「クレイジージャーニー」爬虫類ハンターのヤラセが明らかに。静岡大学に質問書を送りました

9月11日、TBSの番組「クレイジージャーニー」が、ヤラセがあったとしてお詫び文を出し、番組が急遽休止となりました。「爬虫類ハンター」として、世界各国で珍しい生物の捕獲を行ってきた静岡大学教育学部・加藤英明講師の企画部分でのヤラセです。あらかじめ現地で調達していた動物を使って撮影し、まるで野生で見つけたかのように放映していたというのです。

この日、既に番組のページはなくなっており、お詫び文に差し替えられていました。ロケの現地コーディーネーターを務めた日本人女性のサイトも封鎖されています。

このときは、TBSが加藤氏には知らせていなかったとしたため、同氏のヤラセ関与は「疑惑」でしかありませんでしたが、一昨日の木曜日、加藤英明氏本人もヤラセを承知していた、むしろ氏の希望する場所に用意した動物が置かれるなどしていたという実態について、『週刊新潮』が報じました。番組を見れば明らかなことではありますが、TBSはなぜ加藤氏には知らせていないなどとわざわざ嘘を公表したのでしょうか。

メキシコドクトカゲは人工飼育下の繁殖個体で、それを含む数種類のトカゲを番組に貸したとあります。加藤氏が、現地の岩場ではなく、どこか建物のあるところでメキシコドクトカゲを手に持って記念撮影している写真も掲載されています。現地協力者が、ケージからトカゲを出しているところの写真も、小さくですが載っています。

また、下記は、発売日前日に出た予告記事です。問題の写真がカラーで見られます。

写真を番組の映像と比較してみても、加藤氏が持っているドクトカゲが番組で使われたもので間違いないでしょう。メキシコドクトカゲは、CITES(ワシントン条約)付属書掲載種であるだけではなく、メキシコの絶滅危惧種や保護種の法律がかかる生物種リスト(NOM-059-SEMARNAT-2010)に掲載されており、現地では法的に保護されている動物です。この写真自体が、加藤氏が飼育個体だとわかっていたことの証に思えます。

そもそも「爬虫類ハンター」などという呼称もですが、専門家であるべき大学教員がタレントのようにもてはやされ、珍しい動物を見ればすぐ捕まえるような価値観を良しとする風潮を広めていることでも、もともとこういった番組について苦々しく思っていました。

しかし、ヤラセであったことで、ますます研究者としての倫理観に疑問を持ちました。実際には見つけていない生き物を、さも見つけて捕獲したかのように偽って平然と公衆向けに解説するという行為は、研究者にふさわしいものでしょうか。また、乱暴な捕獲法や、おそらく撮影時に動物が動かないように何らかの措置がとられていると思われることなど、動物福祉上の問題についても疑問を感じます。

静岡大学に質問書を送りました

また、加藤英明氏については、もともと疑問を持っていました。実は当会では以前、静岡大学に情報公開請求をしたことがあり、同大学の情報公開度が著しく低いことと、動物実験委員会の審査実績に爬虫類が含まれていないように見えることを疑問に思っていました。文部科学省は、野生動物の生態研究であってもマイクロチップを入れる等するのであれば基本指針を守る必要があるという見解を出しています。

この点について、これまで同大にきちんと聞いてみたことがなかったので、加藤氏が筆頭著者(ファーストオーサー)となっている論文のうち爬虫類の解剖等を含むものを改めてチェックし、昨日、静岡大学に質問書を送りました。

他にも、加藤氏に関して耳にした疑義のうち、ブログで一端を確認できるものについて質問をしました。項目は以下の通りです。

【質問1】動物実験計画の審査について
【質問2】爬虫類の殺処分方法について
【質問3】学術研究のために採捕された動物の行方等について
【質問4】研究室等の使用状況について
【質問5】特定外来生物、特定動物の飼養の許可について
【質問6】テレビ出演及び動物の購入について
【質問7】動物実験の自主管理について

一番最後は、加藤氏とは関係なく、静岡大学の動物実験全般について聞いています。

質問書では聞いていませんが、同大学の動物実験の自己点検結果の公表においては、不思議なことに、
平成25年度版には平成24年度分の実験動物使用数等が載り、
平成26年度版には平成25年度分が掲載されているのですが、なぜか
平成27年度版には平成27年度分、
平成28年度版には平成28年度分
が掲載され、
平成26年度分の使用数が公表されませんでした。
そして平成29年度版という文書は存在せず、
平成30年度分から再び前年度(平成29年度)の使用数を載せる方式に戻しています。

つまり、ちょうど当会が開示請求をした平成26年度分が、ホームページでは公表されない形になってきていました(現時点では3年分しか公表されていません)。いずれにしても、どの年度についても教育学部では爬虫類の使用はありません。静岡大学は、両生類・魚類についても規定を定めたことが外部検証で評価されていますが、その記述部分でも爬虫類について言及がありません。しかし加藤氏のブログを見ると、大学の研究室に爬虫類を連れ帰っている記述などもあるので(但し同氏のブログには年月日が入っていないのですが)、矛盾を感じ、研究室の使用に関して動物実験委員会にきちんと届け出ているのかどうかなども聞いています。

回答が得られましたら、もう少し詳細を公表いたします。

TBSお詫び文の内容

※記録のため全文転載しました。

「クレイジージャーニー」からのご報告とお詫び
2019年9月11日

 8月14日放送の「クレイジージャーニー」2時間スペシャルと、その日の深夜のレギュラー枠で、爬虫類ハンターがメキシコに生息する珍しい生物を探し捕獲する旅に同行取材する企画を放送しました。放送で紹介した生物は6種類ですが、このうち4種類は、番組スタッフが現地の取材協力者に依頼し、ロケの前に準備していた生物を使って撮影していたことが放送後の調査でわかりました。準備していたものを、あたかもその場で発見したかのように描いた今回の手法については、事実に依拠した番組で事実を歪めたことになり、あってはならないものと考えています。視聴者の皆様、当企画にご出演いただいた加藤英明さん、また、番組にご出演いただいた方々および関係者の方々に深くお詫び申し上げます。

 メキシコロケは7月2日から5日にかけて4日間行われました。現場ロケを担当した番組スタッフは、狙った生物を捜索しても発見できない場合を想定して、あらかじめ狙った生物を準備しておこうと考え、現地の協力者に依頼していました。そしてロケでは、放送で紹介した6種類のうち4種類について、生息域を捜索したものの発見できなかったことから、事前に準備していた生物を放ち、撮影しました。

 メキシコロケで事前に準備した4種類の生物と撮影時の状況は以下の通りです。
1.メキシコサラマンダー 現地協力者が湖で事前に捕獲した個体をネットの籠に入れ、同じ湖に放ちました。
2.アリゲータートカゲ 地面に数センチの穴を掘って、事前に捕獲した個体を放ちました。
3.メキシコドクトカゲ 現地協力者が個体を岩の下に放ちました。
4.ヘルメットイグアナ 取材した大学にお借りし、大学施設内の生息可能性のある場所に放ちました。

 この爬虫類ハンター企画について過去にも同様の手法がなかったかどうか調査をすすめております。過去10回の放送で捕獲した生物のうち、26種類は捜索中に実際に発見し捕獲したものですが、11種類は事前に準備していたものであることが現時点で判明しています。過去10回の放送分は全て、今回のメキシコロケを担当した番組スタッフとは別のスタッフが担当していました。このスタッフによりますと、加藤さんには事前に準備していたことをお伝えしていなかったということです。また番組スタッフは、現地の協力者が個体を捕まえた場所に、ロケ当日か前日に個体を戻してもらうことを依頼し、ロケ本番時その場所で捜索、捕獲していたということです。
 今回の事態を私どもは重く受け止め、当番組は調査が完了するまで休止します。
 番組を御覧いただいている視聴者の皆様に重ねてお詫び申し上げます。

過去10回の放送で、事前に準備した11種類の生物は以下の通りです。

2017年 2月9日 マダガスカル前半
・ヘサキリクガメ

2017年 2月16日 マダガスカル後半
・ラボードカメレオン

2017年 8月16日 カメルーン(ゴールデンSP)
・ゴライアスガエル
・ニシアフリカコビトワニ

2018年8月8日 キューバ(ゴールデンSP/同日レギュラー枠)
・ヒメボア
・キューバボア
・フトヒゲカメレオンモドキ

2019年2月6日 南アフリカ前半
・アフリカウシガエル
・タマゴヘビ
・パフアダー

2019年2月13日 南アフリカ後半
・ノドジロオオトカゲ

計11種類

追記

その後、番組は打ち切りが公表され、放送倫理・番組向上機構(BPO)での審議入りをしています。リンク先を参考ください。

「クレイジージャーニー」番組終了のお知らせ

2019年10月21日

 「クレイジージャーニー」の爬虫類ハンター企画で、計15種類の生物を事前に準備し、捕獲シーンを撮影していたことを9月11日に公表しました。その後も調査を続けてまいりましたが、同様の手法は、それ以外には確認されませんでした。
 私どもは、改めて、これらの不適切な手法で視聴者の皆様の信頼を損なったことを重く受け止め、番組の継続は困難と判断し、放送を終了することを決めました。
 これまで、番組をご覧頂いた視聴者の皆様、番組に出演して下さった方々、取材に協力して下さった方々、関係者の方々に、重ねて深くお詫び申し上げます。

「クレイジージャーニー」のBPO審議入りを求めて意見を送りました ※審議入りしました!

「クレイジージャーニー」ヤラセのBPO審議経過 議事概要より

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