「あいちトリエンナーレ」のいい加減な動物取扱責任者の選定

あいちトリエンナーレ 動物虐待

昨年、愛知県で開催された国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2016」(2016年8月11日~10月23日の74日間)の豊橋地区・水上ビル会場で行われたラウラ・リマ氏の展示「《フーガ(Flight)》」で生きた小鳥が数多く使われ、屋上の金網から鳥が逃げている、衰弱・死亡した鳥がいる、餌が不適切、人間のトイレの便器で餌を与えていた等がインターネット上で広く知られることとなり、大きな批判が巻き起こりました。

種の保存法違反の鳥の購入があったことなど各種報道もなされましたし、鳥の保護団体が関与し里親探しを行う事態にも発展しました。主催は「あいちトリエンナーレ実行委員会」ですが、会長は愛知県知事で、事務局も県の文化芸術課国際芸術祭推進室内です。このような公的な行事で情けない展開ですが、そもそもが無謀な企画であったことは間違いありません。

この件について、本年3月28日に最終的な鳥の数の報告等が公式サイトで公表されています。(リンク

鳥の羽数について(結果)

当初数        94羽
雛数         10羽
死亡及び所在不明数  15羽
譲渡し数       89羽
(公式サイトは「落鳥」という言葉を使っていますが、はっきり死亡数とするべきだと思いますので、言い換えました。去年10月の時点で少なくとも10羽が死亡しています。)

この件については、第一種動物取扱業の登録の取消を行うべきではないかと期間中に愛知県に申し述べましたが、「改善への対応が進んでいる」との理由で取消はしないとの回答でした。

残りの開催日数が少ないことも忖度の理由になったかもしれませんが、そもそも県が主催に関わっている事業に対して、県の別の部署が強く出ることができないという構造上の問題も大きいと思います。これは、こういった短期イベントだけではなく、公立の動物園などについても言えることです。

いい加減な動物取扱業責任者の選定が露呈!

そして、そもそもこの件については、展示を行うことが決まった後に第一種動物取扱業の登録が必要だということがわかり、慌てて動物取扱責任者の選定が行われたということを耳にしました。

施設の構造・管理・その他の問題からしても、この展示で第一種動物取扱業の登録ができたこと自体が疑問ですが、動物取扱責任者の選任については特に疑問を感じましたので、愛知県に対し開示請求を行いました。

その結果、「やはり……」と思わざるを得ない、情けない文書が出てきました。「水上ビルにおける展示に伴う第一種動物取扱業登録に際しての動物取扱責任者の選任について」というズバリの文書が担当の室長まで上がっていたのです。

▼やはり事前に問題になっていた!

「WEBで調べたが」とある時点で鳥を扱うことを軽く考えていたことがわかります。そもそも展示を行うことに問題ないのかどうか、飼育の知識のある人に確認してから決めるべきかと思いますが、そのような作業すらされていなかったことも推察されます。

また開催期間は74日間ですから、専属の常勤職員でなければならない動物取扱責任者を探すのに動物病院の開業獣医師を当たっている時点で、相当な見当はずれと思われます。名義貸しでよいと思ったのでしょうか? 法令がよくわかっていないのですね。

鳥を診られる獣医師が意外と少ないということがわかった時点でハードルが高いと気が付いてほしかったのですが、結果としてはWEBで検索した結果、資格要件を満たすことだけで犬猫のペットシッターである女性が選任されました。

企画が決まった後だったとしても、この方が適任であればまだ救いがあったのかもしれませんが、典型的な「形だけ」の選任であったことは、鳥たちの不幸な運命によって立証されていると思います。

そもそも2か所以上の動物取扱責任者を同時に兼ねることはできない運用のはずですが、一方の業形態がペットシッターであって常に仕事があるわけではないことから、2つ目の施設での兼務も可となったようです。

私たちは、兼務不可も法律に明確に記入してほしいと要望しています。

そして、動物取扱責任者となった女性が持っていたのは、愛玩動物飼養管理士の2級です(申請書に明記)。そもそも2級で動物取扱責任者になれるという仕組み自体がいかがなものかと感じてきましたが、この一件で問題は決定的になったのではないでしょうか。

動物取扱責任者の要件を満たすとして挙げられている資格についても、前回の法改正のときから問題が指摘されていますが、やはり見直しが必要です。

資格さえあれば日頃の取扱の経験や知識がない種についても責任者になれるという仕組みもおかしいのではないかと思います。

そもそも企画段階で鳥の死と誕生が見込まれていた?

また、会場で繁殖までさせて……と怒りを感じるところですが、そもそもラウラ・リマ氏の展示については、企画の段階から「期間中に鳥たちの世代交代がおこる」と書かれていました。

これは、どういう意味でしょうか? 会場で鳥が死んで、次の世代が生まれ育つというのがそもそもの氏の頭の中にあったイメージだったのではないかと思わざるを得ません。

このようなことを74日間で人工的に引き起こそうとしたのであれば、どのように言葉を美しくとりつくろってみても、人間による生命への介入(=暴力)がそもそもの展示の目的だったと解釈せざるを得ず、到底許容することはできません。人に飼われている鳥を一段下に見ているようにも感じます。

登録に際しては、業の目的についても、動物愛護法の趣旨や条文(虐待罪等)に違反していないことを確認してほしいと思います。

コキンチョウについて

この展示では、種の保存法で取引が完全に禁止されていたコキンチョウ(渡り鳥条約の対象種であり、登録の対象でもなく、取引はできなかった)が3羽使われていました。主催者が近所の小鳥店から購入したものです。

この時点では間違いなく違法取引でしたが、コキンチョウの取引自体、国もまったく法令の普及や取り締まりに取り組んでおらず野放しの状況であったため、それを追認する形で、今年の1月に種の保存法施行規則が改正されてしまいました。

水際の取り締まり能力も明らかに低く登録制度もないのに、野生個体が国内でほとんど取引されていないなどと判定できる根拠はないはずですが、価格が安いこと(密輸のインセンティブが低いと環境省は解釈)やオーストラリアからの生息状況情報を勘案して規制緩和となったとの説明です。

しかし、実態としては、業者や愛好家への配慮がなされただけだと思います。飼いたい人がいなければ変える必要も特にない規制でしたから。3羽の所有権は無事移せたようですが、法律違反が不作為による既成事実化で追認されたこと自体はいかがなものかとは感じます。

この展示については愛鳥家と専門の保護団体の方々が努力されてきたので、きわめて外野からではありますが、次回の動物愛護法改正で犬と猫だけではない改正を願う立場からいくつか問題点をあげてみました。

開催中どのような指導が行われたか、トリエンナーレ側が動物愛護センターに対しどのような報告をしているかは動物愛護監視指導票の写しをご覧ください。まだまだ挙げるべき問題はあるかと思います。

開示書類一覧

※追記:報告書のひどさ

その後、あいちトリエンナーレが鳥保護団体の要請に応じる形で報告書をとりまとめていますが、その内容もとてもひどいものです。キュレーターによる展示に至った背景には、上記のような、法律も知らず、安易に考えた経緯については記載がありません。よって、そのことに対する反省もありません。展示の主旨を正当化したい意図だけを感じます。鳥には展示の主旨などどうでもよいことです。しかも、理想化された意図とは違い、誤ったメッセージを人々に伝えてしまったことについて理解ができていないようです。

また、本来なら現行の規制でも開催を思いとどまることはできたのではないかと感じるので、どう実効性をあげるのかの問題は大きく残ると感じつつ、まずは大枠の法律について改正を求めています。

細かいところでは法改正後に基準等の改正で対応すべき点もありますが、どうか署名にご協力ください。※終了しました。法改正活動についてはこちら。改正法についてはこちら

署名にご協力ください ※終了しました 

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