証明書を偽造して密輸出した柴犬ブリーダーに有罪判決
昨年、大阪・泉佐野市の柴犬ブリーダーが、輸出の際に必要な証明書を偽造した容疑で逮捕されました。公判は2回目で結審し、求刑は懲役2年でしたが、10月25日に判決が出て、獣医師法違反と偽造有印私文書行使により懲役2年執行猶予3年の有罪となりました。
偽造は、動物病院の印鑑を拝借して偽の健康診断証明書を作成するという手口です。また、このブリーダーはペットショップチェーンが運営する動物病院からマイクロチップの横流しも受けていました。獣医師資格がないのに、輸出する犬に自らマイクロチップを打っていたため、獣医師法違反でも追起訴されていました。
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報道
獣医師免許を取得していないのに輸出販売する犬にマイクロチップを装着したなどとして、獣医師法違反と偽造有印私文書行使の罪…
自ら所有する犬への医療行為も、公益に反すれば有罪
懲役2年執行猶予3年は、正直、動物虐待より重い量刑です。輸出先の人々の公衆衛生上の安全を無視した行為ですから罪が重いのは当然のことですが、動物虐待罪の量刑の軽さについては考えさせられてしまいます。
ちなみに、自らの飼育する動物に医療行為を行うことは違法ではないという、獣医師法に関する農林水産省の見解は現在でも特に変わりはありません。しかし、それには「公益に反しない限り」という条件がついています。
今回の事件の判決により、獣医師免許を持っていないのに、販売用の動物にブリーダーが自らマイクロチップを打つことは違法だという司法判断が出たことになりますが、これはまさに、その行為が公益に反するからでしょう。
技術的に下手な人が処置すると、打った後にマイクロチップが抜けてしまったりしますし、そもそも神経を傷つけたりせずに安全に打てるのか疑問です。犬を買う人も「資格のある人が処置している」と信じているはずで、その信頼を裏切る行為でもあります。
間違ったことがいろいろとまかり通っている繁殖業界に、一石を投じる判決でした。
大阪府が行政処分! 第一種動物取扱業の登録取消しとなりました
この業者、第一種動物取扱業の登録は「Qoo-Qoo」という事業所名で行っていましたが、柴犬専門犬舎「柴香苑」及び紀州犬専門犬舎「泉州紅葉荘」という犬舎名も使っていました。日本犬保存会の展覧会には、これらの名称で出ており、本人も「日本犬保存会展覧会で活躍できる紀州犬&柴犬のブリーディングに奮闘中」などとうたっていました。
しかしながら、有罪判決を受けたとなると、第一種動物取扱業の登録は、取消ができることになります。2019年の法改正により、動物愛護法等関連法以外の法律違反での有罪判決でも取消ができるようになりましたが、これは、PEACE、JAVA、ARCの3団体で法改正を求めて粘った点でもありました。
この事件でも動向を注視していましたが、無事、大阪府は12月9日付で、この男に対し第一種動物取扱業の登録取消の行政処分を行いました。同月15日に報道発表がされています。
この男は、今後、有罪となってから5年間は登録を行うことはできません。
自主廃業が指導されてひっそり消えるだけの可能性もありましたが、きちんと行政処分が出たことで安心しました。これからも、不適切な業者を排除するという、動物取扱業規制の目的が達成されていくことを願っています。
(注:大阪府が公開している登録事業者一覧にはまだ載っているのですが、間違いかと思いますので、現在確認中です)
報道発表:第一種動物取扱業者に対する行政処分について
提供日 | 2022年12月15日 |
提供時間 | 14時0分 |
内容 | 大阪府では、動物の愛護及び管理に関する法律第19条第1項第5号に基づき、 以下のとおり、第一種動物取扱業の登録の取消しをしましたので、お知らせします。1 対象事業所 (1)名称 Qoo-Qoo (2)代表者 井原 渉 (3)所在地 泉佐野市羽倉崎1-5-15-1 (4)登録年月日及び登録番号 平成21年5月28日 大阪府第1625-1号 (5)業種 販売業 (6)主として取り扱う動物の種類及び1日あたりの保管数 犬6頭、猫3頭2 登録取消し年月日 令和4年12月9日(金曜日)3 取消し理由 獣医師法違反及び偽造有印私文書行使の罪により刑が確定したことから、 動物の愛護及び管理に関する法律第12条第1項第5号の2に該当することとなったため |
関連ホームページ | 動物取扱業者に対する行政処分について |
資料提供ID | 46497 |
処分日 |
申請者 氏名 |
事業所 名称 |
事業所 所在地 |
登録年月日 | 登録番号 | 処分内容 | 理由 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
令和4年 |
井原 渉 |
Qoo-Qoo |
泉佐野市 |
平成21年 |
大阪府第1625-1号 |
登録 |
獣医師法違反、偽造有印私文書行使により刑が確定し |
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