コピルアク・ツーリズムを広告・販売禁止の対象に!
イギリスでは、昨年、国外の観光業における低福祉な動物利用に関し、広告やチケット販売を禁止する「2023年動物(海外での低福祉活動)法」が成立しました。どういった動物利用アトラクションがこの法律の対象になるのかについては、今後政府が決定するとされています。
世界各国の動物福祉レベルのランク付けなどで知られる国際的な動物保護団体WAP(World Animal Protection)から驚きのニュースが流れてきました。9月18日、イギリスで、海外の低福祉な動物アクティビティのチケット販売[…]
今年6月、国際的な動物擁護団体の連盟である「Asia for Animals Coalition(AfA:アジア動物連合)」が、この法律の対象にジャコウネココーヒー観光を盛り込むよう求める書簡を送りました。ジャコウネココーヒーとは、いわゆるシベットコーヒー、インドネシア語でコピ・ルアクと呼ばれるコーヒー豆のことです。(日本ではコピルアックなどとも表記されています)
コピ・ルアクは、もともとは野生下でジャコウネコが排泄した糞から採取したのですが、現在では多くのジャコウネコ(パームシベット類)が捕獲され、檻に入れられ、工場生産方式で生産されることが一般的になっています。また、2010年ころから、こうしたジャコウネコを触れ合いなどの観光でも用いるようになっています。
こうした状況に関し、いかなる生産システムであってもジャコウネコの福祉は満たされないとする科学的証拠が集まっており、生物多様性保全や人の健康への影響も懸念されるとして、イギリス政府に対し、緊急に「2023年動物(海外での低福祉活動)法」の対象にジャコウネココーヒー観光を盛り込むよう求める要望が送られました。
主要17団体が呼びかけ、175団体がこれに賛同しました。PEACEも、これに賛同しました。
高価な希少コーヒーのために飼育されるジャコウネコたちの悲劇日本では、居ながらにして世界中のコーヒーを味わうことができますが、そのなかにひとつ、動物を苦しめていることで知られるコーヒー豆があります。「コピ・ルアク」という、コーヒー[…]
ジャコウネココーヒー観光の問題点 触れ合いでは薬物も
コピ・ルアクについては過去記事もぜひ参照いただきたいのですが、今回の書簡では、ジャコウネココーヒー生産の問題点だけでなく、その観光利用における問題点についても言及されています。
ジャコウネココーヒー生産産業の最大の原動力となっているのは国際的な観光であり、東南アジア全土で何千頭ものジャコウネコ類が、深刻かつ容認できないほど福祉が損われた、恐ろしい状況に置かれています。ジャコウネココーヒー観光は東南アジア全域で一般的であり、イギリスの旅行会社によって頻繁に宣伝されているとのこと。
ジャコウネココーヒーはコピ・ルアクとして、世界で最も高価で希少なコーヒーとして販売されています。しかし、 希少性があるという主張にもかかわらず、ジャコウネココーヒーは、東南アジア全土でジャコウネコを大量に捕獲し、檻に入れて強制的に食べさせることによる工場生産方式で生産されています。これは大量生産を狙ったものです。
ジャコウネココーヒー産業は、動物福祉を損なうだけでなく、野生生物の密売、無差別なワナ猟、人獣共通感染症の伝染に関与しているとみなされています。
ジャコウネコは夜行性かつ単独性の動物であるため、ジャコウネココーヒーのための見世物化や生産農場で、多大な苦しみを味わいます。最近の科学研究によれば、ジャコウネココーヒーの農場や観光地は通常、小さくて何もないケージで構成されています。ジャコウネコは、感染症に対する保護や、適切な栄養・水へのアクセスがない状態で、互いに近い距離で飼育されています。
多くは捕獲された直後にワナによるケガを負い、獣医による治療は行われず、ストレスの多い状況により、徘徊などの常同行動や自傷行為を頻繁に発症しています。
観光では、訪問者が安全に触れられるようにジャコウネコに薬を投与するケースも報告されているというのですから、最悪です。 ストレスに加え、生産や展示用のジャコウネコたちは膨大な量のコーヒーの実を消化させられており、カフェイン中毒、栄養失調、早死が引き起こされています。
こうした状況から、最近の科学研究では、ジャコウネコの福祉はジャコウネココーヒー産業では満たされえないと結論付けられています。
ジャコウネココーヒーを求める消費者の需要は、ハリウッド映画やその他の人気メディアで取り上げられた後、2000年代初頭に始まりました。その後まもなく、バリ島でジャコウネココーヒー観光が始まりました。
現在、ジャコウネココーヒーの名所は、インドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピン、タイ、シンガポールを含む東南アジア全域に広がっています。また、ケージ飼育は、拡大するジャコウネココーヒー観光市場に対応するため、大幅に増加しました。
シベットプロジェクト財団が、最近、「業界大手レポート 2024: ジャコウネココーヒー産業への取り組み」を発表しました。このレポートでは、ジャコウネココーヒーツアーが、動物福祉に関する警告なしにイギリスの観光客に広く販売され、宣伝されていることが確認できます。ほとんどの観光客は、ジャコウネココーヒー産業がもたらす苦しみや、より広範囲にわたる社会と生物多様性への影響に気づいていません。
この報告書では、ジャコウネコ観光の問題を他の低福祉活動の中でも特に「法に含めるべき低福祉活動の証拠がある」と強調しており、既にイギリス政府にも提出されています。
今回の「2023年動物(海外での低福祉活動)法」の対象としてほしいという要望はイギリス政府に向けたものであり、実現しても影響を受けるのはイギリス国内の観光業だけではありますが、企業活動がグローバル化する今、この問題に関する認知度が上がれば、世界的な影響があることでしょう。
「業界大手レポート 2024: ジャコウネココーヒー産業への取り組み」(シベットプロジェクト財団)より
トリップアドバイザーの動物福祉ポリシーでは、飼育下の野生動物との物理的な接触を伴う体験の販売を禁止しているが、7カ国で365件のシベットコーヒー体験が確認され、81%が飼育下の野生動物を扱うツアーやアトラクションへの訪問であった。驚くべきことに、これらの施設の91.9%は、観光客に対して動物福祉に関するガイダンスを提供しておらず、トリップアドバイザーは自社の動物福祉方針に違反していた。調査を受け、トリップアドバイザーは現在、シベットプロジェクト財団と協力し、予約可能なシベット・コーヒーツアーを削除し、すべての項目に動物福祉に関する警告を掲載するよう徹底している。その結果、トリップアドバイザーでシベットコーヒー体験を購入することはできなくなった。
大手旅行会社10社の9割が動物福祉方針を掲げているにもかかわらず、すべての会社が自社のプラットフォームでシベットコーヒー体験を販売していた。私たちの報告を受けて、Viator、Klook、Booking.com、AirBnB、TUIを含むいくつかの事業者は、自社のプラットフォームでシベットコーヒーに対応することに同意した。しかし、大手旅行会社の4割は、プラットフォームからシベットコーヒー体験を削除するよう求めた私たちの呼びかけに応えていない。
日本では動物園もコピ・ルアクを宣伝?!
国際的にはこのような動きがある一方、折しも、PEACEボランティアのあいだで、日立市かみね動物園のハクビシン舎の掲示が問題になりました。
コピ・ルアクについて説明するだけならまだしも、「興味のある方は通販サイトで買えるようなので感想を聞かせてください」などと書かれていたのです。(2024年9月現在。ハクビシンもジャコウネコの一種です)
しかも、偽物が多いことも知っていて書いています。
問題は、偽物の作り方です。動物園もハクビシンを飼育しているため問題と思いにくいのかもしれませんが、こうしてコピ・ルアクの消費が煽られることで、東南アジアではジャコウネコ類が捕獲され、傷つき、劣悪飼育され、見世物にもされているのです。
動物園は、生態系保全や教育をうたう場だったのではないのでしょうか? 野生動物の利用を促進するような普及啓発は止めていただきたいものです。
園からは、今後、内容を見直し、こうした問題についても発信するとの回答があったそうなので、早急な対応がなされることを期待します。
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PETAが日本のコピ・ルアク取扱業者に対するアクションを継続しています。こちらのページからメールアクションにご協力ください。
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