【厚労省パブコメ 11月17日締切】ワクチン検定の動物実験代替を求める意見をお送りください!

締切り前日になってしまい、申し訳ありません!

動物愛護法のパブリックコメントも明日締切りですが、厚生労働省が行っているワクチン検定に関するパブリックコメントも、11月17日(火)が締切りです。

動物実験をなくしていくために、ぜひ短くてもいいので、一言、ご意見をお送りください!

厚生労働省はワクチン検定の動物実験の代替・削減・苦痛の軽減について調査研究を行っている

人間用の各種ワクチンの生産単位ごとの品質を確認するために行われている検定でも、動物が使われています。検定には、企業が行うものと、国が行う国家検定の2つがあります。

実は厚生労働省は、これらの検定の動物実験の代替や、頻度の削減、苦痛の軽減等についての検討を含めたさまざまな見直しについて、2018年度から2020年度にかけて調査研究費を出しています。

昨年の12月25日に開催された厚生科学審議会の第22回予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会で、報告書の一部が公表され、動物実験より、代替法の方が優れているとされているものもあったため、報告書全体の公表を早くしてほしいと求めましたが、今年の7月に、やっと2年分(2018年度分と2019年度分)の公表がありました。

厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究
ワクチン等の品質確保を目的とした新たな国家検定システムの構築のための研究
研究代表者 脇田隆字(国立感染症研究所)※2018年度はこちら2019年度はこちら
報告書を見ることが出来ないときは、こちらから検索しなおしてください。

例えばどういうことが書かれているか、抜き出してみます。

2019年の報告書冒頭部分には、このように書かれています。(太字・赤字等は全てPEACEによる)

試験方法の評価と改良に関して、異常毒性否定試験の今後のあり方について、ワクチン製剤も含め幅広く検証し,生物学的製剤基準への省略規定導入による試験の廃止を検討した。また、ヒトの血清中には、はぶ毒素(出血II)に対する十分な抗出血II価が含まれているという科学的根拠に基づき、生物学的製剤基準の改正案では、はぶ毒素(出血II)関係の記載が削除された。動物実験については、人道的エンドポイントの新たな指標として体温に着目し、それを可能にする実行容易な体温測定方法について検討したところ、ヒト用赤外線体温計を用いてマウス体温測定 を簡易に行うことができ、マウスの致死性動物試験において、体温に基づく人道的エンドポイント設定が可能と考えられた。また、狂犬病ワクチン、B型肝炎ワクチン、4種混合ワクチンに含まれるセービン株由来不活化ポリオワクチン、破傷風トキソイドの力価試験について、実験動物を用いて免疫原性を評価するin vivo試験から抗原量を測定する in vitro試験へ の移行のための検討を進めた。インフルエンザ HAワクチンの力価試験については、現在実施されているSRD試験の再現性について解析を行い、事前に充分な試験条件の検討や測定基準を確立することにより、全ロット検定試験から一部ロット検定 試験の実施も可能と考えられた。

研究目的には、

また、国家検定に用いられている動物実験に関しては、試験精度、再現性等の改善及び欧州を中心に進められている動物愛護の観点からの 3Rs対応を検討する。

と明示されています。

狂犬病ワクチンの国家検定については、2018年の報告書で、

狂犬病ワクチンの検定試験では,力価試験,不活化試験,異常毒性否定試験において実験動物が使用されている.ワクチンの有効性を担保する力価試験は,NIH 法と呼ばれる免疫変量法によって行われており,マウスに 5倍段階希釈したワクチンを 2回腹腔内接種した後に攻撃用狂犬病ウイルスを脳内接種し,その防御能をマウスの生死により確認する試験である.この方法は使用動物に著しい苦痛を与えることが問題となっており , 我々はこれまでにRefinement (動物が受ける苦痛の軽減)を目的に人道的エンドポイントの導入を行った .しかしながら ,究極的には動物を全く用いない方法への転換が望ましい.

と書かれており、動物を用いない試験法であるELISAについて下記のように結論付けています。

サンドイッチ ELISA はこれまでの研究から力価試験の代替法として最も有望視されている. ELISA 法の実用化によって動物愛護における国際協調だけではなく,効率化および試験精度においても改善が期待される.

そして、2019年の報告書では、ELISAについて、

本方法は 狂犬病ワクチンの不活化試験において動物福祉の改善のみならず、作業工程の短縮による標準事務処理期間の短縮を可能にする。従来のin vivo法より高感度 、簡便かつ安価な方法 であることからも、試験導入のメリットは大きいと考える 。また、ELISLISAはDIFAに比べ高額な機器や試薬を必要としないため、多くの国において実施が可能になると考えられる。
現在、ワクチンメーカーとワーキンググループを立ち上げ、本法の国家検定および自家試験への導入を検討しているところである。

とも書いています。

また、インフルエンザワクチンの国家検定については、2019年の報告書で、以下のように述べられており、頻度を少なくすることで動物実験の削減が可能と考えられます。

インフルエンザHA ワクチンの力価試験として実施されているSRD 試験では、標準抗原の品質を高め、事前に充分な試験条件の検討や測定基準を確立すると、かなり再現性の良い試験法であることが確認された。従って、全ロット検定から一部ロット検定の実施も充分検討に値すると考えられる。

また、破傷風トキソイドの力価試験のように、苦しんで死に至るよりもっと前の段階で安楽死処分とすることで苦痛を減らすことができないかを検討されたワクチンもあります。

破傷風トキソイドの力価試験のような致死性の動物試験では、 国際的動物実験の倫理原則の一つ Refinement の観点から動物を苦痛から早期に解放する人道的エンドポイントを設定 している。しかし 、設定した 人道的エンドポイント が有効 に機能しない場合がある。本研究では人道的エンドポイントの 新たな 指標として体温に着目し、それを可能にする実行容易な 体温測定方法について検討した。そして、ヒト用赤外線体温計はマウス背部皮膚を剃毛して皮膚を露出させることで、直腸体温計と同様の体温測定が 可能なこと。体温測定モードの測温下限は 34 ℃であ るが、測温範囲の広い物体温度測定モードで測温すると、体温が34 ℃未満であっても推定可能であることが明らかになった。以上のことから、ヒト用赤外線体温計を用いてマウス体温測定が簡易に行うことができ、マウスの致死性動物試験において、体温に基づく人道的エンドポイント設定が可能と考えられた 。

しかし、破傷風トキソイドの力価試験は、「毒素攻撃により発症した動物に非常な苦痛を強いるため」、動物を用いない代替試験法も検討されています。

破傷風トキソイドの力価試験においては、3R対応の観点から動物の苦痛軽減に関する検討を進めた。その結果、人道的エンドポイントの適用による動物福祉への効果は限定的であると考えられた。一方で、 ELISA キットを用いることによって、高感度なマウス破傷風抗体価測定系が構築できる可能性が示された。

また、4種混合ワクチンに含まれるセービン株由来不活化ポリオワクチン、 A型肝炎ワクチン、および、B型肝炎ワクチンの国家検定でも、力価試験として小動物(ラットもしくはマウス)を用いた動物試験が行われていますが、これらについても非動物試験への代替が検討されており、一部では、動物実験より代替法の方がよいという結論が出ています。

① セービン株由来不活化ポリオワクチンについて
4種混合ワクチンの加温処理に伴う D抗原量の低下(in vitro 試験の結果)は概ね免疫原性の低下(in vivo 試験の結果)に反映される。また、全体的に D抗原含量の低下の度合いに比べて、免疫原性の低下の度合いは小さく、ワクチンの劣化を検出するには、in vivo試験よりもむしろ、in vitro試験を実施するほうがより鋭敏で感度が高いと言える。すなわち、製剤のD抗原含量の抗原含量の測定に問題がなければ、その免疫原性は確保できると結論でき、今後、試験法の移行が推進されるものと期待する。
② B型肝炎ワクチン 、および、 A型肝炎ワクチン について
引き続き、加温劣化の効果を慎重に精査し、より適切な劣化条件を設定し、 in vivo試験成績と in vitro 試験成績を比較する必要がある。

ほかにも、欧米で動物実験の代替が強く求められている異常毒性否定試験について、もともと日本は欧米とは違う方法を採用していることもあってか、存続の方向性のようですが、「不活化ワクチン製剤に関しては、50ロット程度の均一性の確認により省略が可能となった」等の記述もあります。

12日から2日間にわたりWEB開催がされた第33回日本動物実験代替法学会でも、まさにこれらのワクチン検定の動物実験の3Rについて講演があり、多くの試験法について代替が検討されていることなどが話題になりました。詳細は、別途ご報告できればです。

質問をした際、厚生労働省はやる気がないわけではないとのお答えでしたが、正直なところ、何のロードマップもなく、具体的に進めるつもりがあるように思えません。何がいつごろとか、どういう順番でやるつもりだとか、現時点で厚生労働省は、そういう説明が一切できません。

明日まで行われているパブリックコメントでは、改正案には、動物実験自体をなくしたり減らしたりするような改正は盛り込まれていません。しかし、動物実験を代替するにも、このパブコメにかかっている生物学的製剤基準の改正が必要です。

厚労省に対し、動物実験の3Rを求める声が日本にもあることを示すため、ぜひ意見を送っていただければです。

動物実験をできる限り早く代替すること、頻度を減らすことができる試験はできる限り早く減らすこと、苦痛の軽減ができる試験法は苦痛の軽減にも取り組むこと、代替法の研究開発に資金を出し、国際協調にも取り組むこと等、ぜひご意見をお送りください。

募集要項:
生物学的製剤基準の一部を改正する件(案)に関する御意見の募集について
※メールフォームは、このページの下部にリンクがあります。 ※終了しました

締切:2020年11月17日

追記:結果報告

パブリックコメントの結果の公表があり、「御意見ありがとうございました。いただいた御意見を踏まえ、引き続き基準のあり方について検討してまいります。」との回答がありました。

 

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