「アニマルポリス」に関する国会質疑紹介と、動物愛護法改正の検討を振り返って

今年の法改正で、いわゆる「アニマルポリス」については、検討の際、話題には出たものの、深くは議論されないままとなったかと思います。

協働で法改正運動を行った3団体(PEACE、JAVA、ARC)も、この点については特に要望をしなかったのですが、それは、実効性のある動物虐待への対応について、どういった形が日本で動かしやすく、かつ実現可能性が高いのか、まだ市民や愛護関係者の間でもコンセンサスができていないように感じたためです。

現状不十分と考えられる捜査や逮捕・立件を求める観点であれば、警察機構の中の一部署として動物担当を設けるのがよいのかもしれませんし、動物の飼養保管に関するある程度の専門性を持ちネグレクト等の指導監視にも強い対応を求めるという観点であれば、鳥獣保護員と同じように、動物愛護担当職員(改正後は動物愛護管理担当職員)に特別司法警察職員の権限(逮捕権などもある)を与える形がよいのかもしれません。

どういった形を求めるのがベストなのか3団体としても決めきれていないことと、取り締まるにもまず実効性のある法律や基準がなければ何もできないであろうということで、今回の改正要望では、まずそういった内容のほうに力点を置きました。

獣医師の虐待の通報は義務化された

殺処分ゼロ議連の検討の過程では、獣医師の通報を義務にすることについては議論がされ、改正も実現しました。

これについては、義務化するなら通報先をどこにするか明確にしなければならないという話が出て、通報先についても議論がされました。

その際、今回の改正で新しく条文が設けられた動物愛護センターが獣医師の通報先という案が一時期出ていたのですが、一般市民からの通報を愛護センターが受け付けないでよいように読める書きぶりであったことが問題だと思いましたし、明らかに刑事事件として扱うべきものまでセンターに通報されると結局刑事告発されずうやむやにされる危険性を感じましたので、これには反対しました。

無事、最終的な法案では獣医師の通報先がセンターという部分は削除されたのですが、では通報から対応まで、どういうスキームにするべきなのかという課題は残っているかとは思います。

自治体ごとの取り組み

今後、どういったスキームを整えるのかということについては、杉本彩さんの公益財団法人動物環境・福祉協会Evaの尽力あって、大阪府(大阪市等を含む)で統一の動物虐待通報共通ダイヤル「おおさかアニマルポリス#7122」が10月から始動することが一つのモデル事例になるのではないかと感じています。

対応窓口が、どこが対応すべきかを判断し、動物愛護部局や警察等に対応を振り分ける仕組みです。

※参考:地方自治体動物愛護行政のリンク集ページに、大阪と兵庫のアニマルポリス通報窓口についてのページへのリンクも追加しました。

※追記:9月26日、大阪府からもリリースが出ました。

川田龍平参議院議員の国会質疑で警察庁は?

ちなみに、今年の通常国会で、川田龍平参議院議員が「アニマルポリス」の考え方について質問をしてくださっています。児童虐待の問題について触れる中での質問です。この答弁を見る限り、現状では警察については、各都道府県警察ごとの対応をするべきと考えていることがわかります。

今後、日本でどのような方向性にいくのか、まだ未知数かとは思いますが、参考まで該当部分のみ会議録から転載します。

第198回国会 厚生労働委員会 第16号
令和元年六月十一日

○川田龍平君 (中略)その専門部署ということで、ちょっと外れるんですが、今日は動愛法も環境委員会で通過したということですが、この動物の虐待というのも、これも警察の方で専門の部署をつくるということはできないんでしょうか。西海岸の方でアニマルポリスという部署があるということも聞いたんですが、そういった虐待というのは本当に弱い者に向いてしまうと。子供もそうですけれども、動物ですとかそういったものに対する命を尊重するという考え方がないところから、そういった弱い者に対する命の扱いというのが変わってくると。そして、それがひいては虐待だけではなくて様々な残虐な事件につながっているということも考えると、本当に児童虐待の部署、そして動物虐待のそういった部署というのもつくるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(小田部耕治君) お答えいたします。

 平成三十年中の動物愛護管理法第四十四条に違反します動物虐待事犯の検挙事件数でございますけど、八十四事件ということで対前年比で十六事件増加となっております。各都道府県警察におきましては、それぞれの都道府県の実情を踏まえまして、動物虐待事犯の取締りを担当する部署におきまして厳正な取締りを実施しているところでございます。

 御指摘ありましたような動物虐待事犯を専門的に捜査する部署を設置するかどうかにつきましては、各都道府県警察におきまして動物虐待事犯の発生状況等を勘案して適切に判断されるべきものと考えておりますが、いずれにいたしましても、警察庁といたしましては、各都道府県警察におきまして、動物虐待事犯の取締りが関係機関と連携を図りつつ適切に行われるように指導してまいりたいと考えております。

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