SDN-1を含むすべてのパターンに係るようにするという修正はなされるようです。
ただ、SDN-1は規制対象外とするべきだが、放置してよいわけではない、何かするべきだがガイドラインか何かな、その方向で意見まとめますかという展開になっており、感想としては「研究者はまた法律ではなくガイドラインか何か緩いやつでやるの希望なのか、いつものパターン!!」という感じでした。
ただ、研究しているのが作物にしても、微生物にしても、病原体であるにしても、何等かの懸念は持っているのだなということが分かったのは興味深かったのですが、動物の生命操作をやっている人たちだけ、態度不明でよくわかりませんでした。
特に、座長がカルタヘナ法以外の規制でどのようになっているかの話を出し合って共有しようとしたとき、筑波大の動物実験施設である医学医療系・生命科学動物資源センターの特命教授である八神健一氏が「他の法律のことをここで話し合うべきではないので止めましょう」といったような発言をして止めました。
理由は述べていないのでわかりませんが、動物実験に諸外国のような規制がないことに触れられたくないか、動物愛護法改正に反対してきた立場から同法に話が及ぶのを避けたかったのではないか?と感じざるを得ません。
終了後の研究者の会話でも「何か(規制を)する必要性があったとしても、カルタヘナ法でやるのは嫌だ」と言っていたり、なぜあれは嫌だ、これは嫌だと、そんなことばかり言うのか、はなはだ疑問に思います。
カルタヘナ法が防ごうとしているのは、あくまで生物多様性への影響であって、病気その他の苦痛を伴う遺伝子改変がされているという動物福祉上の問題は含みませんが、カルタヘナ法違反が発覚した際に動物福祉上の問題事例が一緒に発覚することが多く、動物愛護法に立入検査等の仕組みがない以上、その他の法律での規制はできる限り厳しいほうがよいと思わざるを得ませんので、ウォッチングしていきます。
▼マウス受精卵にゲノム編集を実施した際、およそ10%のマウスの遺伝子改変目的部位にゲノム編集に使ったベクターDNA断片などの非意図配列が挿入されていたという報告もあるそうだ。(国立衛研・小野、2015年 Scientific Reports誌)