狩猟鳥獣の見直しにノイヌ・ノネコ削除含まれず 改めて環境省に要望しました

先日、狩猟してよいとされる鳥獣の指定について、見直すための改正案のパブリックコメントが行われました。

PEACEではノイヌ・ノネコおよびホンドテンなどの毛皮獣を指定解除してほしい旨、意見を送りましたが、残念ながらいずれも意見は反映されず、最終的にパブリックコメント通りに改正する旨の答申が行われました。

意見を送ってくださった皆さまには残念な報告となりますが、本当にありがとうございました。

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パブリックコメントには多くの意見が行くも…

答申に先立ち、6月2日に、中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会(第28回)が開催され、パブリックコメントの結果が公表されるとのことなので傍聴しました。

バン、ゴイサギについてはパブコメ案通り指定解除となりましたが、それ以外の追加はありません。

ノイヌ・ノネコ削除については176件もの意見が集まりましたが、環境省の回答は以下の通りでした。

パブリックコメント案に入っていないものを入れるのは難しいのは事実です。しかし、ノイヌ・ノネコについてもマイクロチップを確認するようスキームを変更するべきとの意見まで完全無視されて、掲載すらされませんでした。

山野に捨てれば、死ぬか、狩猟もしくは有害捕獲されて、誰もマイクロチップを確認しないのですから、法律でマイクロチップを義務化しても、意味があるでしょうか。民家近くで遺棄すればマイクロチップで足がつくことになりますから、捨てたい人は、今後は逆に、どんどん人里離れた山野に捨てたほうがよいと考えることになるでしょう。

しかし、電話で話をした環境省の担当者によると、ノイヌ・ノネコを外す場合は、狩猟鳥獣の指定から外すのではなく、ノイヌ・ノネコという概念自体をなくすということを検討することになるのではないかとのことでしたので、今後、その方向で検討するよう、PEACEとして改めて環境省自然環境局あてに要望書を提出しました。

また、パブリックコメント後に、平成30年度分の鳥獣統計が公表されたので、最新の数字で改めて表をつくりました。(下記参照)

昔は、日本でも犬肉が食べられていましたし、猟師向けに犬の毛皮が売られている等の話もありました。需要があって狩猟鳥獣に指定されていたのではないかと思いますが、時代は変わっているはずです。実際に実績も少ないです。

また、多くはわなで捕獲されていますが、溺死、刺殺、撲殺などの方法で殺されている可能性があり、愛護動物への虐待に罰則を設けている動物愛護法との整合性の観点からも疑問です。

引き続き、環境省へご意見をお願いいたします。

環境省

環境省のホームページです。環境省の政策、報道発表、審議会、所管法令、環境白書、各種手続などの情報を掲載しています。…

平成30年 鳥獣統計 ノイヌノネコ

※注:平成28年の佐賀県の数字が誤りであったことが判明したとの情報をいただきました。統計も、全都道府県合計が113匹から12匹に修正されています。(画像差し替え済)


2022年6月14日

環境省自然環境局
局長 奥田 直久 様

「ノイヌ」「ノネコ」概念の廃止に関する要望書

私どもは動物保護団体として、貴省の所管する「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、動物愛護法)によって愛護動物に指定されている犬及び猫のうち、人に依存せず山野で自活しているとされる個体を「ノイヌ」「ノネコ」の呼称のもとに別扱いし、狩猟・有害駆除等の対象としていることに強く反対いたします。

かつては人に飼われた犬猫もしくはその子孫が、一方では動物虐待から保護され、動物愛護行政の取り扱うところとなるのに対し、狩猟者・駆除者等が「ノイヌ」「ノネコ」だと判断すれば、銃殺(空気銃含む)・刺殺・水没殺・撲殺等の残虐な方法で殺すことが許されている現状は、あまりに理不尽です。

私どもは、動物福祉・愛護の観点から、「ノイヌ」「ノネコ」概念の運用そのものを廃止することを要望するとともに、その検討へ向け、以下の通り実態調査及び改善を行うことを求めます。何卒よろしくお願い申し上げます。

【要望事項】

1.「ノイヌ」「ノネコ」の狩猟に関する実態調査を行い、狩猟廃止へ向けた検討を開始してください。

自治体は、狩猟者から数の報告を受けるだけで、「ノイヌ」「ノネコ」の狩猟について実態を把握していません。かつては犬猫の毛皮や皮、肉等にも需要があったかもしれませんが、現在そのような需要があるとは思えません。

実態として、犬や猫の毛皮・肉等を目的としたものであるのか、実際には有害駆除が目的なのか、錯誤捕獲した犬猫を殺したのか、狩猟されている理由を自治体に尋ねても、これまで明確な回答はありません。すべて「狩猟」で済まされており、自治体が実態を知りません。

また、殺害方法についても、自治体は把握していません。わな猟で捕獲された小動物は、通常、刺殺、水没殺(溺死)、撲殺等の手段で殺されているかと思いますが、これらの方法がとられたのかどうかも明確ではありません。「ノイヌ」「ノネコ」と呼ばれていても、動物種としてはイエイヌ、イエネコであり、多くの人が福祉的な取り扱いに心を寄せています。どのような手段で殺されているのか、正確な情報を把握したうえで公表し、「ノイヌ」「ノネコ」の狩猟が本当に必要なのか、廃止へ向けて議論を開始していただきたいです。

2.「ノイヌ」「ノネコ」に関しても、マイクロチップの有無の確認を必須としてください。捕獲した場合は、動物愛護行政へつないでください。

鳥獣統計によると、「ノイヌ」「ノネコ」の狩猟は、ほとんどがワナ猟によるものであり、捕獲時点では生きている場合が多いと推測します。

一方、犬猫に関しては、本年6月1日より、販売時のマイクロチップ装着及び登録が義務化されました。

「ノイヌ」「ノネコ」として扱われてきた犬猫は、もとから野外生まれの可能性もありますが、「ノイヌ」は遺棄された猟犬や家庭犬である可能性があり、また「ノネコ」も、所有者がいる外飼いの猫や逸走猫、もしくは食料を人の手に頼ってきた猫、地域猫などの占有者がいる猫等である可能性があります。

奄美大島では「ノネコ」が生態系保全のための管理計画の対象となっていますが、認定された譲渡対象者らに譲られ、新たな飼い主探しが行われている「ノネコ」たちの情報を見る限り、人に慣れ、人の飼育下もしくは占有下にあった猫が「ノネコ」として扱われていることは間違いありません。

また、徳之島の森林域で捕獲された猫に関する、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所、京都大学、株式会社奄美自然環境研究センターによる研究でも、ふだんはキャットフードを主に食べている猫が森に入り込んでいることが確認されています。(”Predation on endangered species by human-subsidized domestic cats on Tokunoshima Island” Tamao Maeda et al. Scientific Reports. 9, 16200 (2019).)

実際には「ノイヌ」「ノネコ」とは言い難い犬猫が「ノイヌ」「ノネコ」として扱われていると考えられ、これらの犬猫にも元の飼い主を探すためのマイクロチップ読み取りを義務化する等、愛護動物としての扱いをしていただきたいです。

それをしないのであれば、何のためのマイクロチップ装着なのでしょうか。犬猫の遺棄を考えている者が、「ノイヌ」「ノネコ」として扱われればマイクロチップ読み取りが行われないと知れば、積極的に山野に捨てるようになるでしょう。市街地およびその近郊に遺棄してもマイクロチップによって犯罪がばれるようになっていくと考えられ、人里離れた山は、以前にもまして犯罪者にとって魅力的な場所になっていくと考えられます。

マイクロチップ確認のためにも、また命をつなぐためにも、「ノイヌ」「ノネコ」も保健所・動物愛護センター等へ必ず繋ぐスキームとし、犬と猫に関しては、第一に飼い主への返還、次に新たな飼養者への譲渡、この2段階が可能かどうか、かならず動物愛護行政の判断が介入できるようにしてください。

「ノイヌ」「ノネコ」として一般人が殺害する場合には苦痛度の高い方法がとられているはずであり、殺処分となる場合でも、行政獣医師の関与は必須です。

3.最終的に、「ノイヌ」「ノネコ」概念の廃止をお願いいたします。

実態として、山野にいる犬や猫が「ノイヌ」「ノネコ」であるかどうかの判断は、科学的に判断できる第三者が行っているわけではありません。簡単に殺して済ませるために、猟師等が恣意的な判断をすることが可能です。また極論ですが、自らの飼育する犬や猫を殺処分して、「ノイヌ」「ノネコ」と報告することもできてしまいます。

少なくとも、狩猟から外れた場合に問題があると即答できる自治体はこれまでなく、まずは狩猟ができないようにしていただきたいと考えていますが、鳥獣統計(別紙参照)から判断するに、積極的に捕殺を行わなければならない状況があるとは考えられません。

 

そもそも、動物愛護法の条文を見る限り、人に依存しているか否かに関係なく犬及猫は愛護動物のはずです。都合よく「ノイヌ」「ノネコ」のような除外カテゴリをつくるのではなく、実態として不幸な犬猫がなくなっていくよう、「ノイヌ」「ノネコ」概念の見直しをお願いいたします。

以上、何卒よろしくお願い申し上げます。

なお、この件につきまして、ご回答をいただきたく、よろしくお願い申し上げます。

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