【Netflix】噂のドキュメンタリー『タイガーキング』はラストシーンまで見て!

日本では、今年6月、トラなどの大型ネコ科の動物や毒ヘビ、猛禽など、人の生命・身体・財産等にとって危険な動物として指定されている「特定動物」650種ほどについて、愛玩目的での飼育が禁止になった。

州ごとに規制がばらばらとなっているアメリカに比べて、日本の法規制が国としては一歩先に進んだのではないかと思っていたが、ちょうど改正法施行直前の時期に動画配信サービス「ネットフリックス(Netflix)」のドキュメンタリー『タイガーキング:ブリーダーは虎より強者?!』が海外でバカ受けしていると知り、視聴してみて、ますますその思いを強くした。

というか、アメリカのエキゾチックアニマル飼育者が、クレイジーすぎるのだが。

野生のトラが約4千頭に減る一方で、アメリカの飼育下のトラは5千匹~1万匹にも及ぶという。異常事態だ。いくら国土の広いアメリカでも、ペット飼育でトラたちにまともな環境を与えられているはずがない。

動物業者の「絶滅危惧種を増やしてるんだから感謝しろ」といった感じの発言も出てくるが、身勝手すぎるし意味がわからない。囚われのトラたちは、二度と野生には帰れない。

ドキュメンタリーが追うのは、これら、トラの出所になっている業者たちだ。

メインは、私設動物園や動物ショーで稼ぐ傍らトラの繁殖販売も行う「タイガーキング」ことジョー・エキゾチック(もちろんこれも本名ではなく商売用の名前)と、大型ネコ科動物の保護団体である「ビッグキャットレスキュー」を運営するキャロル・バスキンの闘い。

タイガーキングが子トラを連れまわしてアメリカ各地のショッピングモールでショーをやっているのをキャロルの団体が阻止する下りがあったり、キャロルが法規制を求めてロビー活動をしたり、あれ?日本でも同じことしてるな?みたいな部分もあるが、全体的にスケールの違いを感じることしきり。

序盤で、タイガーキングは、「動物たちは愛情をかければ返してくれる」ともっともらしいことを言うが、実際にはトラだけでも227頭も飼っている(!)。いわゆるロードサイドズーにこれだけの数がいて、すべての動物に愛情を注げるはずがない。誰が考えても、すぐわかることだ。(ドキュメンタリーでは詳しく映していなかったが、それ以外の動物も様々いる)

動物業者は、耳触りのよいことを言うが、実態が伴っていないのだ。そういうところは日米で違いはないが、タイガーキングの場合は自己顕示欲が半端がなく、こんな奴が日本にいたらどうしたらいんだろうレベル。

ほかにも「医師」()のトラ多頭飼育業者、ドク・アントルが出てくるが、実態はセックスカルトで、従業員の女性たちが搾取されていたり、中盤から笑えない「動物の話どこいった?」状態。でも目が離せないのは、何だかわかる。

こういった観光産業では、トラが赤ん坊を出産すると、その場で取り上げ、人間がミルクで育てるが、その新生児取り上げのシーンもドキュメンタリーでは映していた。そうして母親から引き離した子トラを写真撮影サービスなどに使う。トラの赤ちゃんと一緒に写真をとろう!というやつだ。日本でもやっている。取り上げられた子トラが母親に戻されることはない。

しかし、動物の子ども時代は短い。成長したら観光産業としてはお払い箱。セックスカルトのドク・アントルは、タイガーキングも成長したトラを殺処分すればよいのだと言っていた。そんなことをしなくて済むよう産ませてはいけないのだが、そもそもの前提が狂っている。

最終的に、キャロルの団体は資金力にものを言わせてタイガーキングを訴訟で追い込むが(ただし、その資金源にも疑惑はあるのだが)、追い詰められたタイガーキングがキャロル殺害を仲間に依頼し、タイガーキングはお縄になる。

見てほしいのは、本当の、最後の最後の、ラストの一言だ。

人は、牢につながれて、やっと理解できることがあるのだ。

全部見てしまって胸糞の悪いメッセージしか残されていなかったらどうしようと不安だったが、報われた。

ドキュメンタリー自体は全部で7話だが、8つめに後日談的な登場人物のインタビュー編もある。本編を見た人は、必ずこれも見てほしい。

動物業者の実態はそんなものなんだよな、日本も同じだよ!という話をプロデューサーがしている。本編は人間同士の酷い話がてんこ盛りだが、一般人を傷つける内容は入れていないのだなと気がついた。

全編、よくこんなドキュメンタリー(プロデューサーはリアリティーショーと言っていたが)を撮れるなあと驚きの連続だったが、プロデューサーはかなりつらい目にもあったようだ。

人間同士の問題が山積の中、それでも囚われの動物たちの問題について変革を求めるメッセージを込めてくれたプロデューサーに、心からの感謝を捧げたい。

参考リンク

アメリカのネコ科動物の飼育規制については、「ビッグ・キャット・レスキュー」のサイトを参照。そう、キャロルの団体です。

※Netflixの無料お試し期間のサービスは去年終わってしまったようで残念ですが、月800円~で見放題のサービスです。

さらに後日談

このドキュメンタリーシリーズに登場した人物たちが、その後、動物に関連する法律に違反した罪で逮捕されている。

「Wildlife In Need」のオーナー、ティモシー・スターク(Timothy/Tim Stark)

動物に十分なケアや食料、水を与えなかったことにより、今年6月、農務省から受けていたライセンスを失った(注:アメリカは展示施設は動物福祉法により免許制)。インディアナポリス動物園に動物を移す際に、当局から動物を隠したことで逮捕された。査察の際に公務員を脅迫し、つかんだ罪にも問われている。

「Myrtle Beach Safari」「T.I.G.E.R.S and Rare Species Fund」のオーナー、「ドク」バガヴァン・アントル

10月8日、野生生物売買の重罪1件、野生生物売買の共謀の重罪1件、種の保存法違反の共謀の軽犯罪4件、動物虐待の軽犯罪9件で起訴された。ドク・アントルの二人の娘も、動物に対する残虐行為と種の保存法に違反した軽犯罪で起訴されているとのこと。

:本編の字幕ではドク・アントルの肩書きが獣医師となっていましたが、続編で、彼の学位もホラだということが元妻たちから明かされる部分があり、本人は「MD(メディカルドクター)だ」と言っているので、医師に修正しました。(中国でお金を払って得た漢方学の医師免許だとか、21歳で動物学の博士号をとっただとか、いろいろなことを言っているようですが、最初の妻は、彼はおとなしく座って学ぶことができないからというようなことを言っていました。)

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「Greater Wynnewood Exotic Animal Park」のオーナー、ジェフ・ロウとローレン・ロウ

ジョー・エキゾチックの施設を引き受けたジェフ・ロウとローレン・ロウも、2021年12月23日、裁判所の判決を受けた。施設やオンラインで動物を一般展示することが永久に禁止された。詳しくはナショナル・ジオグラフィックの記事を参照。

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