オーストラリアで違法な国外持ち出しが摘発され、日本人が身柄拘束されることが多かったマツカサトカゲなどの爬虫類に、ようやくワシントン条約(CITES)の規制がかかることになりました。
対象となるのは、オーストラリアのトカゲ亜目キノボリトカゲ科、ヤモリ科及びスキンク科の 19 の属や種で、掲載は附属書Ⅲになります。種の数としては127種にも及び、過去最大規模と言われています。
附属書Ⅲは、その動植物が生息する国が他の締約国に保全の協力を求める種なので、リストに掲載されている国が原産となる動植物に対象が限定されています。(例えばキンカジューは南米の複数の国々に生息していますが、ホンジュラスのキンカジューのみがワシントン条約付属書IIIに掲載されています。)
これまで、マツカサトカゲなどの人気種は、オーストラリアの法律に違反して持ち出されていても、日本側では取り締まることができない問題がありました。
オーストラリア側では水際での摘発がしばしば起きており、国際的な違法取引が問題となっていたため、ワシントン条約付属書IIIへの記載を科学者らも求めていました。それを今年3月、オーストラリア政府が実行に移し、条約事務局への提案が実現していました。ようやく明日、2022年6月22日付けで効力が発生します。
経済産業省からの告知はこちらです。
オーストラリアの自然のなかで生きてこそ素晴らしい生きものたちが、日本に連れてこられ、小さなプラケや食品パックに入れられて売られている姿は、とても哀れで、かわいそうなものです。
見た目がよいから、珍しいから、飼ってみたいからと、ほしい生きものを次々手に入れるような人がどんどんふえてしまっては、オーストラリア固有種を含む多くの希少な爬虫類が、ますます絶滅のふちに追いやられてしまいます。
日本に非合法に持ち込まれたもの、海外で違法に持ち出されたもの、形式的には合法でも実際は賄賂などが使われていて不適切なものなど、意外に問題のある個体は多く売られています。これを機に、なぜ規制があるのかを考える飼育者がふえ、消費が下火になることを願ってやみません。
▼6月22日付けで新たにワシントン条約附属書Ⅲに掲載されるもの
掲載国名:オーストラリア
学名等 | 一般的和名等 (経済産業省による表記) | 参考 (和名・俗称など) |
【FAUNA】 「CLASS REPTILIA」 ≪SAURIA≫ | 【動物界】 「爬虫綱」 ≪トカゲ亜目≫ | |
<Agamidae> | <アガマ科(キノボリトカゲ科)> | |
Ctenophorus spp. | クテノフォルス属全種 | クシドラゴン属 |
Intellagama spp. | インテルラガマ属全種 | ウォータードラゴン属 |
Tympanocryptis spp. | テュムパノクリュプティス属全種 | イヤレスドラゴン |
<Gekkonidae> | <ヤモリ科> | |
Carphodactylus spp. | カルフォダクテュルス属全種 | カワリオヤモリ属 |
Nephrurus spp. | ネフルルス属全種 | タマオヤモリ属 |
Orraya spp. | オルラヤ属全種 | |
Phyllurus spp. | フュルルルス属全種 | コノハヤモリ属 |
Saltuarius spp. | サルトゥアリウス属全種 | |
Strophurus spp. | ストロフルス属全種 | トゲオイシヤモリ属 |
Underwoodisaurus spp. | ウンデルウォオディサウルス属全種 | ナキツギオヤモリ属 |
Uvidicolus spp. | ウヴィディコルス属全種 | |
<Scincidae> | <スキンク科> | |
Egernia spp. | エゲルニア属全種 | イワトカゲ属全種 |
Tiliqua adelaidensis | ティリカ・アデライデンスィス | アデレードアオジタトカゲ |
Tiliqua multifasciata | ティリカ・ムルティファスキアタ | ホソオビアオジタトカゲ |
Tiliqua nigrolutea | ティリカ・ニグロルテア | マダラアオジタトカゲ |
Tiliqua occipitalis | ティリカ・オキピタリス | ニシアオジタトカゲ |
Tiliqua rugosa | ティリカ・ルゴサ | マツカサトカゲ |
Tiliqua scincoides intermedia | ティリカ・スキンコイデス・インテルメディア | キタアオジタトカゲ |
Tiliqua scincoides scincoides | ティリカ・スキンコイデス・スキンコイデス | ヒガシアオジタトカゲ |
追記:密輸の犠牲になるマツカサトカゲたち
ナショナルジオグラフィックが、「水も餌もなく荷物に密封、密輸の犠牲になるマツカサトカゲたち 」と題して、密輸される動物たちについての記事を出している。
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