2018年成立のスウェーデンの新しい動物保護法 国会図書館が翻訳を公開

国立国会図書館が発行している『リファレンス』2月号に「スウェーデンの新しい動物保護法―動物保護法(スウェーデン法令全書2018年第1192号)―(資料)」との記事が載りました。

スウェーデンでは昨年、動物保護法(1988年制定)の全面改正が行われています。近年の動物保護に関するEU法令の整備や、獣医学上・畜産上の技術進歩、動物保護に関する社会の意識変化などを踏まえて、より現代に適合した内容に改められているとのこと。また、これまで多次にわたる改正で複雑化した条文を、より明瞭でわかりやすいものにする目的もあったそうです。

施行は、今年の4月1日からです。

日本の動物愛護法との大きな違い

日本の動物愛護法との違いを書き出してみました。むしろ、日本の動物愛護法と重なる部分が少ないと言ったほうがいいかもしれません。

日本で現在進行中の法改正の検討で挙がっているものもありますが、全く検討に至っていないものもあります。

  • 法の目的が、明確に「動物福祉及び動物の尊重を促進すること」となっている。
    (日本の動物愛護法は、愛護の気風の涵養など、主には人のため)
  • 動物実験について明確な定義がある。
    (日本の動物愛護法は、動物実験ではなく、あくまで実験動物を扱うという謎のスタンス)
  • 動物が自然な行動を行うことができるようにという観点がある。
    (日本は、5つの自由を取り入れたと言いながら、行動の自由について動物愛護法で言及がない)
  • 畜産動物、畜産場についての規定がある。
    (日本の動物愛護法には条文がない)
  • 動物との性行為が禁止されている。
    (日本の動物愛護法には条文がない)
  • 苦痛を生じさせるおそれがある方法で繁殖を行うことは禁止。
    (日本の動物愛護法には、苦痛の観点からの繁殖制限の視点はない)
  • 動物の販売もしくは譲渡に、条件を付けたり禁止したりできる。
    (日本の動物愛護法には条文がない)
  • 動物の輸送についての条文がある。
    (日本の動物愛護法には条文がない)
  • 動物に苦痛を与える方法での調教の禁止。
    (日本では司法の判断にゆだねられていると考えられるが、有罪とすることは厳しい。飼養保管基準で言及はあるが禁止ではない)
  • ドーピングの禁止。
    (日本の動物愛護法には条文がない)
  • 負傷した、または病気の動物のケアについての条文がある。
    (日本の動物愛護法にも罰則で触れられているが、詳細な定めはない)
  • と畜又はその他の殺処分では、意識を失わせなければならない。
    (日本の動物愛護法の殺処分に関する条文に欠けている観点)
  • 畜産場等の検査規定がある。
    (日本の動物愛護法には条文がない)
  • 動物実験に関し、実験動物活動の許可、組織、倫理的承認、中央動物実験倫理委員会等についての条文がある。
    (日本の動物愛護法には条文がない)
  • 住居への立入りについても条件が定められている。
    (日本の動物愛護法に、住居への立入りの規定はない)
  • 動物の管理禁止及び一時保護の規定がある。
    (日本の動物愛護法には条文がない)
  • 動物の苦痛を取り除く観点からの殺処分規定がある。
    (日本の動物愛護法には条文がない)

スウェーデン動物保護法(2018年法)の構成

全文は国会図書館サイトで読むことができますので、ここでは章立てのみご紹介します。

第1章 導入規定

第1条 本法の目的
第2条 本法の適用範囲
本法における用語及び表現
第3条 実験動物
第4条 動物実験
第5条 本法が補完するEU規定

第2章 動物を取り扱い、飼養し、管理する場合の一般規定

第1条 基本的な動物保護の要件
第2条 良好な動物環境及び自然な行動
第3条 能力要件
第4条 監視、飼料及び水に関する要件
第5条 動物の係留及び保定
第6条 畜舎及びその他の養畜場
第7条 設備及び器具
第8条 動物を遺棄することの禁止
第9条 動物を殴打し、傷つけ又は酷使することの禁止
第10条 動物との性行為の禁止
第11条 特定の繁殖の禁止
第12条 動物の販売又はその他の譲渡
第13条 動物の輸送

第3章 動物に関する競技及び動物の公開の場での展示

第1条 動物に関する競技及び動物の公開の場での展示
第2条 ドーピングの禁止

第4章 動物のケア及び手術による侵襲

第1条 負傷した又は病気の動物のケア
第2条 手術による侵襲
第3条 獣医師又はその他の動物保健従事者
第4条 ホルモン剤の禁止に関する授権

第5章 と畜及びその他の動物の殺処分

第1条 動物をと畜及び殺処分する際の要件
第2条 と畜及び殺処分に関する授権

第6章 事前検査及び許可

第1条 場所の事前検査
第2条 動物飼養のための場所を使用することの禁止
第3条 新しい技術の事前検査
第4条 特定の動物飼養に対して許可を受ける義務
第5条 許可の撤回

第7章 動物実験

第1条 動物実験の基本原則
第2条 実験動物活動の許可
第3条 許可の審査
第4条 許可の情報
第5条 許可の撤回
第6条 活動に対する責任
第7条 実験動物活動の組織
第8条 野生の実験動物の捕獲
第9条 倫理的承認の要件
第10条 倫理的承認の審査
第11条 倫理的承認の撤回
第12条 倫理的承認に関する命令
第13条 中央動物実験倫理委員会
第14条 中央委員会の構成
第15条 中央委員会の定足数
第16条 その他の授権

第8章 公的統制及び公的機関の任務

第1条 公的統制の権限を有する公的機関
第2条 動物保護の訓練を受けた職員
第3条 活動の調整
第4条 助言及び情報の提供
第5条 違反を告発する義務
第6条 公的統制に関する命令
第7条 食料生産動物以外の動物を目的とする公的統制
第8条 公的統制及びこの法律にいう案件の手数料
第9条 差止命令
第10条 個人の支出による是正
第11条 情報及び文書の一部を取得する権利
第12条 立入りの権利
第13条 欧州委員会の情報及び立入りの権利
第14条 注意義務の要件
第15条 公的統制の対象である者の義務
第16条 スウェーデン警察の支援
第17条 スウェーデン軍に使用される動物に対する例外
第18条 怠慢に関する報告

第9章 動物禁止及び一時保護

第1条 動物禁止
第2条 動物禁止の範囲及び廃止
第3条 動物の所有を解消する義務
第4条 特定の場合の緊急殺処分
第5条 動物の一時保護
第6条 動物の即時一時保護
第7条 一時保護された動物の処分
第8条 一時保護された動物の取扱い
第9条 一時保護された動物の費用負担の責任

第10章 刑罰及びその他の制裁

第1条 この法律及び意識消失に関する命令に反する罪
第2条 動物との性行為を行うことの禁止に反する罪
第3条 動物の輸送及び殺処分に関する特定のEU規定に反する罪
第4条 この法律が補完するその他のEU規定に反する罪
第5条 この法律に基づき定められた命令に反する罪
第6条 軽微な行為
第7条 本規定と過料との関係
第8条 本規定と刑法典との関係
第9条 事前検査が実施されなかった場合の課徴金

第11章 異議申立て

第1条 倫理的承認に関する案件の決定に対する異議申立て
第2条 その他の決定に対する異議申し立て
第3条 公的獣医師による決定に対する異議申立ての際の相手方当事者
第4条 即時執行に関する命令

経過規定

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