環境省が平成27年度の犬・猫の引取り・負傷動物の収容状況に関する統計を公表しました。
これまでも環境省の統計公表時期は早まってきていたのですが、今年はまた一段とスピードアップしています(ちなみに昨年の公表時期は年末)。社会の関心の高さに対応したものではないかと感じます。
犬の引取り46,649匹(狂犬病予防法等に基づく捕獲収容を含む)、猫の引取り90,075匹、合計136,724匹。
殺処分は、犬15,811匹、猫67,091匹、合計82,902匹ですが、負傷犬猫の殺処分も合計すると犬16,287匹、猫76,369匹、合計92,656匹です。
殺処分数は昨年の10万匹台から、9万匹台へ。いよいよ10万匹を切りました。
以前は「10万くらいで底を打って横ばいになるのではないか」とも予測されていましたが、ここのところの社会の関心の高さを見ると、まだ減る傾向は続くのではないかと感じます。
去年はあまり分析を載せられませんでしたが、今年は、引取り拒否の影響について考えてみました。(こちら)
(引取り数の内訳のグラフは環境省のサイトに掲載されています)
犬・猫の引取り
引取り数 | 処分数 | ||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
飼い主から | 所有者不明 | 合計 | 返還数 | 返還数のうち 幼齢個体 | 譲渡数 | 譲渡数のうち 幼齢個体 | 殺処分数 | 殺処分数のうち 幼齢個体 | |||
成熟個体 | 幼齢の個体 | 成熟個体 | 幼齢の個体 | ||||||||
犬 | 5,756 | 706 | 32,517 | 7,670 | 46,649 | 13,220 | 85 | 16,417 | 4,780 | 15,811 | 3,449 |
猫 | 7,646 | 6,415 | 18,002 | 58,012 | 90,075 | 345 | 88 | 22,692 | 14,587 | 67,091 | 44,068 |
合計 | 13,402 | 7,121 | 50,519 | 65,682 | 136,724 | 13,565 | 173 | 39,109 | 19,367 | 82,902 | 47,517 |
- (注)
- 引取り数の所有者不明の成熟個体には、狂犬病予防法に基づく抑留が含まれる。
- 引取り数の所有者不明には、一部、県・市条例に基づく収容を含む。
- 幼齢の個体とは主に離乳していない個体を示す。
- 成熟個体と幼齢の個体を区別していない自治体にあっては、すべて成熟個体として計上している。
- 殺処分数には、保管中の病気等による自然死も含まれる。
負傷動物
収容数 | 処分数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
返還数 | 返還数のうち 幼齢個体 | 譲渡数 | 譲渡数のうち 幼齢個体 | 殺処分数 | 殺処分数のうち 幼齢個体 | ||
犬(負傷) | 974 | 289 | 0 | 194 | 23 | 476 | 47 |
猫(負傷) | 12,379 | 406 | 25 | 2,533 | 980 | 9,278 | 3,174 |
- (注)
- 幼齢の個体とは主に離乳していない個体を示す。
- 成熟個体と幼齢の個体を区別していない自治体にあっては、すべて成熟個体として計上している。
- 殺処分数には、保管中の病気等による自然死も含まれる。
「犬・猫の引取りからの処分数」と「負傷動物の処分数」の合計
処分数 | ||||||
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返還数 | 返還数 のうち 幼齢個体 ( )内は割合 | 譲渡数 | 譲渡数 のうち 幼齢個体 ( )内は割合 | 殺処分数 | 殺処分数 のうち 幼齢個体 ( )内は割合 | |
犬 | 13,509 | 85 (0.63%) | 16,611 | 4,803 (28.91%) | 16,287 | 3,496 (21.46%) |
猫 | 751 | 113 (15.05%) | 25,225 | 15,567 (61.71%) | 76,369 | 47,242 (61.86%) |
合計 | 14,260 | 198 (1.39%) | 41,836 | 20,370 (48.69%) | 92,656 | 50,738 (54.76%) |
引取り数内訳のグラフや推移のグラフは環境省の下記のページで公表されています。
自治体別データのPDFは下記になります。
過去のデータについては下記をご参照ください。
これより前のデータへのリンクはこちら。
◆TOPICS~引取り拒否の影響はあったのか?
自治体職員が引取りを拒否するよう迫られている等、一部評判がよろしくない向きもある引取り拒否の但し書きですが、統計では影響が出ているのだろうか?と思いグラフをつくってみました。
若干、9月に法律が施行された平成25年度に減っているように見えますが、法律上引取り拒否ができるようになったのは所有者からの引取りだけ※にもかかわらず所有者不明の引取りも同様に減少しており、所有者からの引取り拒否の影響は微妙なところであるように思います。
もちろん個別の事例で問題があってはいけませんが、改正の背景についてもあまり理解されていないようにも思います。
法改正前から業者からの引取りは受けないとしていた自治体は多く、また一般の飼い主に対してもいったんは窓口で新しい飼い主を探すよう指導するなどして引取りを拒否している実態があることが法律に合っておらず、自治体からも自分たちの業務が法律違反にならずに臨機応変に対応できる法改正であれば問題ないとする声があったことが法改正に至った理由であり、何でもかんでも拒否して減らせというのは法改正の意図するところではありません。
行政が業者から唯々諾々と大量に引き取ってきた自治体で法改正後に問題が起き「引取り拒否が原因」との誤解が蔓延したように思いますが、行政が税金で劣悪飼育業者のしりぬぐいを行い続け、事業を生きながらえさせるのはおかしなことではないでしょうか。行政側には、業の取消等の行政処分を行う権限があります。行政が劣悪業者から大量引取りを行うのであれば、行政権限を用いて廃業等へ持ち込むべきでしょう。
「引取り屋」もまるで法改正後にあらわれたかのようですが、問題になった引取り屋が15年前から営業していたことからもわかるように、昔からいます。昔は、動物実験用に売るという受け皿があり、行政からも生体を引取り、大学等へ安く売っていました。順天堂大学から実験犬が盗まれたことがありましたが、その犬もそういう引取り屋から大学が買った犬でした。(裁判で判明)
引取り拒否は「できる」ようになっただけですので、適切にケースバイケースで運用することが自治体に求められていることだと思います。
※第35条第3項が所有者不明の引取りについての条文ですが、冒頭に「第一項本文」と書かれており、第一項の「ただし」以下の但し書きは準用されません(但し書きは本文ではない)。つまり所有者不明の引取りに、引取り拒否は適用されません。