「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」が犬猫基準をとりまとめ

第7回検討会を経て、取りまとめ文書が公表されている

犬猫以外の動物にも業者基準の強化を! #置き去りにされた動物たち 」の呼びかけとご報告が前後してしまい申し訳ありません。

8月12日、環境省の「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」の第7回を傍聴してきました。この日は、小泉進次郎大臣も出席し、冒頭のあいさつの中で、時間をかけて新基準のポイントについて説明をしました。この基準によって不適切業者にレッドカードを出すということについて、環境省として本気だということを示した形だと思います。しかし、どちらかというと、双方意見が紛糾しているために大臣が出てこなければ収まらない事態なのだなという印象を受けたのも事実です。

繁殖回数について、この時点で環境省は自治体が指導しやすい犬猫の「年齢」での基準案をつくっていましたが、「回数」上限も明記が必要だというところが争点のひとつとなっており、8月末までに結論を出すとされていました。マイクロチップ義務化までの経過措置として検討といったことが環境省側から示されましたが、この点については、委員から、今の案でも6回が上限と読み取れると思っていたが、違うというのであれば書いてはどうか、また、マイクロチップが義務化されたら回数をはずすというのもおかしいのではないかという意見あり、まったくその通りだと感じました。

基準案は、赤字で追加されたバージョンが配られ、微修正がありました。赤字部分は例えば、以下のような部分です。

  • 不安定な状態でのケージの積み重ねやふん尿が漏えいする構造等は認めない(現行基準(次頁参照)にも不適合だが、解説書で具体的に説明)。
  • 繁殖個体については、雌雄ともに繁殖に関する診断を受けることを義務付け
  • 繁殖個体(雌雄の双方)は健康診断の際に、繁殖に係る項目(帝王切開の状況、今後繁殖に供することができる状態かどうかの判断等)についても、診断を受けることを義務付ける。
  • マイクロチップの装着・登録が義務化されるまでは、年齢に加え、出産回数(6回まで)を規定することを検討し、今月中に結論を得る。
  • 1歳未満であろうとなかろうと、年齢や出産回数にかかわらず、繁殖に適さない個体は交配を認めない。
  • 獣医師の診断結果も踏まえ、雌雄ともに繁殖に適さない個体は交配を行わないことを義務付けることにより、繁殖に適さない個体(初回発情時*に体の成長が不十分な場合、帝王切開を経験し難産のおそれがある場合、栄養状態が良くない場合等)の交配を認めない。
  • 遊具、猫の爪とぎ、隠れ場所などエンリッチメントの考え方に基づく具体的な設備等については、現行基準(次頁参照)を元に解説書において具体的に説明。

委員からは、前回に引き続き初回発情を外すべきという意見がありましたが、環境省は十分な成長をしていれば問題ないとの見解。帝王切開は獣医師「のみ」が行うという文言を入れてほしいという意見が出ましたが、環境省から獣医師法にも書いていないとの発言があり、驚きました。動物愛護・福祉の話をしているのですが。

従業員数も、ごまかすことができてしまうので、従業員とは何か、バイト、ボランティアまで入るのか等はっきりしないと明確な基準にならないという意見がありましたが、環境省は、現時点で難しいので今後の宿題と述べていました。

臭気、アンモニアレベルについては、高くなると動物の反応も出てくるが、呼吸などは暑熱の変化と区別がしづらいので数値基準があったほうがよいとの意見もありましたが、環境省は解説書を考えたいという対応。

睡眠が確保できるかが大事で、連続何時間は暗期をつくれとなるが、日照サイクルを確保する理由を書くとわかりやすいかもしれないとの意見には、環境省は自然なサイクルでと書いていきたいとしていました。

極端に削痩していないかなどを見るボディコンディションスコアや、死亡率、行動、抑うつ、ふるえ、無気力などアニマルベースメジャーの考え方についても複数の委員から意見が出ましたが、環境省は自治体の職員が見てわかり、対策がとれることを優先するという考え方でした。自治体の職員は獣医師なのですが……。

この日はほかに、最終的な取りまとめ文書案と、座長提言が配られました。座長提言は、行動のことなどが書かれており、本来ならば、こういった深いレベルでの福祉を考えていけるようになればよいなと感じます。今回の基準策定の議論の中で出てきた指摘の中には、日本はまだそこまで行っていないと感じることも実感として多々あり、今後の成熟が待たれるところだと思います。一方で座長は、基準の社会的影響の評価を部会でしてほしいとしていました。

基準案について意見が出し合われ、座長と事務局に修正は一任することで了承。検討会はこれで一区切りと局長の締めの挨拶がありました。

その後、繁殖回数の問題については、犬のみ回数明記とする結論が出、現在下記の最終版3点が環境省サイトで公表されています。基準案は親会の動物愛護部会に上げられつことになっており、その開催が10月7日に迫っています。

新基準はどういう形になるか

第7回でようやく、新しい基準がどのような形態になるのかが明らかになりました。現行の施行規則の中に定められている基準と、第一種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目、第二種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目の3つが統合され、新たに1つ省令をつくることになるそうです。細目は廃止されます。

当会から何度か要望していた、施行規則、細目、飼養保管基準に分かれていて非常にわかりづらいので、わかりやすく整理してほしいという意見も、無事通った形です。これまで「法律→施行規則→細目」+「展示動物の飼養保管基準(法第7条に基づく基準)」の4つが存在していて、それぞれに定めがあり、とても分かりづらかったですが、今後は少なくとも遵守義務のある基準は一本化され、今よりはわかりやすくなりそうです。

ただし、遵守義務のない(努力義務でしかない)第7条に基づく展示動物の飼養保管基準は、別途残ります。この基準は、動物取扱業者だけではなく、第二種届出の対象外となっている非営利の展示活動なども対象としているからだそうです。

また、飼養施設の基準や従業員数等は、施行規則第3条の登録基準にも規定するとのことので、この部分(登録の基準)は施行規則に残ることになります。

この新省令の書き方がどのようなものになるのかは、まだ未定として教えてもらえていません。犬猫の基準が独立章として設けられるのか、それとも今のような犬猫以外の動物も対象とした基準の各項目に、「ただし犬猫はこうだ」という追記がされていくのか、まだ明らかではありません。

犬猫以外の動物については、検討会で意見が何も出なかったから条文をいじらないと環境省は言っていますが、犬猫以外の動物をどうするかについて委員が振れなかったのは「犬猫を先に検討して、それ以外は後」と決めた環境省に従っただけだろうに、何とも酷い話だと思います。

ぜひ環境省への意見、継続してください。

犬猫以外の動物にも業者基準の強化を! 環境省に意見をお送りください

環境省と面談:犬猫以外の動物の基準は、来年の施行時には手をつけない! その後も具体的計画なし

移動販売について

新基準にいろいろ論点はありますが、ひとつ、質問も多い移動販売についてとりあげておきます。

現在、多くの移動販売では、施行規則の基準部分に書かれている「販売業者及び貸出業者にあっては、二日間以上その状態(下痢、おう吐、四肢の麻痺等外形上明らかなものに限る。)を目視によって観察し、健康上の問題があることが認められなかった動物を販売又は貸出しに供すること。」を遵守していないと考えられますが、この規定を守らなければならないのは、業者が動物を仕入れたときだけだという運用が各自治体でなされていました。

今年、8月8日~9日、和歌山県田辺市の紀南文化会館で犬猫移動販売が行われた際、和歌山県にもこの点を指摘しましたが、輸送後2日間ではなく、業者が仕入れてから2日間という解釈だとして、イベントを止めることはできませんでした。

ちなみに、新潟県は、これを輸送後2日間とする条例を定め、犬猫移動販売をほぼ、できないようにしました。ホームセンタームサシの1店舗を除き、条例施行後、全ての移動販売がなくなったとのことでした。

新潟県:平成28年7月1日から改正「新潟県動物の愛護及び管理に関する条例」を施行しました

犬猫の輸送に関する記録を保存すること(業者間取引も含む)
※輸送後に犬猫を受け取った業者は、輸送前及び輸送後の飼養施設所在地、輸送完了年月日、犬猫の種類、性別等を記載した帳簿を作成し、5年間保存してください。

輸送完了後、販売施設において2日間の健康確認を行った後に販売するよう努めること(一般消費者に販売する場合)
※販売施設に到着した日の翌日から数えて2日間以上、目視により異常がないことを確認した上で販売するよう努めてください。

ホームセンタームサシで新潟県内で移動販売を継続している店には、常設の犬猫販売コーナーがあり、移動販売用の犬猫を開催3日前には運び込み、開催日まで置いておくことで条例をクリアし、短期即売イベントを継続しています。

ですので、輸送後2日間の規定は確実な方法ではないのですが、今度、新しい飼養基準には「輸送後」ということが明記されます。環境省としては短期移動販売対策という意識があるようです。

参考事例

無登録で2日間の犬猫移動販売が実施された「たまの・港フェスティバル」

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