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【オーストラリア】移動動物園経営者の動物虐待事件があったニューサウスウェールズ州、生涯飼育禁止などを定める

オーストラリアのニューサウスウェールズ州(NSW、州都はシドニー)では、この6月、「動物虐待防止法(Prevention of Cruelty to Animals Act 1979)」が改正され、罰則が強化されました。動物虐待者に対し飼育禁止命令が出せるようにもなり、さらに獣姦や重大な動物虐待等を行った者については、生涯飼育禁止となりました。オーストラリアで初だそうです。

法改正を促した事件の一つに、移動ふれあい動物園のオーナーが起した動物虐待事件が挙げられていたことが興味深く、概略をまとめました。

主な改正点:罰則の強化と、裁判所による飼育禁止命令、重大な動物虐待犯への生涯飼育禁止

罰則の強化

まず、改正されたNSWの「動物虐待防止法」では、罰則の強化が行われました。(ペナルティユニットは罰金を物価の変動に合わせてスライドさせることが楽にできるように定められている仕組みです。また、今日のレートで1豪ドルは84円くらいです)

動物虐待罪の最大刑報道によると1回あたり) 懲役は以前の2倍、罰金は8倍
企業 2,000 ペナルティユニット(×110豪ドル=220,000豪ドル)の罰金
個人 400 ペナルティユニット(×110豪ドル=44,000豪ドル)の罰金または懲役1年、もしくはその両方

加重動物虐待罪の最大刑  罰金は以前の5倍
企業 5,000 ペナルティユニット(×110豪ドル=550,000豪ドル)の罰金
個人 1,000 ペナルティユニット(×110豪ドル=110,000豪ドル)の罰金または懲役2年、もしくはその両方

動物を放置し、食料や避難所を提供しなかった場合の最大刑 罰金は以前の3倍
企業 750 ペナルティユニット(×110豪ドル=82,500豪ドル)の罰金
個人 150 ペナルティユニット(×110豪ドル=16,500豪ドル)の罰金または懲役6か月、もしくはその両方

ただし、重大な動物虐待は刑法で罰せられる

この「動物虐待防止法」の罰則は、他のほとんどの州の2倍以上であり、NSWはオーストラリアで最も厳しい罰則を持つことになったそうです。この罰則だけを見ると、日本のほうが厳しいくらいではないか?と一瞬思ってしまいますが、実は別途、「犯罪法」(Crimes Act 1900、いわゆる刑法)にも「重大な動物虐待(Serious animal cruelty)」についての罰則があり、激しい痛みを与える目的で拷問、殴打などの残虐行為を行ったり、殺害または重傷を負わせたり、長期間苦しみを引き起こしたりした場合には、最長で懲役5年の罰則がついています。また、そういった重大な苦痛を与える行為とわかっていて行った者(未必の故意犯)に対しては、最長で懲役3年となっています。(今回の「動物虐待防止法」改正で動物虐待罪が重罪となったように一部報道されていますが、少し違うのではないかなと思います)

また、「動物虐待防止法」にはもともと様々な禁止事項があり、それぞれに罰則がありますので、その点でも日本より厳しそうです。例えば、動物を繋ぎ飼育すること、動物を閉じ込め飼育すること・もしくは運動させないこと、適さない動物に乗ること、毒を与えること、闘牛など動物を戦わせること、トラップ射撃(動物を閉じ込めたところから放して射撃の的にする)を開催等すること等々が禁止され、それぞれ罰則があります。

裁判所による飼育禁止命令

また、やはり改正法は、飼育等に禁止命令が出せるようになっている点で、日本と大きく違います。改正法では、裁判所が、有罪判決を受けた者に対し、命令で定められた期間、以下のうち1つ以上を禁止する命令を出せるようになりました。

(a) 動物を購入または取得し、または所持もしくは保管すること。
(b) 動物を飼育すること、または飼育に参加すること。
(c) 他の人によって所有されている、または他の人の占有状態にある動物を含め、動物の飼育について管理または影響を与える権利を有する取り決めの当事者となること。
(d) 他の人によって所有されている、または他の人の占有状態にある動物を含め、動物の飼育または世話に関与すること。

これらは、個々の制限ごとに個別の命令を必要とするのではなく、1つの命令で行うことができます。

さらに、改正法では、新しく動物の処分(譲渡)命令(いわゆるdisposal order)や、一時的な不適格命令(disqualification order)も導入されています。裁判所は動物虐待罪で起訴された人が別の動物虐待犯罪を起こす可能性が高いと判断した場合、裁判手続きが確定するまで、他の動物を管理したり、影響を与えたりすることを防ぐことができます。

ちなみに、緊急で保護しなければならない動物がいる場合の裁判所命令は、改正前の法律に既に入っていました。

生涯飼育禁止規定

また、「犯罪法」で罰則が定められている獣姦および獣姦を行おうとすること、重大な動物虐待、警察等の法執行機関で使用される動物を殺害または重傷を負わせること等で有罪判決を受けた場合、その者は、以下を行ってはならないとされました。
(a) 動物を購入または所有する。
(b) 有給・無給を問わず、動物との直接の接触や世話を伴う仕事に従事すること。

つまり、自動的に生涯飼育禁止となるということになります。

これらの法改正は即時施行されます。

法律が弱いと市民を怒らせた虐待事件

NSWの法改正を報じる記事では、移動動物園オーナーが起した犬の殺害事件に触れられていました。

コアラ、サル、ワニなど、多くのエキゾチックアニマルを触れ合わせる移動ふれあい動物園「ゲット・ワイルド・エクスペリエンス」のオーナーであるダニエル・ブライトン(Daniel Brighton)は、2016年、ブルテリアを拷問し、殺害した罪に問われました。

ブライトンは、所有するラクダを襲った放浪犬を木に縛り付け、ピッチフォーク(フォーク状の干し草用農具)で6回刺しました。裁判で目撃者は、ブライトンが攻撃中に「笑いながら冗談を言っていた」と述べています。ブライトンはラクダの治療のために動物病院に行き、戻ってきた後、ピッチフォークが刺さった犬がまだ生きていることに気づき、死ぬまで6~8回、マレットで殴りつけました。ブライトンは犬をビニール袋に入れ、捨てるように従業員に言い、このことを話すなと言いました。

ピッチフォークによる傷跡が犬の骨に残っており、殴られた際に右頬骨も骨折、タロンガ動物園の獣医法医学者は、動物に対する繰り返しの暴力的な攻撃があったと判断しています。

RSPCAはブライトンを犬に対する2件の重大な動物虐待で告発しました。2019年6月、ブライトンは動物虐待罪では州史上最長の懲役刑である3年4カ月の判決(ただし、26カ月後に仮釈放の資格を得る)を受けたのですが、最高裁では、なんと判決がくつがえってしまい、釈放されました。

犬を殺したのは「害獣」の「駆除」だという理屈が通ってしまったのだそうです! この結末は驚きました。これを動物虐待罪にできないのであれば法律が悪いと怒りの声が上がったのはいうまでもありません。

この園では、2017年、十分な獣医療や食事を与えていないとの懸念から、アルパカ、2羽のニワトリ、ワライカワセミが押収されたこともあったそうです。

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Daniel Brighton has always professed his love of animals, bu…

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